第3回 灰塚ダムモニタリング委員会 議事要旨 |
項 目 |
指摘事項 |
事務局回答 |
洪水調節調査 |
小規模出水の場合、下流河川の環境のためにはダムで調節しない方がよいと考えられるが、調節を行う流入量基準値があるのか。 |
自然調節方式であるため、小規模出水についても調節することになる。このため、下流河川の環境保全を目的として、環境用水放流設備により中小規模の出水を再現するための放流を行うこととしており、6月23日の出水時に約100m3/sの放流を再現した。 |
水質調査 |
貯水池で確認されている鞭毛藻類の中には淡水赤潮の原因になる植物プランクトンが含まれているか。
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淡水赤潮の原因になると言われているペリディニウムという渦鞭毛藻類がわずかに確認されている。
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今回実施した上流河川のリン濃度調査は低水時のものであるが、ダム湖への流入負荷量を評価するためには出水時についても調査が必要ではないか。
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今後の水質状況をみて判断していきたい。 |
貯水池の下層で夏期にT−Pが上昇した原因について、底質からの溶出と推察しているが、湛水初期において既に底泥が堆積しているのか。上流からの流入によることも考えられないか。
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T−Pの上昇は下層のみであり、流入によるものとは考えにくい。湖底部は元々水田であったところが多く、これら水田跡地から溶出していることも考えられる。
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湛水初期のダムにおいて底泥の堆積は考えにくい、湛水前の土地利用状況はどうか。
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生物(動物)調査 |
ダルマガエル |
ダルマガエルの数が増えているのは、有志による繁殖・放流活動の成果であって、自然状態での個体群が残存しているのではない。放流個体は親が同じであるため、同じ遺伝子を持っていると考えられる(事実、斑紋がほとんど同じである)。また、前年度に放流した個体の生存が現地で殆ど確認されないなど、既に危機的な状態にあり、早急な保全対策が必要である。
最近、中国横断道工事の関係で三次市吉舎町内で新たに確認された個体群はいろいろな斑紋を持った個体がいるため、遺伝子が違うと推測される。これらの保全対策と併せて、ウェットランドにおいて繁殖させるなどの環境整備を講じてほしい。 |
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ダルマガエルの個体群が維持できるかどうかについては、MVP(存続可能最小個体群:minimum
viable population)がクリアできているかどうかが重要である。
また、現在確認されている地区の水田は、従来の農業慣行と異なる営農となっているため、ダルマガエルの生息環境としては好ましくない。このため、ウェットランドの谷戸などに生育できる環境をつくるのが望ましい。
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オゾン層の破壊など、地球環境の変化により最もダメージを受けるのはカエルなどの両生類である。
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コウノトリ |
コウノトリの定着のためには、餌動物が豊富にいることが重要である。このため、今後、ウェットランドにおいてザリガニやフナなどの餌動物が増えているかどうか状況を調べてほしい。 |
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生物(植物)調査 |
移植植物 |
移植した植物の多くは貧栄養を好むものでり、肥料を与え過ぎると花を咲かせないことがある。
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生態系(上位性)調査 |
クマタカ |
クマタカのつがいの行動範囲は、ダム事業区域と殆ど重複していないようだが、ダムによる影響という視点で上位種として調査する理由が分かりにくい。
また、クマタカは植林して10年程度のところを狩り場として利用するが、今後、山林の管理が行わなければ、ダムに関係なく採餌環境がなくなる可能性がある。このようなことに対してまでダム事業者が保全対策を行う事は現実的でないのではないか。
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行動圏の内部構造解析を行った結果、狩り場や営巣環境についてのダムによる影響の度合いは小さく、クマタカの生息に与える影響も小さいと判断しているが、仮に影響が生じた場合には生態系に与える影響が大きいことから調査を実施している。 |
今後、ダム周辺の、現在クマタカの行動圏となっていないエリアにもクマタカが生息するようなこともあるかもしれない。また、ウェットランドの整備との関連で、猛禽類の調査をしておくことは有意義であるため、最低限の調査は継続すべきと考える。
