【1】まちづくりへの想い■■■
       
今回の寄稿依頼は、私が都市計画、まちづくり担当課長経験ということもあっての依頼とも思い、当時の話にも想いを巡らせながら筆を進めたいと思います。

私が都市計画課長の職にあった平成10年度から平成12年度は、「まちづくり三法」制定など都市計画行政の大転換期であり、本県においても、平成10年度に都市計画課の「まちづくり推進担当」を改組し、「まちづくり推進室」を設置しました。

この年、山口市が県内のトップをきって、中心市街地活性化法(当時)に基づき基本計画を策定し、その後策定を行った市町を含めて7市1町が計画の実現に取り組んできました。

山口市の計画は、都市計画街路の整備や一の坂川の再生など社会基盤の整備に加え、大内文化の再生や「アートふるやまぐち」等市民参加によるまちづくりにも重点が置かれています。このような取組は、現在、県が進めている景観行政を先取りするなど、一定の成果をあげたものの、市街地再開発や店舗の再配置など権利関係が絡み、調整を要する事業については、結局、持ち越されることとなりました。山口市の場合も例外ではなく、まちづくり協議会を発足させ、市民参加型のまちづくりを目指したものの、計画は、商業振興的な色彩が強く、市民との協働による社会基盤の整備、特に面的整備という点では、力不足な点が多かったようです。

このため、国におかれても、このような状況を踏まえ、中心市街地活性化法ではエリアを面的に捉え、ハード、ソフト両面から均衡のとれた支援策が講じられると伺っております。

まちづくりの主体については、いうまでもなく、市町村とその地域の人々ですが、交通ネットワークの充実などにより、まちづくりが単独の市町村にとどまらなくなっている側面も見逃せません。このことは、これまでの地方分権の流れが、国から県、市町村へと加速化する中で、今回の都市計画法の改正の中に都道府県の広域調整機能が盛り込まれたことにより、一石が投じられたように感じます。

これまでも、本県においては、市町との信頼と連携のもと、まちづくりを支援してきましたが、今回の制度改正を踏まえ、地域間競争に負けない独自性を持ったまちづくりに市町とともに積極的に取り組んでいきたいと考えています。

一方、本県では、中小都市が連たんする(平成の大合併といわれる市町村合併で市町の構成が大きく変わりましたが、)都市構造の特性から、これまでも市町が行う都市計画決定に対して必要な助言を行うのみならず、広域を対象とする施設については、県が主体となって積極的に整備してきました。

昭和61年度から供用開始した周南流域下水道や平成8年度から供用開始した田布施川流域下水道、平成6年度に事業着手した宇部小野田湾岸道路など生活を支える都市施設をはじめ、柳井、萩のウエルネスパークといった生活に潤いを与える都市公園など広域利用を念頭に整備してきたところです。

今年7月に竣工し、駅前居住として人気が高い防府市の「ルルサス防府」も、鉄道を高架にし、市街地の一体化を図る目的で、県が昭和58年に事業認可を受け、着手した連続立体交差事業と連携を図りながら、市が進めた駅前土地区画整理事業が、その出発点となっています。当時、私も防府土木建築事務所で担当係長をしており、思い出深い事業の一つです。

いみじくも、広域交通の拠点に立地し、周辺の再開発とともに整備されたこの施設が象徴するように、広域連携とまちなか再生という難しい課題を克服するため、県事業の推進と市町への広域調整を車の両輪に据え、今後も、都市計画行政、まちづくりに取り組んでいきたいと思います。

【山口県土木建築部長 中村 和之】
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