【4】新法を受けての中心市街地活性化への取組み■■■
〜広島県府中市の場合〜

都市機能の拡散防止と中心市街地の再生を目指す都市計画法、中心市街地活性化法等の改正法案が今年5月に可決・成立しました。8月22日には中心市街地活性化法が施行され、9月8日には基本方針が閣議決定されました。
これらの法律が改正された背景には、中心市街地の再生を狙って平成10年から12年にかけて改正されたいわゆる「まちづくり三法」をもってしても、中心市街地の空洞化の進展に歯止めがかからなかったという深刻な現状があります。

府中市でも、中心市街地を「都市の顔」として再生することを目的に、旧法に基づく「中心市街地活性化基本計画」を平成11年に策定いたしましたが、全国の地方都市と同様に都市機能の郊外化が進み、中心市街地の魅力低下による空洞化の進展に歯止めをかけることはできませんでした。その要因は様々ですが、主な要因の一つとして、核と位置づけた複数の大型プロジェクト事業を断念せざるを得なかったことが挙げられます。

一方、府中市では効力を失いつつある都市計画を実効あるものに見直し、将来のまちづくりの方向を探るべく平成12年11月、府中市都市計画審議会に諮問をいたしました。審議会では、拡散した非効率な市街地や中心市街地の空洞化などの問題点も指摘され、一年半にわたる議論を経て受けた平成14年3月の答申では、拡大型のまちづくりから集約型のまちづくりを目指すべきであるとの方向が示されました。この中で、前述の大型プロジェクトの一つである土地区画整理事業やJR連続立体交差事業の白紙化なども打ち出されました。

この答申を府中市のまちづくり施策とするため、平成15年8月には府中市都市計画マスタープランの見直しを行い、身の丈にあった実現できるまちづくりへと転換を図りました。府中市のこうした取組みは、まちのコンパクト化と賑わい回復を図ろうとする今回のまちづくり三法の見直しと相通じるところがあると感じているところです。

話を元に戻します。先日、9月26日には中心市街地活性化基本計画認定申請マニュアルが公表されました。現在、膨大な量の情報に圧倒されながらも、基本計画の認定申請の準備を進めています。中心市街地の賑わい再生については、前述の都市計画マスタープランの見直しなどを受け、すでに平成16年度からまちづくり交付金などの支援メニューを活用して取り組んでいるところですが、最近こうした動きに呼応した民間主体のまちづくり事業が打ち出され始めています。

府中市の大変厳しい財政状況では、すべての民間事業に支援措置を講じることは困難ですが、国土交通省の「暮らし・にぎわい再生事業」や民間都市開発推進機構の支援制度など、有利な諸制度を活用できる道筋を整備しておくためにも、今年度、基本計画の認定を受けたいと考えています。

内容としては、老舗旅館「恋しき」の保存再生、大規模跡地(JT)を活用した小中一貫校づくり、産業会館(仮称)やJR府中駅周辺整備などですが、これらの事業を通じて中心市街地の活性化を進めていきたいと考えています。

基本計画策定のための庁内組織や、意見聴取のための中心市街地活性化協議会の設立についても現在準備中で、間もなく発足する予定です。
また、これに関連して、今回のまちづくり三法の改正によって、都市計画関係部局には大きな課題が突きつけられました。都市計画法の改正によって、大規模集客施設の立地は商業地域、近隣商業地域及び準工業地域において可能ですが、地方都市の準工業地域においては特別用途地区により立地を抑制することが、中心市街地活性化法に基づく基本計画の国の
認定の条件とされました。

府中市の用途地域は、その1/3を超える33.8%を準工業地域が占めており、備後圏都市計画区域の平均値である14.5%の倍以上と突出しています。
この広範な準工業地域を、特別用途地区によって大規模集客施設の立地を抑制していいものかという疑問も少なからずあります。

ものづくり産業の都市として発展してきた府中市は、用途指定の際、高度経済成長を背景に産業発展を最優先させる意図を持って、市域の平坦部の大部分を準工業地域として差し出したものと考えられます。事実、それが原動力となり、今日の府中市の産業都市としての隆盛があるわけですが、一方で急速なスプロールによって都市基盤整備が追いつかないまま市街地
が拡散し、住・工・農が混在する無秩序な市街地を生み、さらに中心市街地の空洞化を進展させた一因にもなりました。

そのため、基本計画の認定を受けるための対策として、場当たり的に特別用途地区による立地抑制をするだけでなく、準工業地域の矛盾を整理することは都市計画プロパーの業務であるという市長の方針も受け、府中市都市計画審議会に対して報告・諮問する準備を始めたところです。前回の諮問同様、長期間の議論を要する議案になるとは思いますが、都市計画
見直しの集大成と位置づけて整理を図りたいと考えています。

中国地方整備局管内で今年度の基本計画の認定を予定している自治体は数団体で、そのうち5万人未満の小都市は、府中市だけであると伺っています。大きな挑戦かもしれませんが、中国地方整備局のご指導をいただきながら一歩ずつ前に進んでいます。引き続いてのご指導をよろしくお願いいたします。

【府中市建設部まちづくり課長 田原 春二】
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