国土交通省中国地方整備局 建政部
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未来をつくるまち・すまいづくりと建設産業
【記事・写真提供/山陰中央新報社】
【パネルディスカッション】

「地域の安全安心・次世代に引き継ぐ水環境」

〈パネリスト〉
福島 敦子氏(キャスター、エッセイスト)
植山 教子氏(エコタウンまつえ編集長)
中村 幹雄氏(日本シジミ研究所所長)
岡久 宏史氏(国土交通省都市・地域整備局下水道部下水道事業調整官)
松浦 正敬氏(松江市長)

〈コーディネーター〉
三好 美弥子氏(フリーアナウンサー)

◇◇◇ パネリスト発言要旨 ◇◇◇

植山教子氏
【植山教子氏】 〜自然に触れること重要〜

 身近な地域の環境問題から地球規模までの環境問題を松江市民に読んでもらいたい、と全国でも珍しい月刊紙・環境新聞「エコタウンまつえ」を発行している。
 これまで、松江市内の多くの川を回ったが子どもたちが川で遊んでいる姿を目にしたことがない。それは子どもたちが足を入れたくなるような川がないということだ。市内でも上流に行くと今でもきれいな川があって、蛍の保護活動をやっている。中心市街地の小学校では、先生が子どもたちをバスに乗せて、市外地に出掛けて自然観察を行っている。子どもたちに美しい自然、きれいな環境の中で伸び伸びと遊ばせてやることが大人の責任だ。
 市内で一番身近な川が堀川だろう。堀川には汽水湖・宍道湖の水をくみ上げている。だから宍道湖と同じ生き物が生息し、興味深い自然観察の場になっている。そんな素晴らしい川があるのに、子どもたちが川で遊ぶ機会がないのは残念だ。松江市は「水の都」と言われるが、これは単にイメージではなく、きれいな水を持つ街を目指し一人一人が協力し、子どもたちがもっと自然に触れ合える環境を整えることが重要だと思う。

福島敦子氏
【福島敦子氏】 〜「水の都」の歴史が魅力〜
 水の都・松江は私の古里。水は生活に欠かせない。松江にとっての水は大切な観光資源の一面も持っている。今年十一月に宍道湖と中海がラムサール条約に登録される見通しになり、登録されると世界的な財産になるだろう。今後、これをどう生かし、守っていくかが問題だ。
 松江市は国際観光都市だが決してテーマパークではなく、生活に根差した観光都市だ。人工的なテーマパークは一時的には人を引きつけるが、長続きはしない。だが、長い時間を掛けてはぐくんできた美しい自然、歴史、伝統・文化がある松江が築いてきたすべての物が、人を引きつける。堀川遊覧だって人工的に水路を造って舟を浮かべて遊覧したって面白くも何もない。松江城と言う歴史があって、そのお堀に舟を浮かべて遊覧するからこそ多くの人の心を打つのだ。
 水環境を守るために、下水道を整備するのにはお金も掛かる。個人が負担しなければならない事が出てくる。何かを選択することで、ある程度何かを犠牲にすると言う事を認識しなければいけない。良いことずくめでは環境問題は前には進まない。

中村幹雄氏
【中村幹雄氏】 〜シジミが汽水湖を守る〜
 二十年以上、宍道湖・中海でシジミの調査研究に携わってきた。宍道湖の大きな特徴は斐伊川から真水が、中海からは海水が流れ込む汽水湖だということ。宍道湖の漁獲の95%はシジミ漁で、漁獲量は断トツの日本一。そこに生息している生物が、その生息地の水の浄化を行っていることを知ってほしい。
 河川から窒素、リンや無機体や有機体が宍道湖に一日約5・6トン流入する。これを食べて植物性プランクトンが発生し、それをシジミが食べ一日29・7トンの窒素やリンを体内に入れシジミが成長する。シジミ漁で一日0・2トンの窒素やリンが宍道湖から除去されていることになり、漁業が宍道湖の浄化に大きな貢献していることを分かっていただけるだろう。
 また、実験で1グラムのシジミが一時間170CCの水をろ過する。宍道湖には約三万トンのシジミが生息しているから、計算上では、一時間に約五十三億リットルの水をろ過し、三日で宍道湖の水すべてに匹敵する量の水をろ過することになる。宍道湖を、子どもたちがシジミや魚をとったり泳いで遊ぶことができる湖にしたい。


【松浦正敬氏】 〜21年度に普及率100%を〜
 松江市は宍道湖・中海に抱かれた自然豊かな地域だ。昭和二十六年に国際文化観光都市に指定された。これまで他都市の街づくりの参考事例を見たが、やはり松江市の特徴は「水」であり「水」を生かした街づくりに主眼を置いてきた。
 平成八年に宍道湖の水を堀川に本格導水し、堀川の浄化を活用し翌九年から「堀川遊覧」がスタートした。年間三十五万人の観光客が遊覧を楽しんでいる。二十一年には松江市誕生百二十周年を迎える。この年を節目とし、年間八百万人の観光客を一千万人誘致を目指す取り組みを進めている。
 松江市は「水の都」と言われているが、昭和三十年代終わりに市が財政再建団体に陥り、水質問題は棚上げになっていた。同五十年代初めに堀川浄化事業に取り組み、宍道湖からの導水を始めた。同五十七年には松江市を主会場に「くにびき国体」が開かれ、国体開催前年に一部供用開始にこぎ着けた。松江市の下水道整備状況は平成十六年度末現在で89%である。周辺市町村が少し遅れているが平成二十一年度に普及率100%を目指していく。

 
【岡久宏史氏】 〜循環型社会構築目指す〜
 長年、下水道行政に携わってきた。下水道の役割というと、多分トイレの水洗化だと思う人が多いのではないか。確かに下水道整備でトイレのにおいはなくなり、どぶ川がきれいになり、蚊やハエが姿を消し快適な生活環境が生まれる。しかし下水道にはそれ以外に多様な役割がある。市内に降った雨を集め排除する浸水対策や、川や湖、海をきれいにするのも下水道の役目で、安全、環境、暮らしを守っている。
 全国の下水道整備状況は全国平均は68・1%。東京都が98%で、島根県も急ピッチで整備を進めるが33%で全国44位。一方、高度処理は全国平均13%で、島根県は宍道湖・中海を抱えることから20%と頑張っている。
 今年の九月、百年後の世界を見据え二十一世紀の下水道の在り方や方向性をとりまとめた「下水道ビジョン2100」が公表された。このビジョンは、「下水道」から「循環のみち」への転換を基本コンセプトとし、「水のみち」「資源のみち」「施設再生」という方針のもと、地域の持続可能な発展を支える下水道の実現に向けた施策が提言されている。今後は、循環型社会の構築を狙い、健全な水循環と資源循環に下水道を役立てたい。
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