【2】国土形成計画への期待■■■
〜田舎から〜

昨今、国・地方を通ずる財政の厳しさを背景に、同じ日本の中にありながら、都市と田舎の対立が殊更煽られているように感じます。景気回復のスピードに差がありすぎることなどもそのように感じてしまう要因の一つなのかもしれません。

しかし、都市と田舎は単に対立し、反目し合うだけで良いのでしょうか。人と経済が集中し、エネルギッシュなパワーで活力を生み出していく都市と、人々に安らぎと癒しの空間を提供し、また、食糧の供給、水源の涵養、国土や自然環境の保全など生命体の生存に欠かせない多面的な機能を持つ田舎とが、相互に補完することによって初めて人が安心して住める「豊かな」国土・国家が存在していけるのだと思います。

それにしても、島根県の現状を見た場合、田舎(取りわけ県土の85%を占める中山間地域)を守り、維持していくためには、どうすればいいのか……。
簡単には答えの出ない島根県政上の最重要課題の一つです。

中国五県共同の研究機関としての位置付けを持つ島根県中山間地域研究センターが平成16年度に行った調査に拠れば、本県では現在中山間地域を守り維持している人々が居住する集落のうち13.3%に当たる468集落が、高齢化率50%以上、戸数19戸以下のいわゆる限界的集落に該当するとのことです。

これらの集落では、住民、特に担い手の減少から、共同体としての集落を維持する機能が急速に失われている状況にあります。これまでいろいろな面から行われてきた公的支援を従前どおり行うことは現在の財政状況では不可能ですし、そもそも近い将来急速に住民の減る
これらの集落を全て現状のまま維持し存続させていくことは残念ながら極めて難しいのではないかと思います。

それならば、多面的機能を持つ中山間地域を存続させていくためには、どうすれば良いのでしょうか。おそらくはその地域の中心部への集団移転を伴う集落の統合・再編などという方策も、もちろん住民の方々の理解と納得とが大前提ではありますが、考えざるを得ないのではないかと思います。そして、何よりも、人々に中山間地域に住み続けていただくためには、都会の住民の方々を含めた国民の合意として、中山間地域の存在意義を認め、その上で様々な施策を展開することが必要であると思います。またそうすることが中山間地域にお住まいの方々に誇りを持ち続けていただくことにつながると思います。

このように考えるからこそ、現在策定に向けて議論が重ねられている国土形成計画には、中山間地域の存在意義と総合的な中山間地域対策の必要性とを是非明確に位置付けることが必要だと思います。いつまでも田舎が生命体を育み続ける地域であり続けることを願って
止みません。

(この文章は、筆者の個人的思いを綴ったものです。)

【島根県政策企画局 政策企画監 大國羊一】
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