アカメヤナギ(マルバヤナギ)
 Salix chaenomeloides
分 布
国内では、 本州(仙台より南)・四国・九州、 国外では、 朝鮮半島・中国大陸(中部)に分布する。
分 類 被子植物 双子葉植物 離弁花類 ヤナギ科
生活形 落葉高木
生 態
川岸や池・湖などの岸辺に生える落葉高木で、流れの速い瀬から水のよどんだ岸辺など、生態的に広い範囲に生育する。
形 態
大きくなると幹の直径が1 mを越えるが、太田川では、大きくても30 cmくらいで、高さは10 mに達する。広島城には被爆樹木として大きな木が残っている。
 枝はしだれず、直立あるいは斜めに伸びる。枝は折れにくい。冬芽の鱗片(りんぺん)は腹側に裂け目があって、互いに重なっている。これは本種の大きな特徴で、他のヤナギの冬芽の鱗片には裂け目がなく帽子のような形である。葉は広い楕円形で、長さ5〜15 cm、幅は2〜6 cm、両面ともに毛はなく、裏面は白っぽい。葉の先は尖り、縁には細かい鋸歯(きょし)があり、その先端は液体を分泌する腺になっている。葉柄が枝につく所に葉の附属物があり、托葉(たくよう)といい、大きくてハート形を半分にしたような形。葉と托葉の形や新芽が赤いことなど、バラ科のボケによよく似ているので、学名のchaenomeloidesはボケ属(Chaenomeles)に似たという意味である。
 花は、広島県のヤナギ属としてはもっとも遅く咲き、4月下旬〜5月上旬である。雌雄異株。穂は細長く、雄しべは5本、他のヤナギ属は2本であり(タチヤナギは3本)、雄しべの数が多いことは原始的な特徴である。雄しべは互いに離れ、オオタチヤナギのようにY字形に融合することはない。雌しべの子房には毛がなく、柄の長さは子房の半分くらい。子房の上部の花柱はきわめて短く、その先端の柱頭は2つに分かれる。果実は長さ4 mmくらいで、2つに裂け、種子には白い毛があって、風で散布される。
類似種
オオタチヤナギは葉が長く、花が4月上旬、雄しべは2本でY字形に融合し、葯(やく:花粉のある袋)はあずき色。しかし、葉や花がない時には区別しにくいが、オオタチヤナギの枝は折れやすい。ネコヤナギは低木で1 m前後、葉は両面に毛があり、花は早く2月下旬に咲く。ネコヤナギの枝はきわめて強く、折れにくい。
生育場所(太田川での分布)
可部から下流、大芝水門付近まで。中流から上流部には少ない。またデルタにはほとんどない。高瀬堰の下方には群生している所がある。
生活サイクル
チョウ類のコムラサキの食草となる。
赤芽柳の意味で、若葉が赤色を帯びることからこの名前がついた。別名であるマルバヤナギは他のヤナギ類に比べ葉が広く楕円形であるからである。
材は軽くて柔らかく、昔は下駄や箱を作ったという。
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