ウグイ
 Tribolodon hakonensis
分 布
ほぼ日本全国に分布するが、四国の瀬戸内側の一部や琉球列島にはいない。国外では、南千島、サハリン、アムール川流域と、沿岸州から朝鮮半島東岸までに分布する。
分 類 コイ目 コイ科 ウグイ亜科
地方名 イダ(九州、四国、山陽、関西、北陸)、ネコマタギ(広島県)
形 態
全長約30 cm。背面は暗褐色で腹面に至るに従って銀白色となる。体側中央に黒い縦条(たてじょう)があるが、不明瞭で見えにくい。そのやや上方に黄緑色ないし、金色の縦線が走り、水中で見ると、明瞭に光る。
 婚姻色は雄、雌ともに明瞭で、3列の朱赤色の縦条が出現し、最下部のものは特に顕著。追星(おいぼし)はほぼ全身に出る。
類似種
類似種にマルタウグイ、エゾウグイ、ウケクチウグイがいるが、太田川には生息していないようである。それぞれの種は互いに極めて似ており、区別は困難である。
生息場所
アマゴ(サツキマス)やイワナ(アメマス)と同様に、河川残留型と降海型とがある。淡水型は河川の上流域から河口域、山あいの湖沼などに広く生息している。川では主に淵などの中に棲み、群れで移動することが多い。瀬でも、大きい石がごろごろしている場所では、その下手に生息する。他の魚の棲めないようなpH3という強酸性の水域にも生息するものもいる。降海型は汽水域から内湾、外海の沿岸部までに見られる。太田川では3〜5月にかけて遡上し、チャラ瀬や堰の直下で大群となって産卵する。川に春を告げる風物詩となっている。
生活サイクル
繁 殖
産卵期:3〜6月
産卵場所:比較的流れの緩やかな瀬に数百尾が集まって産卵する。場所は毎年だいたい決まっているが、雨後の増水で洗われた浮き石状態の砂礫底を好む。
産卵行動:雌1尾と雄数尾が産卵床に突進して産卵・放精し、卵は石礫の下面に埋もれる。夜間より昼間の産卵が多い。
卵・仔魚:球形で、直径は1.8〜2 mm。5〜10日で孵化する。
食 性
典型的な雑食の魚類である。付着藻類や水生昆虫、落下昆虫を食べる。他の魚や獣などの死骸にも集まる。魚卵も好み、サケ・マス卵の害魚ともいわれている。
冬から産卵期にかけて美味で、唐揚げを酢につけて食べたり、味噌田楽にする。夏のウグイは味が悪く、猫もまたいで通るという意味で「ネコマタギ」とよばれる。
日本産のコイ科魚類の中で最も生態的分布域の広い種である。河川上流から河口まで、また、湖沼などにも広く分布する。
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