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今話題の「ふるさと納税」に迫る
〜ふるさと納税を活用した地域づくりの可能性と展望〜

 「ふるさと納税」という言葉を耳にする機会が多くなっています。「ふるさと」という言葉から、都会に暮らす人々が出身地の自治体へ納税の代わりに寄付をして、その分、税控除の適用を受けるというイメージですが、市民が主体性を発揮して地域づくりを進めるための資金となりうる、つまり「新しい公共」による地域づくりを支える一つのツールとも言えます。
今回、ふるさと納税応援サイト「ふたくす」http://f-tax.jp/の事務局を務めるNPO法人NPO支援全国地域活性化協議会ありがとうネットワークの吉戸勝理事に、「ふるさと納税」の可能性・展望等について、お話しを伺いました。
  なお、「ふるさと納税」は総称であり、各市町村で呼び方は異なりますので、ご注意ください。

「ふるさと納税」とは

Q 最近、メディアで「ふるさと納税」が取り上げられることが多いですね。しかし、まだ制度や趣旨の詳細は十分に浸透していないのではないでしょうか。

A 当方への問い合わせや、ホームページのアクセス数が増えてきています。一般的に「ふるさと」とは、「生まれ育った地域」と捉えられ、そこから、「ふるさと納税」については、地域への恩返しや地域で暮らす親への生活支援等のために納税することを指すと考えられがちです。

Q それだけではないわけですね。自分の出身地以外に「ふるさと納税」してもいい、と。

A そうです。自分を育ててくれたのは、「生まれ育った地域」のみならず、「すばらしい歴史や自然を有する地域」や「心温かいもてなしをしてくれた人たちが暮らす地域」など人それぞれの「心のふるさと」でもあります。また、将来、「この地域に住みたい」、「この地域でとれる農作物を食べていきたい」など、今後を見通した新たな形の「第二のふるさと」も考えられます。つまり、人それぞれが、「生まれ育ったふるさと」のみならず、「第二のふるさと」や「心のふるさと」を持っており、各々の思いのある地域を選んで納税することができる制度といえます。

Q いろいろな選択肢が考えられますね。

A はい、もともと「ふるさと納税」は、これまで、「とられる」イメージであった税金について、「選んで納める」という市民の自発的行為に基づいて自治体に渡していくものであり、従来の考え方を変えるものです。また、まちづくりにおいては資金の確保が重要な要素でありますが、これにより、市民が主体性を発揮してまちづくりを進められる新たな可能性が生まれました。

「ふるさと納税」を活用した新しい展開

Q 「新たな可能性」は具体的にはどのようなことが考えられますか。

A 今、住んでいる市町村に対して「ふるさと納税」することで、今まで住民税として納めていたお金を、特定の目的に使うことを前提とした寄付金とすることができます。特定のプロジェクトに対する寄付か、あるいは特定の地域・地区に対する寄付など。面白いところでは、大阪府寝屋川市において、かつての名物電車を復活させるための「びわこ号復活プロジェクト」に寄附金を募っています。静岡県掛川市では、同様に、掛川駅木造駅舎の保存事業に寄付を募っています。

※寝屋川市「びわこ号復活プロジェクト」について、詳しくは
http://www.city.neyagawa.osaka.jp/index/soshiki/brand/biwakogou.html

※掛川市「掛川駅木造駅舎保存活動」について、詳しくは
http://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/city/kihu/ekisyahozonkatudou.html

Q 平成の大合併で、生まれ育った市町村の名前が消えて、今の市町村に対してなじめないので「ふるさと納税」に踏み切れない、という人もいそうですね。

A 「合併前の○○町のために使ってください」という使途限定で「ふるさと納税」を募ることも考えられるわけです。自治会や振興区などの地域活性化に取り組む団体を支援する資金にも充てられるでしょう。その市町村の住民自らがそうした使途のための「ふるさと納税」をする仕組みができれば、地域における「志ある資金」が循環することにもなります。

Q 自治会等の資金として「ふるさと納税」を活用している市町村の事例はありますか。

A 一例として、熊本県天草市があります。天草市では、「市長おまかせ」を含む6つの事業メニューの中から選んで「ふるさと納税」が可能ですが、そのひとつ「地域コミュニティづくり」を選んだ場合、天草市内の各まちづくり協議会・振興会へ、寄付金が交付され、それぞれの地区の振興・活性化に活用されています。天草市に「ふるさと納税」した人に対して、市長から活用状況の報告書が届けられますが、その報告書には、各地区の寄附金による活動状況が示されています。

