民間建設工事標準請負契約約款(甲)
昭和26年2月14日中央建設業審議会決定

改正昭和31年10月 3日
平成 元年 1月24日
平成 9年 1月22日
平成12年10月 2日
平成13年 3月 1日
平成14年 2月12日
平成15年 2月10日

[注] この約款(甲)は、民間の比較的大きな工事を発注する者(常時工事を発注する者は官公庁と同じく、さきに決定した「建設工事標準請負契約約款」(昭和二五、二、二一決定、前掲のもの)による)と建設業者との請負契約についての標準約款である。
民間建設工事請負契約書
注文者              と
請負者              とは
 この契約書・民間建設工事標準請負契約約款(甲)(昭和二十六年二月十四日中央建設業審議会決定)と、添付の図面  枚、仕様書  冊とによつて、工事請負契約を結ぶ。
  一、工事名
  二、工事場
  三、工 期  着手  契 約 の 日 か ら 日以内
          工事許・認可の日か ら 日以内
          平 成   年   月   日
          完成  着 手 の 日 か ら 日以内
          平 成   年   月   日
  四、検査及び引渡の時期 完 成 の 日 か ら 日以内
  五、請負代金額
     (うち取引に係る消費税及び地方消費税額       )
     〔( )の部分は、請負者が課税業者である場合に使用する。〕
  六、支 払 方 法  注文者は請負代金をつぎのように請負者に支払う。
        この契約成立のとき
        部分払
        完成引渡のとき
  七、そ の 他
    [注] 建設工事が、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号)第9条第1項に規定する対象建設工事の場合は、(1)解体工事に要する費用、(2)再資源化等に要する費用、(3)分別解体等の方法、(4)再資源化等をする施設の名称及び所在地についてそれぞれ記入する。
 この契約の証として本書二通を作り、当事者及び保証人が記名なつ印して当事者各一通を保有する。
  平成  年  月  日

住所
注 文 者             印  
住所
(保証人をおく場合に記載する)
同保証人             印  
住所
請 負 者             印  
住所
同保証人             印  
(保証人をおく場合に記載する)
また完成保証人         印
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
監理技師としての責を負うためにここに記名なつ印する
(監理技師をおく場合に記載する)
監理技師             印   

民間建設工事標準請負契約約款(甲)
 (総則)
第一条   注文者(以下甲という)請負者(以下乙という)と監理技師(以下丙という)とは、互に協力して信義を守り、誠実にこの契約を履行する。

 (請負者)
第二条   乙はこの工事の図面、仕様書、約款と、これらに基いて示される詳細図、現寸図と指図によつて工事を施行する。
  乙は図面又は仕様書について疑を生じたとき、その部分の着手前に、丙(丙をおかない場合は甲、以下同じ)の指図をうけ、重要なものは、乙丙協議して定める。
  乙は図面、仕様書、又は指図について、適当でないと認めたときは、予め丙に意見を申出ることを要する。
  乙は契約を結んだのち、工事費内訳明細書、工程表をすみやかに丙に提出してその承認をうける。工事費内訳明細書に誤記、違算又は脱漏などがあつても、そのために請負代金を変えない。
  乙は労働基準法、職業安定法、労働者災害補償法その他関係法令に定められた自巳の事業主としての責を負う。

 (一括委任と一括下請負)
第三条   乙は予め甲の書面による承認を得なければ、工事の全部又は大部分を一括して第三者に委任し、又は請負わせることはできない。

 (権利義務の承継等)
第四条   当事者は相手方の書面による承諾を得なければ、この契約から生ずる自己の権利義務を第三者に承継させることはできない。
    承諾を行う場合としては、たとえば、乙が工事に係る請負代金債権を担保として資金を借り入れようとする場合(乙が、「下請セーフティネット債務保証事業」(平成11年1月28日建設省経振発第8号)により資金を借り入れようとする等の場合)が該当する。
  当事者は相手方の書面による同意を得なければ、契約の目的物、又は工事場に搬入した検査済の工事材料などを、売却、貸与、又は抵当権その他担保の目的に供することはできない。

