古川の多自然型川づくり
【古川とその概要】
航空写真  太田川の支川・古川は、広島市北部の安佐南区にあり、JR広島駅から約9kmと広島市中心部にほど近い位置にあり、流域面積は67.5km2、河川延長は6.1kmです。
 古川は名前の示すとおり、以前は太田川の一部でしたが、慶長12年(1607)年の大洪水により現在の流れになったとされています。下流の太田川放水路が概成して、太田川の治水安全度が向上したため昭和41年から44年にかけ、太田川から分かれている所を締め切る工事が行われ、現在は高瀬堰より水を取り、古川に流しています。
 堤防で締め切ったことにより、広い土地が出来たことから、後に土地区画整理事業として第一・第二古川との一体的な整備として生かされています。

【古川の工事で工夫したところ】
 工事をする前の古川は、草木が生え魚や鳥もたくさん住んで自然が多く残されていました。しかしそのままでは洪水の時に水の流れが悪いので、水が堤防からあふれてしまうかも知れません。
 そのため、なるべく自然に近づけながら堤防を丈夫にするための色々な工夫が施されています。

@ 自然をなるべく残すようにしました。
 古川を工事するときに、そこに住んでいる生き物になるべく影響を与えないようにするため、川の流れが変化するように、わざと川の流れを曲げたり、川幅が広い場所には鳥が休めるように中州を作ったり、小魚が住んだり大きな魚から隠れたり出来るように、隙間があるように石を積んだりしました。また川の中の木は、洪水の時に水の流れを邪魔するものを除いて、なるべく残すようにしました。このように、魚や鳥が安心して住めるような工事をしました。

空石積
空石積
落差工
落差工
A 水と遊べるようにしました。
 町の中に流れている古川にもっと親しんで頂きたいと考え、川に近づきやすいように堤防の傾斜を普通の堤防より2〜3倍(1:5〜6勾配)までなだらかにしました。川沿いには散歩が出来るよう散策路を作り、幼稚園や老人福祉施設のある場所では、車椅子で水際まで行けるように勾配をゆるくしました。また、反対側の岸に渡れるように飛び石や丸木橋をかけました。
 水の深さも小さな子供が安心して遊べるように30cm程度にしました。
張芝緩傾斜面
張芝緩傾斜面
散策路
散策路
B 洪水に対して大丈夫なようにしました。
 洪水の時に水がぶつかるところには、コンクリートブロックを張りました。ただ、このままでは不自然なので、コンクリートブロックの上を余った土を使って覆いました。
 これにより堤防の表面に変化が生まれ、より自然に近くなりました。また土の中に入っている草木の種が芽吹き、元々そこにあった草木が生えることで、より工事前の自然に近くなります。
標準断面図
標準断面図

【これからの古川】
 古川の下流では、特に豊かな自然が残っており、広島市街地にありながら水鳥やカワセミなど、多くの野鳥が飛来する貴重な生息空間となっています。
 古川周辺の住民の方々が組織する市民グループが主体となって、バードウオッチングなどの自然観察や古川の清掃活動をイベントとして行っています。新興住宅地として都市化が進むこの地域では、昔から住んでいる人ばかりではなく、地域の新しい住民も古川に興味を持ち、これからの「古川の川づくり」に対する活動を広げていこうとしています。