コムラサキ
 Apatura metis
分 布
北海道の南部・本州・四国・九州に広く分布する。黒褐色型は中部東海地方、能登半島、九州南部に多く分布され、まれに茶褐色型が優占的な地域でも、発見される。
分 類 チョウ目 タテハチョウ科
形 態
成虫:前翅長31〜44 mm。翅(はね)の地色は茶褐色か黒褐色、雄の翅表の中央部は青紫色に光り、黄橙色紋を持つ。雌には青紫色の幻光はない。翅の裏面の地色は橙褐色で淡色の帯がある。茶褐色型は黒褐色型に対して優性である。
類似種
オオムラサキやゴマダラチョウと類似する。オオムラサキは本種に比べて大型で、雄の翅表中央部に大きな青紫色の紋をもつことなどで区別できる。また、ゴマダラチョウは、大きさがコムラサキと同程度であるが、翅の地色は春型では褐色、夏型では黒色で白紋があり、雄の翅表も青紫色を帯びない点で区別できる。
生息場所
主に、河川周辺のヤナギ類の林に生息する。中流域の流路が蛇行しているような場所に発生地が多く、火山礫原に見られるバッコヤナギなどで多数発生することもある。また、人為的環境でも見られ、都市の公園や街路樹として植えられているヤナギ類に発生することもある。
生活サイクル
繁 殖
交尾:雌は羽化直後から交尾能力があり、まだ翅が伸びきらないうちから食樹の周辺を飛翔している雄に発見されて交尾する。
産卵:主に午後に行われ、緑葉の葉表や葉裏に1卵ずつ産付する。
卵:形状はつりがね型で、産卵直後は青緑色である。
幼虫:卵は6〜7日で孵化する。その後、成長して脱皮を繰り返し、5齢幼虫(終齢幼虫)から蛹を経て羽化する。終齢幼虫は全長約40 mm、胴部は緑色で全身にある微毛は黄色である。頭部の突起から伸びる一対の黄色条は近縁種のものより短い。胴部にも一対の突起をもつ。
出現期:本州の暖地では年2回発生し、5月下旬〜10月にかけて見られる。寒冷地では年1回発生し、7〜8月に羽化する。
寿命:成虫の寿命は雄で14〜20日、雌で20〜25日と推定される。
食 性
幼虫の食餌植物はヤナギ科植物に限定される。成虫はヤナギ類、クヌギ、コナラなどの樹液を吸汁する。雄は獣糞やヒトの汗などにも飛来し、河原や路上で吸水する。花にはほとんど吸蜜に訪れない。
飛び方は敏捷であり、長い滑空を交え、梢上などを速やかに飛ぶ。
近年、河川改修工事などに伴い、河川敷のヤナギを主体とした樹林が伐採されることが多く、減少傾向にある。
翅表の黒化が著しく、帯状斑が白色となるクロコムラサキは同種であるが、通常型に対し遺伝的に劣性であるため、産地が限局されるが、非常に美しい。
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