  (保証人)(保証人をおく場合に記載する)
第五条   保証人は、この契約から生ずる責務について、保証の責を負う
  保証人がその義務を果せないことが明らかになつたとき、当事者は相手方にその交代を求めることができる。
  この契約に前払金の定をするとき、甲は乙がつぎのいづれかの保証人を立てることを求めることができる。    
 一 債務の不履行によつて生ずる損害金の支払を保証する者
 二 乙に代つて工事を完成する他の建設業者
  前金払をする前に、乙が前項の保証人を立てないときは、甲はその支払を拒むことができる。

 (監理技師)(監理技術師をおく場合に記載する)
第六条   丙は甲に代つて、この契約の履行に必要なつぎの事務を扱う。   
 一 乙の提出する工事費内訳明細書、工程表、その他仕様書に明示した書類を調査して承認する。
 二 実施計画に基いて、施工に必要な詳細図、現寸図、その他の書類を作り、工程表によつて適当な時期に乙に交付する。又乙の作る工作図、模型などを検査して承認する。
 三 施工一般について乙に指図する。
 四 工事材料と工作の検査をし、試険又は施工に立会う。
 五 図面、仕様書などに基いて工事の出来形検査と完成検査を行い、引渡に立会う。
 六 乙の提出する部分払請求書を工事の現状に照して技術的に調査する。
工期又は請負代金額の変更の書類を技術的に調査する。
この工事とこれに関連する他の工事との綜合調整にあたる。
  前項各号の一について、乙が指図、検査、立会などを求めたときは、丙は直ちにこれに応ずる。
  工事についての当事者間の協議は、丙に連絡して行う。
  丙は甲の承認する代理人を定めて監理させることができる。このときは予め乙に通知する。
  丙は現場係員を使用することができる。このときは予め乙に通知する。現場係員は工事場に駐在し、丙の指図をうけて専ら施工を監督する。

 (現場代理人、主任技術者)
第七条   乙は予め丙に通知して、現場代理人を置くことができる。
  現場代理人は工事場に駐在し、現場一切の事項を処理する。
  現場代理人は丙と協議して定めた工事場の取締り、安全衛生、災害防止又は就業時間などについて、その責を負う。
  乙は法令の定めによつて主任技術者をおき、これを丙に通知する。
  現場代理人と主任技術者とはこれを兼ねることができる。

 (工事関係者についての異議)
第八条   甲は丙の意見を聴いて、乙の現場代理人、主任技術者、使用人、下請業者、又は労務者のうち、適当でないと認めたものがあるときは、その事由を明示して交代を求めることができる。
  乙は丙の代理人又は現場係員の処置が適当でないと認めたときは、その事由を明示して、丙に異議を申立て、又はその交代を求めることができる。
  丙の処置が著しく適当でないと認められるときは、乙は甲に異議を申出ることができる。

 (検査、立会)
第九条   工事材料、支給材料又は貸与品は、予め丙の検査又は仕様書による試険をうけて合格したものを使う。
  工事材料のうち、品質の示されていないものがあるときは、中等の品質のものを使う。
  工事材料、支給材料の調合、水中又は地中の工事、その他完成後、外から見ることのできない工事は丙の立会のもとに施工する。
  材料又は施工について、検査、試験、調査などのために直接必要な費用は乙の負担とする。
  前項の検査試験などで契約に明示してないものに要する費用、又は特別に要する費用は甲の負担とする。
  不合格材料は丙の指図によつて、乙がこれを引き取り又は片付する。
  工事場に搬入した材料又は機器の持出しについては、乙は丙の承認をうける。

  (貸与品、支給材料)
第十条   貸与品、又は支給材料の受渡場所は仕様書により、受渡時期は、工程表による。
  乙は貸与品又は支給材料を受け取つたときは、すみやかに甲に借用書又は受取書を提出し、保管の責を負う。
  貸与品又は支給材料の検査と試験をするときは、乙の立会のもとに行う。
  支給材料の使用方法又は残材の処置が、図面又は仕様書に明示してないときは、丙の指図による。
  使用済の貸与品又は不用となつた支給材料は、すみやかに予め定められた場所で甲に返す。

