イタチ(ニホンイタチ)
 Mustela itatsi itatsi
分 布
国内では本州・四国・九州・その他いくつかの島に生息していたが、1930年代からネズミ類駆除のため八丈島、石垣島などに導入され、今日では日本全域に分布している。
分 類 ネコ目 イタチ科
形 態
体長:雄が頭胴長27〜37 cm、尾長12〜16 cm、体重300〜700 g。雌が頭胴長16〜25 cm、尾長7〜9 cm、体重140〜300 g。
 国内産のほ乳動物の中では雄、雌の差が最も大きい。体色は夏季では褐色がかった黄土色で、一見チョコレート色であるが、冬季は、山吹色になる。顎下は白っぽく、額中央部から鼻鏡部にかけて他種と区別できる濃褐色の斑紋がある。仔の体色は、暗紫色で口先の白い部分が目立つ。体型は胴長で、足が短く、尾は太い。指の間には小さな水かき状の膜がある。肛門の左右に1対の肛門腺があり、糞の排泄時に臭い付けを行うが、身の危険を感じると、肛門腺からかなり臭い黄色の液を分泌する。
類似種
チョウセンイタチは1930年頃に阪神地方の養殖場から逃げた個体がもととなって、関西地方で分布を広げ、さらに1945年頃に朝鮮半島からの船荷に紛れて九州に侵入し、現在では中部地方以南の本州、九州に広く分布している。チョウセンイタチはイタチよりも体が大きく毛が粗い。また、口の白斑がはっきり目立つことや、尾率(尾長÷頭胴長)が、イタチは0.5以下、本種では0.5以上であることなどで、両者を区別できる。
生活行動
年周行動:イタチは一夫多妻で、雄は繁殖期には数頭の雌と交尾するが、非繁殖期には、育児には関与せず、ほとんど単独で生活する。そのため、雌が単独で仔を育てる。5月頃に生まれた仔は生後70〜80日で早くも成獣と同じ体重となる。8月頃には雌親と別れ仔供だけで一群となって生活し、10月下旬頃から単独生活に移る。雌雄とも満1年で成熟する。イタチの寿命は雌雄合わせて飼育下では平均1.4歳、野生では平均1.9歳と短命である。
行動・習性:イタチはふつう、行動圏内に本拠地の穴と、休息用の穴を持っている。昼間も活動することもあるが、主に夜行性で、日が落ちると穴からでて活動し、夜が明けると近くの穴に入って休息する。ほとんど藪の中で単独で行動しているため、個体間のコミュニケーションには糞や尿を用いることが多い。
生息場所
主に、平野部の草地や、川沿いなどの水辺に生息するが、低地の田畑や人家の周辺、山岳地帯にも生息する。雌は一定の行動圏を持ち、土穴などを巣としているが、雄はいくつかの雌の行動圏に重なるような行動圏を持つ。行動圏は雌が約2 ha、雄が約5 ha持つといわれている。
繁 殖
繁殖期:一般では年1回、3〜5月に交尾し、ほぼ1ヵ月後に1〜10頭出産するが、九州では年2回繁殖するという例もある。また、授乳期間は40日前後である。
繁殖場所:雌が自分の行動圏内の巣で仔を育てる。
食 性
主としてネズミ類を捕食するが、小鳥の卵や雛、昆虫類、カエルなども捕食する。また、水に入りザリガニなどの甲殻類や魚類を捕食することもある。
ノネズミの駆除として、農林業上有益とされる。また、狩猟獣として狩られることもあるが、最近では毛皮としての価値の減少から狩猟数も激減している。
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