【2】よみがえれ!!ふるさと 〜旧山古志村は今〜■■■

建政部の住宅調整官をしています陶山(すやま)です。
よろしくお願いします。

住宅・建築行政に関しては、今さまざまな問題が取り上げられていますが、私は『四つの「あ」問題』とネーミングしています。

一つ目は「アスベスト対策」、二つ目は「耐震改修の促進」(地震=earthquakeの「あ」より)、三つ目は「悪質リフォーム」、四つ目は耐震強度偽造をした姉歯事務所から「あ」。

三つ目と四つ目は、まさに悪意そのもの、モラルの欠如の最たるものです。私たちはこれら問題の解決に向け、力を合わせて対応していかなければなりません。

さて、小職は11月半ばに新潟県の旧山古志村(以下、「山古志村」と記します。)の地震災害の復旧現場を視察する機会を得ました。
現地の状況についてご紹介したいと思います。

昨年10月23日17時56分頃に新潟県中越地方を襲った中越地震(M6.8)により、川口町で震度7を、小千谷市・小国町で震度6強を観測するなど広範囲に強震域が広がり、死者49名、住宅の全壊3,185戸、同大規模半壊2,157戸、同半壊11,546戸の他、道路施設等にも大規模な被害が発生しました。
直下型の地震で余震も多く発生し、震度5弱以上の余震が18回も観測されました。また孤立した集落が4市2町1村で61地区にも達し、中でも山古志村は全14地区が孤立し全村離村を余儀なくされました。

このあたりは第3期層(およそ2百万年前〜64百万年前にできた堆積岩の地層で、地形・地質により地滑りが生じやすい)であり、各所で発生した大規模な地滑りのために、道路の寸断や河道閉塞が数多く発生したこともこの地震災害の特徴です。

災害の復旧復興には道路交通の確保がまず前提になります。
山古志村の幹線道路は一般国道291号ですが、断続的に生じた地滑り等のために復旧工事の実施が困難であることから、知事の要請により直轄権限代行災害復旧事業(延長10km)として採択され、現在、北陸地方整備局の長岡国道事務所が担当して工事を実施しています。

この国道291号の復旧工事は、地形上の制約から延長10kmの区間には数カ所からしか入れず、手前の復旧工事現場を数カ所通過してさらに奥の現場で復旧工事を実施するというものです。
ほとんどの現場では、他の現場に向かう工事関係車両を通過させながら谷あいの狭隘な現場で工事を進めています。

現地を訪れたのは晴天が数日続いた時ですが、それでも道路は泥濘化していて、急勾配な工事用道路と相まって低速度での通行を余儀なくされました。
現地の担当者に聞けば、雨の日はさらに泥濘化し通行が困難になるとのこと。
国道復旧工事のポイントは延長約7百m余の山古志トンネルですが、24時間体制で工事を進めており、すでに半分を掘進しているということでした。
またこのトンネルに接続する橋梁の橋台はすでに完成し、橋桁の架設を待つばかりになっています。

次いで、芋川の河道閉塞の現場を訪問しました。地滑りで谷川が塞がれ、上流部の湛水を小学校の建物の中にホースを通してポンプで排水している災害直後のシーンをご記憶の方も多いことと思います。
現地では砂防堰堤の工事と崩壊した山腹の保全工事(山腹工)が進められていますが、地滑りの規模とそれに伴う工事現場の広大さに圧倒されました。
 
移動する車中からは半壊した家屋が多数見られ、また地震で損傷を受けた後おそらく積雪の重みで押しつぶされたと思われる家屋も散見されました。
住宅の復旧は、道路の復旧を待って本格的に始められると聞きましたが、一般の道路交通が一日も早く可能になるよう願わずにはいられませんでした。

山古志村は比較的なだらかな高原状の地形で大規模な棚田もあり、地滑り等の被害にあわなかった山の紅葉はたいへん見事なものでした。
中越地震がなければ「日本のふるさと」を代表する一つだと思います。

山古志村の道路等の復旧工事は、雪解けを待ってこの5月に着手したものですが、わずか半年の間での復旧のスピーディさには敬意を表さないわけにはいきません。
地震で壊滅したふるさとを迅速に復旧・復興させることが出来てこそ国家の存在意義があり、その復旧・復興を成し遂げる技術力・その技術を有する人材を有していることが、国の力であると思います。

中越地震の復旧・復興には、豪雪地帯であり、地質的に脆弱な、地形的に制約の多い現場であることから、二次災害や労働災害のないように祈り、また、仮設住宅におられる方々が一日も早く安穏な暮らしを送られるよう念じつつ現地を後にしました。

【住宅調整官 陶山(内線6114)】