  (適合しない施工)
第十一条   施工について、この契約に適合しない部分があるときは、丙の指図によつて、乙はその費用を負担してすみやかにこれを改造し、このために工期の延長を求めることはできない。
  この契約に適合しない疑いのある施工について必要を認めたとき、丙は甲の承認を得て工事の一部を解発して検査することができる。
  前項による解発の結果、契約に適合しないものについては、解発に要する費用は乙の負担とし、契約に適合しているものについては、解発並びにその復旧に要する費用は甲の負担とする。
  つぎの各号の一によつて生じた適合しない施工については、乙はその責を負わない。   
 一 丙又は現場係員の指図によるとき
 二 貸与品、支給材料、指定材料の性質又は指定施工の方法によるとき
 三 丙が検査、試験又は承認をした工事材料若しくは施工によるとき
その他施工について、甲又は丙の責に帰すべき事由によるとき
  前項のときであつても、施工について乙に故意又は重大な過失のあるとき、又は乙がその適当でないことを知りながら丙に通知せずに施工したものであるときは、乙がその責を負う。  

 (損害の防止)
第十二条   乙は工事の完成引渡まで、自巳の費用で、契約の目的物、工事材料又は第三者に対する損害の防止に必要な施設をする。この施設は、工事と環境に相応したもので、仕様書と関係法令にしたがい、丙の承認をうける。
  契約の目的物に近接する工作物などの保護又はこれに関連する施設で、この契約の範囲をこえると認められるものは丙の指図によつて乙が施工し、その費用は甲が負担する。
  乙は災害防止などのために特に必要と認めたときは、臨機の処置をとる。このときは予め丙の意見を求める。但し急を要するときは処置の後に通知する。
  甲又は丙が必要と認めて乙に臨機の処置を求めたときは、乙はただちにこれに応ずる。
  前二項の処置に要した費用について甲乙協議のうえ、契約の範囲を超えると認められるものは、甲が負担する。

  (第三者の損害)
第十三条   施工のため、第三者の生命、身体に危害を及ぼし、財産などに損害を与えたとき、又は第三者との間に紛議を生じたとき、乙はその処理解決に当る。但し甲の責に帰する事由によるときはこの限りでない。
  前項に要した費用は乙の負担とし工期は延長しない。但し甲の責に帰する事由によつて生じたときは、その費用は甲の負担とし、必要によつて乙は工期の延長を求めることができる。

  (一般損害の負担)
第十四条   工事の完成引渡までに契約の目的物、検査済の工事材料、支給材料その他施工一般について生じた損害は、乙の負担としそのために工事の延長をしない。
  前項の損害のうち、つぎの各号の一のときに生じたものは、甲の負担とし、乙は必要により工期の延長を求めることができる。   
 一 甲の都合によつて、着手期日までに着工できなかつたとき、又は甲が工事を繰延若しくは中止したとき
 二 支給材料又は貸与品の受渡しが遅れたため、乙が工事の手待又は中止をしたとき
 三 前金払又は部分払が遅れたため、乙が工事の手待又は中止をしたとき
その他甲又は丙の責に帰すべき事由によるとき

  (危険負担)
第十五条   天災地変、風水火災、その他甲乙のいづれにもその責を帰することのできない事由などの不可抗力によつて工事の既済部分又は工事現場に搬入した検査済工事材料について損害を生じたときは、乙は事実発生後すみやかにその状況を甲に通知することを要する。
  前項の損害で重大なものについて乙が善良な管理者の注意をしたと認められるときは、その損害額を甲、乙、丙協議して定め甲が負担する。
  火災保険その他損害を填補するものがあるときは、それらの額を損害額より控除したものを前項の損害額とする。

 (損害保険)
第十六条   乙は、工事中、契約の目的物と工事場に搬入した工事材料に、予め火災保険をかける。但し支給材料、貸与品などについては、甲乙協議して定める。
  修繕又は改造築の工事のとき、契約の目的物に関連する営造物その他の物件については、乙は火災保険をかけなくてもよい。
  火災保険をかける時期、期日、金額、保険会社などは、甲、乙協議して定め、乙は保険契約後、すみやかにその証券を甲に提示する。
  運送その他の保険については、火災保険についての定めを準用する。

