【4】鳥取県東部の茅葺き民家と農村原風景の再生に向けて■■■

本県では、潜在する地域資源を掘り起こし活用することにより、地域を元気にするまちづくりや地域らしい景観づくりを目指しています。東部における隠れた地域資源・景観資源には、まずは茅葺き民家、そして辻堂(おどう)、蔵飾り(鏝絵)などがあげられます。以下では、これらの内、平成17年度に鳥取環境大学が実施した「鳥取県東部地域の茅葺き民家調査」からその概要を報告します。

茅葺き民家の減少:全国の茅葺き民家の存在は、昭和40年代の高度経済成長期を境に急激に減少してきました。鳥取県の東部地域(1市4町、約8.6万世帯)では、金属板覆いを含む茅葺き民家の棟数は421棟です。
全世帯に占める割合は約0.5%という状況です。ここまで減少してきた背景には、@エネルギー革命による生活の変化、A住宅建設の機械化や産業化、B茅葺きは古いという所有者意識の増大、その結果としてのC茅葺き葺き替え職人の減少、D原材料の茅と茅場の不足、E村総出による葺き替え支援システムの崩壊、などが考えられます。

茅露出民家の実数と分布:この421棟の茅葺き民家の内、茅が露出している民家は60棟(約14%)、金属板等で覆われている民家は361棟(約86%)です。茅葺き民家が最も多い地域は、智頭町で134棟、全体の約3割を占めています。なお、茅が露出する民家の多い地域は八頭町の21棟と智頭町の20棟ですが、その要因として、八頭町には現役の茅葺き職人がいる、智頭町では岡山県から茅葺き職人がメンテナンスに来ているということがあげられます。

茅葺き民家の生活実態:茅葺き民家全体の居住率は約65%で空き家率は35%です。この内、茅露出民家(60棟)の居住率は4割、空き家率は6割であり、金属板の民家(361棟)の居住率は7割、空き家率は3割という状況です。このような比率の大きな違いは、そこに住み続けようとする人は投資を覚悟して茅屋根を金属板で覆い生活を継続してきましたが、諸事情でやむを得ずあるいはそこでの生活を断念した人は金属板覆いをせずにそのままにしてきたという現実があったものと伺えます。

茅葺き民家の景観:写真マニアなどから茅露出民家の所在地を教えて欲しいという問合わせが良くあります。伝統的な農村の原風景はとても懐かしがられています。一体どうしたら、あの見事なまでに美しかった農村の原風景を取り戻すことができるでしょうか。その為には、@残された茅露出民家の維持保全助成策、A空き家になった民家を利活用する官民とNPOによる手だて、B景観再生のために金属板を自主的に取り外せるような修景施策、などが必要でしょう。

今後の進め方:この6月には民間ギャラリーで茅葺き民家の写真展を開催しました。今年度は更に一歩進めて、集落における茅葺き民家を維持保全する支援ネットワークづくりや空き家になった茅葺き民家の利活用事業などをNPOや市町村と協働しながら進めます。また、茅葺き民家や辻堂、蔵飾りなどの色々な地域資源をトータルに眺め・検討する「景観まちづくり勉強会」を開催いたします。

【鳥取県景観まちづくり課 主幹 宮本孝二郎】
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