※天草市では「ふるさと応援寄附金」という名称を使っています。詳しくは、
http://www.city.amakusa.kumamoto.jp/list_html/pub/detail.asp?c_id=161&id=79&type=link

特産品プレゼントだけではない「ふるさと納税」の魅力

Q 最近は、「ふるさと納税」した人への特産品プレゼント等の特典が話題になっていますね。もちろん、アイ・キャッチの効果があったり、寄付してくださったことへの感謝の表明ということなのでしょうが。

A 特産品によって、その地域をもっと好きになってもらうとか、販売促進により地域活性化につなげる、という効果も確かにあるでしょう。しかし、お話ししたとおり、「ふるさと納税」は自由度が高く、いろいろな地域活性化戦略に活用できる制度です。「ふるさと納税」のその先にある、戦略こそを各地域が競いあい、「ふるさと納税」する人も着目するようになっていただきたいです。

Q そうですね。特典はうれしいものですが、「ふるさと納税」によって地域が元気になることを想像していただくことも必要ですね。さて、これは面白い!という特典はありますか。

A 栃木県那須塩原市では、「ふるさと納税」した方に「ふるさと市民カード」を送っています。このカードを那須塩原市内の観光施設や店舗(ふるさと市民優待店)で提示することにより、ちょっとしたサービス等、各種特典が受けられるのです。これは、那須塩原市の市民の方々が、「ふるさと納税」した方に御礼をするという点で、特徴的ですね。

※那須塩原市「ふるさと市民カード」について詳しくは、
http://www.city.nasushiobara.lg.jp/207/2208/index.html

Q 地域活性化に取り組む団体を支援するために「ふるさと納税」したいが、市町村ではなくもう少し広い範囲で「ふるさと納税」したい、という考えの人には、どのような受け皿があるでしょうか。

A 例えば、埼玉県では、NPO活動を促進する「埼玉県特定非営利活動促進基金」を設けて、寄附を募っています。具体的に支援したい団体を指定したり、分野を指定したり、あるいは団体も分野も指定せず、広くNPO活動を支援することを選んで寄附することができるものです。
※埼玉県特定非営利活動促進基金について詳しくは
http://www.saitamaken-npo.net/html/kikin/

Q 「ふるさと納税」が、NPOや各種団体、人材を支える地域活性化のツールとして活用されていくことが期待されますね。「ふるさと納税」全般について、今後の展望、あるいは課題はありますか。

A 個人の「志ある資金」の受け皿として、「ふるさと納税」以外にも、義捐金や市民ファンド等が考えられます。それらが分散・小口化しているために大きな事業ができない、成果が伸び悩むといった様子もみられますので、もう少し調整して大口化することができないかな、と思います。そのコーディネートは、行政が適役かもしれません。また、「志ある資金」を地域に交付して活用していただくには、住民団体等のお金の使い方に関して不安を感じている自治体もあるかもしれませんから、行政と住民団体等との相互の信頼関係構築が必要と思います。

Q 「ふるさと納税」は個人の寄附税制ですね。そこに、企業が関わることはできますか。

A 社員が「ふるさと納税」を行うことを支援するために、「ふるさと納税」を行う社員を対象とした手当を設ける、などの方法があります。

「ふるさと納税」に関するご相談

Q 最後にお尋ねします。「ふるさと納税」については、各市町村等、自治体の方々も、より効果的な運用についてお悩みかと思います。「ふたくす」さんでは、そうした自治体からの相談にも乗っていただけますか。

A 「ふるさと納税」を募るには、ただ「寄附してください」とお願いするだけではなく、先ほどお話しした事例のように、「この事業のために力を貸してください」とアピールすることが効果的だと思います。そうした事業の提案や、個別の支援をさせていただきますので、気軽にご相談いただければと思います。
連絡先は、下記URLをご覧ください。
http://f-tax.jp/member/view/1

ふたくす事務局 
NPO法人NPO支援全国地域活性化協議会ありがとうネットワーク 
吉戸勝 理事 

(平成25年2月27日 中国地方整備局取材)
(写真提供:NPO法人NPO支援全国地域活性化協議会ありがとうネットワーク)

 


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国土交通省中国地方整備局 建政部 計画・建設産業課