 (完成、検査、引渡)
第十七条   乙は工事が完成したとき、丙に検査を求め、丙は遅滞なくこれに応じて、乙の立会のもとに検査を行う。
  検査に合格したとき、甲は検査済証を乙に渡す。乙は引渡期日までに契約の目的物を甲に引渡し、同時に甲は乙に受領書を渡す。
  検査に合格しないとき、乙は工期内又は丙の指定する期間内にこれを補修又は改造して、丙の検査をうける。
  完成引渡までに乙は丙の指図にしたがつて仮設物の取り払い其他跡片付けなどの処置を行う
  前項の処置が遅れているとき催告しても正当の事由がなく、なお行なわれないときは甲はこれに代つて行い、これに要した費用を乙に請求することができる。

  (条件変更等)
第十八条  工事の一部が完成したとき、検査のうえ、甲はその部分の引渡をうけて、使用することができる。このとき甲は乙に受領書を渡す。
  工事の末完成部分についても、甲は乙の同意を得てこれを使用することができる。部分使用のときその部分の保管の責は甲が負う。
  前二項の部分使用によつて乙に損害を及ぼしたときは、乙は甲にその賠償を求めることができる。

 (請求、支払)
第十九条   工事中乙が部分払の支払を求めるときは、丙を経由して、請求書を支払日五日前に提出する。
  工事完成後、検査に合格したとき、乙は甲に請負代金の支払を求め、甲は契約の目的物の引渡を受けると同時に、乙に請負代金の支払を完了する。
  工事中、工事出来形部分について、乙は丙の検査に合格した部分、又は現場にある検査済材料に対する工事費の十分の九以内の支払を求めることができる。
  乙が前金払をうけているときは前項の請求額はつぎの式によつて算出する。
請求額=(第三項に規定された金額)×((請求代金−受領済前払金)/(請負代金)
  契約の目的物のうちで、甲に引渡をした部分については、乙はその工事費の全額支払を求めることができる。

  (かしの担保)
第二十条   乙は工事目的物のかしによつて生じた滅失毀損について引渡の日から一年間担保の責を負う。但しこの期間は、石造、土造、煉瓦造、金属造、コンクリート造及びこれに類する建物その他、土地の工作物、若しくは地盤のかしによつて生じた滅失毀損については二年とする。
  造作、装飾、家具などについては甲が引渡しをうけるとき、丙が検査して、若しかしがあるときは、直ちに乙に補修又は取換えを求めなければ乙は責を負わない。但しかくれたかしについては引渡の日から六カ月間担保の責を負う。
  この契約が、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第八十七条第一項に定める住宅を新築する建設工事の請負契約である場合には、乙は、前二項の規定にかかわらず、工事目的物のうち住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令(平成十二年政令第六十四号)第六条第一項及び第二項に定める部分のかし(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。 )について、引渡しの日から十年間担保の責を負う。
  前三項のかしがあつたときは甲は相当の期間を定めて乙に補修を求めることができる。但しかしが重要でないのに補修に過分の費用を要するときは乙は、適当な損害賠償でこれに代えることができる。
  甲はかしの補修に代え、又は補修とともに、かしに基く損害賠償を乙に求めることができる。
  かしが第十一条第四項各号の一によつて生じたときは、乙は担保の責を負わない。但し同条第五項にあたるときはその責を免れない。

  (工事の変更)
第二十一条   甲は必要によつて工事を追加又は変更することができる。
  前項のとき甲は工事の内容を乙に示す。乙は甲乙協議して定めた期限までに工事費増減明細、支払条件、完成期日などを明記した見積書を甲に提出する。
  甲が丙の調査を経て、乙の見積書に同意したときは、乙に注文書を発し、乙は請書を出したのち、指図によつて工事に着手する。
  乙が指定された期限までに第二項の見積書を提出しないときは、乙は工事費増減その他の条件について甲の認定に同意したものとする。
  甲が注文書を出さずに乙に着工させたときは、甲は乙の見積書に同意したものとする。

 (工期の変更)
第二十二条   甲は必要によつて乙に工事の一時中止、又は工期の変更を求めることができる。
  不可抗力によるか、又は正当な理由があるとき、乙はすみやかにその事由を示して、甲に工期の延長を求めることができる。このとき工期の延長日数は甲、乙、丙協議して定める。

