【3】民間任意再開発ビル「ウィステリア天神」の建設について■■■

平成17年8月31日、島根県松江市天神町の民間任意再開発ビル「ウィステリア天神」が竣工しました。

本事業は、島根県松江市の中心市街地内にある天神町灘町地区において、主要地方道松江停車場白潟線の拡幅に伴う市街地再開発の一環として、鞄。忠旧社屋跡地周辺の地権者数名で建設組合を結成し、島根県及び松江市との協議を踏まえ、官民一体で計画が進められてきました。

当地区は江戸時代から白潟天満宮の門前町として、また松江の中心商業地として栄えてきましたが、近年は中心市街地の空洞化という地方都市の例外に漏れず、商店街の衰退、また市内トップの高齢化地区となるに至り定住人口も減少の一途を辿っていました。

そこで高齢者が多いことを逆手にとり、「高齢者に優しいまちづくり」のコンセプトのもと、高齢者が集うまちづくりを目指しながら、街の賑わいや活力を呼び戻そうと様々な試みが進められてきました。
ボケ封じにご利益があるという「おかげ天神」に着目し、平成11年7月から毎月25日には「天神市」を開催。商店街を歩行者天国とし、フリーマーケットや店頭ワゴンセール、商店街内の「ふれあい交流プラザ」や天満宮を利用した様々なイベントが行なわれ、今では高齢者のみならず、周辺部からも多数の一般客が足を運ぶようになっています。

こうした地元商店街、地域をあげての「高齢者に優しいまちづくり」の取組みに併せて、本事業も当初から、高齢者や障害者等の社会的弱者にも配慮した住環境の整備や、市中心部への定住促進に主眼を置いた計画とされました。

検討の結果、歴史ある天神町の北丁と南丁を結ぶ重要な起点であり、駅前から宍道湖へ通ずる主要道路にも面した約1,499uの敷地に、土地利用の高度化を図り鉄筋コンクリート造7階建て、延床面積約2,896uの建物を新築。

1階店舗部分には内科医院、調剤薬局、化粧品販売店が入居し、2階から7階に住宅32戸を配した住商複合ビルとなりました。

2階部分は、島根県高齢者向け優良賃貸住宅制度を活用した1DKの賃貸住宅9戸を整備。
バリアフリーで緊急通報装置や生活リズムセンサーといった、独居老人でも安心して暮らせる構造・設備とし、松江市の「安心ハウス」認定により、入居者の収入に応じて家賃補助制度も利用出来るようになっています。そもそも「安心ハウス」とは内閣府特命顧問である慶応義塾
大学の島田教授が提唱された構想であり、緊急通報ネットワーク付きバリアフリー化住宅を医療施設や福祉施設と併設して供給することにより、高齢者が安心して住み続けることができる環境をつくっていこうというものです。この構想が地区の現状に合致していると考え、採用されることとなり計画に盛り込まれました。

3階から6階部分の20戸は松江市の借上げ市営住宅で、このうち4戸は障害者用住戸となっており、車椅子対応の室内設計が施されています。

7階部分には、専有面積93u〜123uの一般向け賃貸住戸が3戸あり、独自のセキュリティ・システムも設けられています。

総事業費 約725百万円のうち、国や島根県、当市から「優良建築物等整備事業」 「高齢者向け優良賃貸住宅」両制度の補助金 約196百万円を交付しており、事業の企画段階から竣工まで、官民一体となり建替えを進めたモデルケースであると言えると思います。

建物名称である「ウィステリア天神」には、藤の花を表すwisteriaの意味に加え、We stay real(@本当に良いものに住まう A住む人自身が、その人らしく、真に充実した人生を送れるように)We stay this area(この建物が、そこに長い間ずっと実在し続けるように)という我々の想いが込められています。

「ウィステリア天神」をひとつの良い中心市街地における事例として踏まえながら、地域の賑わいを呼び戻し地域の発展に結びつくよう、今後も官民連携したまちづくりに取り組んでいきたいと考えています。

【松江市都市計画部建築指導課長 小松義昌】
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