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クマタカのAつがいが昨年まで2年連続で繁殖に失敗した原因として、事業区域と近いことや個体の老齢化などが考えられる。一方、Bつがいが昨年、今年と2年連続で繁殖に成功した事は希で、当該地域は積雪が比較的少なく餌環境が良好である事が考えられる。
今後も調査を継続するとともに、餌内容の調査を検討してほしい。餌環境の資料は他ダム等の猛禽類調査の資料として大変貴重なものとなる。
また、猛禽類調査において、最近繁殖が確認されていないサシバについても留意してほしい。 |
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生態系(典型性河川域)調査 |
魚類 |
カネヒラがダムに近い下流河川で確認されなくなった理由のひとつとして、元々馬洗川、上下川には多くないことと、産卵に利用する貝がイシガイに限られているために影響を受けやすいことなどが考えられる。
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オオクチバス |
オオクチバス調査の結果、25cm以上の個体が少ないというのが理解しづらい。以前から生息していたのなら、もっと広範囲のサイズのものがいてもおかしくない。密放流の可能性も考えられる。
現在、広島県内水面漁場管理委員会においてリリース禁止について検討している。だだし、リリース禁止措置のみでは釣りに来る人が減り、逆に増殖を助長することになるため、回収生け簀を設けるなどの対策を併せて行う必要がある。
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在来種であるウグイがオオクチバスの卵を食べるという情報もあることから、ウグイを利用した駆除も考えられる。
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灰塚ダムにおいては、オオクチバスを極力排除していくという意思表示をきちっとしてほしい。県内でも漁業関係者がオオクチバスの遊漁を認める姿勢をとっている地区もあると聞いているので、そのようなことにならないようにしなければならない。
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鳥類 |
ミサゴ、サシバは湿地環境の指標種となるため、ウェットランド周辺における鳥類調査をしっかり実施してほしい。
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H19年度からウェットランドにおける鳥類調査を実施する。
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貯水池周辺調査 |
昆虫類 |
昆虫類調査結果の評価の考え方はよいが、トンボ目、バッタ目を評価対象としているのに、ライトトラップ調査の結果を評価するのはどういう意味か。
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ライトトラップ調査結果の評価は、昆虫相全体の評価に用いる。また、評価対象として抽出する種(目)についても、現時点ではトンボ目、バッタ目を想定しているが、これらに限定するのではなく、調査結果を踏まえて検討したい。
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調査にあたっては、ベイトトラップ調査をしっかり実施して、個体数、種類数の把握に重点を置く事。昆虫類の調査では、環境回復ではなく新たに創出された環境における種の変遷を把握する事が重要である。このため、調査方法、評価方法を再度よく検討のうえ、実施すべきである。
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植生回復状況調査 |
ダム湖周辺道路のコンクリート壁面が目立つ。予算上の制約もあろうが、温度を下げる効果もあるので、ダム湖周辺の緑化に努めてほしい。湖岸に高木があれば、背後の山林との連続性という意味で生物の生息環境が向上する。
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他地区では、集落の周辺においてサルやクマなどの獣害を防止するため、木を切って緩衝帯を作っている事例もある。単にダム湖周辺に木を植えるのではなく、メリハリをつけ、木を植える箇所や草地とする箇所など、多様な環境をつくることに配慮してほしい。
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第3回 灰塚ダムモニタリング委員会(委員事前説明) 議事要旨 |
項 目 |
指摘事項 |
事務局回答 |
生物(植物)調査 |
移植植物 |
移植した植物が全て活着することは難しいと思うが、生育が確認されていない種については次のような対応が必要である。
レンプクソウについては、移植時の状況と成育が確認されていない理由を整理しておくこと、ナンゴクウラシマソウについては、調査時期をよく考えて調査を行うことが必要である。
また、キバナノアマナについては、開花しないと判別が困難であるため、開花期に調査を行うことが重要である。 |
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※指摘事項に対し、委員会において事務局から具体的な回答を行っていないものについては、今後事務局で検討し委員のご指導を受けながらモニタリング調査を実施する。 |