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 NPO法人田舎暮らしの応援団の皆様は、日本で一番人口の少ない鳥取県に「あつまる つながる ひろがる」を合い言葉にたくさんのコミュニティを作り、誰もが安心して暮らせる地域を創造するために、鳥取県倉吉市で地域を応援する活動をおこなっている団体です。
(以上、同NPO法人ホームページより)
 このたび、同NPO法人の理事であり応援団長の福井恒美様を訪問し、数々の地域を応援する活動について、お話を伺いましたので、ご紹介します。

【NPO法人設立のきっかけ】

 2006年に東京から地元の倉吉市にUターンしてきました。妻はIターンでした。Uターンは気楽ですが、Iターンは覚悟が必要と感じていました。不安や悩みを抱え困っている移住者の為に何か出来ることがあるだろうと思い、鳥取県内を回り移住者を取材して個人のブログ「田舎暮らしの応援団」で紹介する活動を任意団体でスタートしました。1年後、住民から認知され、行政からの支援を受けやすいということもあり、地域にたくさんのコミュニティをつくり地域を元気することを目的として、NPO法人を設立しました。

【コミュニケーションプロジェクト IJU cafe(移住カフェ)】

 移住者は不安や悩みを抱えています。悩みを抱えていてはしんどいし続きません。どうしようか?ということで、移住してきた人たちがcafeのように気軽に話しができて繋がれる場所をつくろうをコンセプトに「IJUcafe」が誕生しました。ロゴは鳥取にUターンしたデザイナーに作成してもらいました。
ロゴ
 これまで、泊まり込みでやったり大山などの山奥でやったり、陶芸等の伝統工芸を体験したりと「共有」を目的にいろいろなことをしました。
 1年くらいは移住仲間でやっていましたが、地域とも向き合ってコミュニケーションをとる必要があると感じ、「ここが変だよ鳥取県、ここがイインダヨ鳥取県」をテーマにみんなで話し合うトークショーのようなこともしました。 「IJUcafe」のテーマはさまざまで誰がということもなく誰かが提案してやっています。だんだんネタもなくなりましたが、それでも誰かが自発的に発案し続いています。月1〜2回のペースでしていますが、不安や悩みの解決のきっかけの場、いろいろな移住者が出会いそしてつながる場になっています。
IJU cafe の一場面※
 「IJUcafe」のメンバーは現在100人くらいおり、メインスタッフとして私たち夫婦の他に3人いますが、3人のスタッフそれぞれが独自に鳥取市内、県中部、米子市にコミュニティの場をつくっています。私が思っていた「鳥取県にコミュニティをたくさんつくろう」が、知らない間にメンバーがつくって広がっていることはうれしいし、そういう意味では「鳥取県は人のつながりやすさ日本一」だと思います。
東京でもIJU cafe がスタート※
 また、昨年10月には東京にも「IJUcafe」ができました。東京から若い人たちが体験ツアーで倉吉にきた際に、「IJUcafe」に興味を持ち、東京で「移住」をテーマに人を集めてやっています。 今年は、鳥取中部ふるさと広域連合から、 「IJUcafe」をやってほしいとの話しがあり、予算をもらって1市4町でしました。初めて行政と一緒に取り組みました。

【新しい地域の交流拠点 古民家「大鳥屋」】

 3年間空き家になっていた、築120年の古民家をNPO法人ではなく個人で借りています。「大鳥屋」という名称は、元々ここは布団屋で屋号が大鳥屋だったので、鳥取県にある大きな鳥のような屋根を持った基地にしようという思いから、そのまま屋号を使用しています。
 今年の5月から借りていますが、せっかく古い建物なので「歴史・文化・伝統を大切にしてそれに触れてもらいながら新しいコミュニティを地域の人と移住者とでつくっていこう」をコンセプトにこだわりを持って企画・運営をしています。
古民家「大鳥屋」
倉吉市長を招いてのワークショップ※
 11月には、大鳥屋に石田倉吉市長を招いて、「ここが変だよ倉吉 ここがイインダヨ倉吉」をテーマに、地域の人・地域外の人・移住者に分かれてワークショップをしました。好きなことを付箋に書きましたがたくさんの意見が出ました。市長も初めての経験で大変喜んでいました。この企画は倉吉市の移住定住担当職員を通して市長にお願いをしたところ、是非やろうということで実現した企画でした。倉吉は県内で高齢化が一番進んでいますが、高齢者の人たちが集まりやすい環境づくりをして、そこに視点の違う移住者が入ることにより、今までの公民館活動に無い刺激が加わっていると思います。

【リヤカー市でコミュニティづくり】

 私の仕事は農業と家業の花屋を半々でしていますが、1年半くらい前から毎週日曜日の午前中、自分がつくった野菜と中山間地域のおじいさんやおばあさんが作った野菜をリヤカーに乗せて、白壁地区からここ明倫地区あたりまで売って歩いています。このあたりのまちなかは限界集落になっており、中山間地域だけでなくまちなかでも深刻な状況が見られます。高齢者ばかりで買い物にも困る状況なので、とても喜ばれています。100mに1回程度停まっていますが、するとおばあさんたちが出てきて、それをきっかけに井戸端会議が始まり、小さなコミュニティが生まれています。野菜を売りながら、コミュティづくりにもつながっています。悩みは後継者がいないこと(笑)。
リヤカーを引いて歩く福井さん※

【今後の活動展開】

IJU大学の開校
 移住者のための大学ではなくIJUはロゴとして使用していますが、「I」インターナショナル「J」ジャパン「U」ユニバーシティと読ませ、日本の文化、伝統を発信して海外の人にも理解してもらう過程で、私たち日本人ももっと日本を大事にしよう、という意味も込められています。IJU大学は、生涯学習の場、地域大学の位置づけで、市民だれでも参加でき、地域を愛している、日本を愛していることが入学資格です。鳥取県全土がキャンパスであり、どんなことでも授業になり、誰もが先生であり生徒です。研究室のようなものもつくりたいと思っています。いろいろなスキルを持った人たちがマッチングしたら一つの商品ができるケースもあるので、デザイン・開発・プロモーション等それぞれの得意分野を結集し独自化できれば起業にもつながると思います。こういった専門性も持たせたいと思っています。また、城下町倉吉の伝統文化、日本の物、地場産業を海外の人に発信することで呼び込むことが出来るのではと考えています。
 志は一つになっていますが、資金面に問題があります。お金がないからしないというわけにはいきませんので出来る範囲でやっていきます。
空き家問題への取組
 ここ明倫地区には3,000人くらい住んでいますが、空き家が80軒程度あります。移住者とのマッチングと空き家をどう活用するかプロデュースしたいと思っています。最近、メールや直接来られて住居の話しをよく聞くようになりました。しかし、私たちは業をしていませんので、市に連絡して直接は地区の支援員に対応してもらっています。「IJUcafe」の流れから、私たちのほうがニーズを把握しているし近いところにいると思いますが、現在はどういった方法が良いのか考えているところです。
大鳥屋の縁側で
NPO法人田舎暮らしの応援団 福井理事
平成25年12月17日 中国地方整備局取材
※の写真提供 NPO法人田舎暮らしの応援団


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国土交通省中国地方整備局 建政部 計画・建設産業課