  (請負代金の変更)
第二十三条   つぎの各号の一にあたるとき、当事者は請負代金の変更を求めることができる。   
 一 工事の追加、変更、又は工期の変更があつたとき
 二 支給材料、貸与品について品目、数量、受渡時期又は受渡場所の変更があつたとき
 三 工期内に材料、役務等の統制額又は一般職種別賃金の変更により請負代金が明らかに不適当であると認められるとき
工事が長期(期間は当事者協議して定める)にわたる場合、その工期内に租税の変更、物価賃金の変動によつて請負代金が明らかに不適当と認められるとき
一時中止した工事又は災害をうけた工事を続行する場合、請負代金が明らかに不適当と認められるとき
水道、電気、ガスに関する事業主体の直轄工事に関して、これらの事業費の増減があり、請負代金が明らかに不適当であると認められるとき
  請負代金を変更するときは、工事の減少部分については工事費内訳明細書により、増加部分については時価によつて甲乙協議の上その金額を定める。

  (履行遅滞、違約金)
第二十四条   乙が契約の期間内に、工事の完成引渡しができないで遅滞にあるとき、甲は契約書の定めるところにより、遅滞日数一日について請負代金の一万分の四以内の違約金を請求することができる。但し工期内に部分引渡しのあつたときは、請負代金からその部分に対する工事費相当額を減じたものについて違約金を算出する。
  引渡期日に請負代金の支払を求めても甲がその支払を遅滞しているとき、又は契約書の定めるところにより請負代金から既に受領した金額を控除した残額について日歩四銭以内の違約金を甲に請求することができる。
  甲が前項の遅滞にあるとき、乙は契約の目的物の引渡しを拒むことができる。
  甲が遅滞にあるとき、乙が自己のものと同一の注意をして管理してもなお契約の目的物に損害を生じたときは、その損害は甲が負担する。
  甲の遅滞ののち、契約の目的物の引渡しまでの管理のため特に要した費用は甲の負担とする。
  乙が履行の遅滞にあるとき、契約の目的物に生じた損害は乙の負担とし天災その他不可効力などの理由によつてその責を免れることはできない。

  (甲の解除権)
第二十五条   甲は工事中必要によつて契約を解除することができる。甲はこれによつて生じた損害を賠償する。
  つぎの各号の一にあたるときは、甲は乙に工事を中止させるか、又は契約を解除してその損害の賠償を求めることができる。
 一 正当な事由なく、乙が着手期日をすぎても工事に着手しないとき
 二 工程表より著しく工事が遅れ、工期内又は期限後相当期間内に、乙が工事を完成する見込がないと認められるとき
 三 第三条又は第十一条第一項の規定に違反したとき
前三号のほか乙がこの契約に違反し、その違反によつて契約の目的を達することができないとき
乙が第二十六条第二項各号の一に規定する事由がないのに契約の解除を申し出たとき

 (乙の解除権等)
第二十六条   甲が前金払、部分払の支払を遅延し、相当の期間を定めて催告しても、なお支払をしないとき、乙は工事を中止することができる。
  つぎの各号の一にあたるとき、乙は契約を解除することができる。    
 一 甲の責に帰する事由による工事の遅延又は中止期間が工期の三分の一以上、又は二カ月に達したとき
 二 甲が工事を著しく減少したため、請負代金が三分の二以上減少したとき
 三 甲がこの契約に違反し、その違反によつて契約の履行ができなくなつたと認められるとき
甲が請負代金の支払能力を欠くことが明らかとなつたとき
  前二項のとき、乙は甲に損害の賠償を求めることができる。

  (解除後の処置)
第二十七条   解除をしたとき、工事の出来形部分は甲の所有とし、甲乙協議のうえ清算する。
  第二十五条第二項によつて解除したとき、清算の結果前払金額に残額のあるときは、乙はその残額について、前払金額受領の日から利子をつけてこれを甲に返す。
  解除をしたとき、各当事者に属する物件については、甲、乙協議のうえ期間を定めて、その引取り跡片付などの処置を行う。
  前項の処置が遅れているとき、催告しても、正当な理由がなく、なお行われないときは相手方はこれに代つて行い、これに要した費用を請求することができる。

