【3】自然景観と歴史・文化的景観の保全■■■

大田市は、島根県の中央に位置し、平成17年10月1日に大田市、温泉津町、仁摩町の1市2町の合併により新しい大田市が誕生しました。

当市には、国引きの山の神話に登場し大山隠岐国立公園に指定されている三瓶山(佐比売山)の雄大な自然や棚田の連なる農村の風景、漁火の日本海と赤瓦屋根の連なる漁村の風景、奇岩や洞窟の連なるリアス式海岸と砂浜が交互におりなす海岸、中でも鳴砂で有名な琴ケ浜は「日本の音風景・百選」や「日本の渚・百選」に選ばれるなど海と山の美しい自然景観に恵まれています。

また、当地域の中央には新市のシンボルである石見銀山遺跡があり、平成19年の世界文化遺産登録を目指し平成17年9月には日本国政府よりユネスコに対し推薦書が提出されました。
推薦書には、資産の名称を「石見銀山遺跡とその文化的景観」とし16世紀から20世紀にかけて銀の採掘・製錬から運搬・積出しに至る鉱山開発の総体を表す「銀鉱山跡と鉱山町」、「街道」及び「港と港町」の3つの分野から成るとしています。
また、このような銀の生産から搬出に至る鉱山開発の社会機構及び社会基盤施設の総体を示す良好な「遺跡」及び「建造物群」から成り、山林に覆われて当時の土地利用のあり方とそれらの機能の一部が現在の土地利用の在り方にも伝達された顕著な普遍的価値をもつ文化的景観の事例であると説明しています。

このように、地域の自然景観と人々の営みから築き上げられた文化的景観が融合し地域の誇りと暮らしへの愛着を深め、今日のまちづくりに大きな役割を果たしてきました。
これらの景観を保全しその価値を高め、未来に引き継ぎ、県央の中核都市として活力や魅力ある都市づくりを進めることが最大の使命であり課題となっています。

旧大田市においては、昭和38年に三瓶山周辺2,059haが国立公園区域に指定され自然環境が保全されてきました。昭和49年に「大田市自然環境保全条例」を制定し海岸部や国立公園三瓶山の周辺、石見銀山遺跡周辺の2,352haを指定し景観の保全に努めてきました。昭和61年には「民間開発指導要項」を定め地場産業で瓦の原料となる粘土採掘に対しても良好な地域環境の確保について指導を行ってきました。
また、昭和62年には「大田市伝統的建造物群保存地区保存条例」を制定し大森地区32.8haの歴史的風致の保全にも努めてきました。平成16年には、旧温泉津町においても「温泉津町伝統的建造物群保存地区保存条例」を制定し33.7haの歴史的風致の保全を図ることとしています。
大田市駅周辺西側土地区画整理事業においては、平成12年に都市計画大田市駅前(西側地区)地区計画2,7haを策定し良好な市街地環境の整備を図ってきました。

石見銀山遺跡の世界遺産登録を目指す中にあって、平成16年には旧大田市、温泉津町、仁摩町の1市2町において「石見銀山景観保全条例」を制定し保全区域を3,663ha指定し景観の保全に努めることとしています。
合併後の新市のまちづくり推進計画においても「自然・歴史・ひとが光り輝く だれもが住みよい 県央の中核都市」を将来像とし、また、石見銀山遺跡を新市のシンボルにし古い町並みの整備・活用、環境保全の取組みなどを推進することとしています。
しかし、これまでの条例では地域の限定や指導等にも限界があるため、このたび施行された景観法に基づき本年5月に景観行政団体に移行しました。

今後は、石見銀山の関連遺跡、歴史的町並み、また、三瓶山や日本海の農・山・漁村風景など良好な景観を保全し未来に引き継ぐため景観計画の策定、関係条例の整備を行い世界遺産の街にふさわしい個性豊かな都市景観の創造を図ってまいります。

【大田市都市計画課 課長 和田和夫】
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