【1】住まいづくりビジョンの策定について■■■

太田川河口デルタを中心に発展してきた広島市は、平地部が市域面積の約17%と狭く、市域の大半を丘陵地・山地が占めています。また、波静かな瀬戸内海に面しており、海に開かれ緑豊かな、自然に恵まれた都市です。

広島市の居住地は、利用可能な平地部が少ないという地形的制約の中で、人口と産業の急激な集中により、デルタの既成市街地から郊外の丘陵地へと拡大していきました。
郊外に開発された住宅団地は、緑地の減少や交通渋滞を引き起こしましたが、一方で、人口定住の場として、広島の社会経済の発展を支えるとともに、生活・居住水準の向上、良好な居住環境の確保や戸建て持家志向への対応など、その役割を担ってきました。

平成15年の住宅需要実態調査の結果では、一戸建て持家の8割近くが居住継続の意向があり、一方、今後住み替える場合、必ずしも新築にこだわらない世帯が4割となっており、住まいの立地でも「都心部」、「郊外」、「特にこだわらない」がそれぞれ3割弱と、意識の多様化が見られます。

郊外の住宅団地では、同世代が同時期に入居を開始していることから、一斉に高齢化が進んでおり、子供の転出と核家族化により、今後、高齢者単身・夫婦世帯が増加することが予想されます。
一方、デルタ市街地(都心部)では、地価の下落や企業保有地の放出などからマンションの建設が進んでおり、高齢者世帯が利便性の良い都心部に居住する住み替えの動きもあります。
このように、社会・経済情勢の変化の中で、広島市の居住地構造に変化の兆しが見受けられます。

住宅は、子どもを育て、家族が憩い、老後を過ごすなど幸せを育み、明日への活力を養う重要な生活基盤であると同時に、街並みや都市環境を形成する主要な社会基盤です。
今後とも活力ある豊かな地域社会を実現するためには、住生活の向上が欠かせません。

このため、本市では、現在、今後の住宅政策の基本的な方向を示す「住まいづくりビジョン」の策定作業を進めています。
市民の居住に対する意識は、住宅のみならず、周辺環境を含めた住生活全体に広がっており、ビジョンの策定にあたっては、そういった視点も必要となります。また、多様な主体がそれぞれの立場で活動できるよう、住宅政策の目指す姿や施策による効果をわかりやすく示していくことも必要となります。

このような観点に立ち、市民が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、また、利便性や子育てに適した環境を求めて転居する世帯など、多様な居住ニーズに対応できるよう、有識者や市民の皆様のご意見をいただきながら検討し、策定していきたいと考えております。

市民が豊かさを実感できる住生活の実現を目指して、市民・事業者・行政が連携して、広島の山・川・海などの地域特性を生かした広島らしい住まいづくりに取り組んでまいります。


【広島市都市整備局長 三浦泰明】
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