  (工事代行)
第二十八条   乙が第二十五条第二項各号の一に当り、この契約を履行することができないと認められるときは、甲は乙に代つて工事を完成する保証人(以下完成保証人という。)にこの契約によつて工事の完成を求めることができる。
  完成保証人が前項によつて工事を代行するとき、甲は完成保証人に直接請負代金その他を支払う。
  乙に対して、すでに前金払、部分払などがあるときは、完成保証人は乙にその清算請求をすることができる。

  (契約に関する紛争の解決)
第二十九条   この約款の各条項において甲乙協議して定めるものにつき協議が整わない場合には、甲又は乙は、当事者の双方の合意により選定した第三者又は建設業法による建設工事紛争審査会(以下「審査会」という。)のあつせん又は調停により解決を図る。
  甲及び乙は、その一方又は双方が前項のあつせん又は調停により紛争を解決する見込みがないと認めたときは、前項の規定にかかわらず、仲裁合意書に基づき、審査会の仲裁に付し、その仲裁判断に服する。
 
  この契約の目的物の全部又は一部が、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第六十三条第一項に定める「評価住宅」に該当する場合の第二十九条に関しては、次の趣旨を含む条項を定めることもできる。
この契約に関する紛争については、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第六十二条第二項に定める指定住宅紛争処理機関が行うあっせん、調停又は仲裁により、その紛争の解決を図る。

  (情報通信の技術を利用する方法)
第三十条   この約款において書面により行わなければならないこととされている承認、承諾及び同意は、建設業法その他の法令に違反しない限りにおいて、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法を用いて行うことができる。ただし、当該方法は書面の交付に準ずるものでなければならない。

  (補則)
第三十一条   この契約書に定めてない事項については、必要に応じて甲、乙、丙協議のうえ定める。
 
  〔別添〕
[裏面参照の上建設工事紛争審査会の仲裁に付することに合意する場合に使用する。]

仲裁合意書
工事名
工事場所
 平成  年  月  日に締結した上記建設工事の請負契約に関する紛争については、発注者及び請負者は、建設業法に規定する下記の建設工事紛争審査会の仲裁に付し、その仲裁判断に服する。

  管轄審査会名                     建設工事紛争審査会
 
管轄審査会名が記入されていない場合は建設業法第二十五条の九第
一項又は第二項に定める建設工事紛争審査会を管轄審査会とする。

平成  年  月  日  
発注者                                       印

請負者                                       印

      〔裏面〕
仲裁合意書について


(一)仲裁合意について
    仲裁合意とは、裁判所への訴訟に代えて、紛争の解決を仲裁人に委ねることを約する当事者間の契約である。
  仲裁手続によってなされる仲裁判断は、裁判上の確定判決と同一の効力を有し、たとえその仲裁判断の内容に不服があっても、その内容を裁判所で争うことはできない。
(二)建設工事紛争審査会について
    建設工事紛争審査会(以下「審査会」という。)は、建設工事の請負契約に関する紛争の解決を図るため建設業法に基づいて設置されており、同法の規定により、あっせん、調停及び仲裁を行う権限を有している。また、中央建設工事紛争審査会(以下「中央審査会」という。)は、建設省に、都道府県建設工事紛争審査会「以下「都道府県審査会」という。)は各都道府県にそれぞれ設置されている。審査会の管轄は、原則として、請負者が建設大臣の許可を受けた建設業者であるときは中央審査会、都道府県知事の許可を受けた建設業者であるときは当該都道府県審査会であるが、当事者の合意によって管轄審査会を定めることもできる。
  審査会による仲裁は、三人の仲裁委員が行い、仲裁委員は、審査会の委員又は特別委員のうちから当事者が合意によって選定した者につき、審査会の会長が指名する。また、仲裁委員のうち少なくとも一人は、弁護士法の規定により弁護士となる資格を有する者である。
  なお、審査会における仲裁手続は、建設業法に特別の定めがある場合を除き、公示催告及ビ仲裁手続ニ関スル法律の規定が適用される。