【4】倉吉市のまちづくり■■■

全国的に市町村合併の進展が見られる中、平成17年3月22日に倉吉市と関金町が合併し、人口約5万3千人の新生「倉吉市」が誕生しました。
鳥取県の中部に位置する本市は、南側は岡山県と隣接しており、大山の東山麓を源として流下する小鴨川、南東部から流下する天神川が中心市街地周辺にて合流し日本海に注いでいます。

歴史を紐解けば、古代には伯耆の国(鳥取県中・西部地区)の国府や国分寺がおかれるなど、政治・経済・文化の中心的位置を占めていました。
町としての成立は、室町時代14世紀ごろと推定され、16世紀ごろには打吹山に城が築かれ城下町としての骨格が形成されました。
その後、江戸時代の一国一城令により打吹山の城は取り壊されましたが、鳥取藩の陣屋が置かれ、大正時代ごろまで木綿(倉吉絣)・稲扱千歯などの特産品の流通により日本全国との文化の交流があり、産業・経済活動が活発でした。

現代もなお、中心市街地を東西に結ぶ本町通り(600m)を中心に、江戸〜昭和初期の面影がまちのいたるところに存在しています。

昭和54年度に行なわれた建物調査により、本町通りの商家の主屋のうち江戸時代後期〜昭和(戦前)に建てられたものが76%、本町通りの北側の玉川沿いの土蔵のうち昭和(戦前)以前に建てられたものが78%と高い率で継承されていることがわかりました。
残念ながら道路の新設や建物の老朽化により取り壊された建物もありますが、平成10年4月3日に本町通り東側300mおよびその周辺を倉吉市打吹玉川伝統的建造物群保存地区として都市計画決定を行い、同年12月25日に文化庁より重要伝統的建造物群保存地区としての選定をいただきました。

現在、昭和58〜61年に倉吉市・倉吉商工会議所・地域住民等で組織された「倉吉古い町なみ保存会」によって修理された特徴ある白壁の土蔵と、土蔵を利用した商業施設を運営する株式会社赤瓦と赤瓦各店(全8館)が、赤瓦・白壁土蔵群の名称で世間に知られ、年間30万人以上の来訪者が訪れるようになりました。

これまでの取り組みが順風満帆であったわけではなく、時には残念な出来事もありました。
それは、平成15年5月13日未明に伝統的建造物群保存地区にて発生した火災により4件13棟が消失したことです。
しかしながら、火災後に寄せられた義援金や地域住民の努力により被災地は徐々に復興しています。
また、「倉吉町なみ保存会」は、二度と同じような災害を繰り返さないように自主防災組織を結成し、火災跡地に整備された防災センター「くら用心」に新たに配備された可搬式のポンプを用いて、年4回程度の防災訓練を行なっています。

地域住民の努力はまちなみ保存に留まりません。

地域の商業者は、「福の神にあえる街」を基本コンセプトに既存商店街の枠組みを越えて「あきない中心倉」を結成し、福の神(木製の彫像)の設置、福の神をめぐるスタンプラリーなどの取り組みを行なっています。
特に、久米郡倉吉驛(国の有形登録文化財の豊田家住宅)にて開催される歴史講談は、倉吉と関係の深い人物を題材にしたもので、非常に聴き応えがあります。
「たまゆらの人生、里見安房守忠義」(里見八犬伝のモデルとなった里見忠義の終焉の物語)、「淀屋の光と影」(大阪の淀屋と深い係りがあった淀屋清兵衛の物語)を毎週土日に楽しむことができるので、倉吉に寄った際にはぜひ聴いてください。

行政もがんばっています。

地域の各種団体が集まって組織された「打吹地区歩行ネットワークを考える会」にて、夢街道モデル地区の認定をいただいた八橋往来をはじめとする中心市街地を回遊ルートの検討を行い、検討結果に基づき地元NPOがデザインした歴史的景観に即したベンチ・道標・駐輪場の設置や自然色舗装を、国の補助を受けて行いました。
本年度は、社会実験にて地域住民や地元NPOと協力しながら一時的な通行規制を実施し、伝統的建造物群保存地区とその周辺における課題(歩行者の安全性の確保、来訪者の滞在時間・回遊性の確保、地域の活性化、周辺道路環境の影響)に対する調査(各種アンケート、交通量、駐車場利用率・駐車時間)を行います。
来年度以降は、歴史講談のモデルとなった淀屋清兵衛ゆかりの倉吉最古の町屋を、所有者から譲渡を受け、整備・公開する予定です。
また、伝統的建造物群保存地区となっていない西側300mにおける伝統的建造物群保存地区以上に豊富にある歴史的資源の保存・活用についても検討していきたいと考えています。

10年後、おそらく倉吉の中心市街地は大きく様変わりしますが、まちに残っている生活感を失わないように、地域住民と来訪者がよい関係を保つことが出来るように努力していきます。

【倉吉市建設部長 増井 壽雄】
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