1.洪水調節実績
  ・ 土師ダムでは昭和49年〜平成15年までに60回の洪水調節を行った。
  ・ 平成11年6月の梅雨前線による洪水は、ダムの運用開始後最大の洪水であった。
  ・ ダムの調節効果により、ダム下流から三次地点(三川合流)において1.0〜2.0m程度の水位低減効果があったと想定され、家屋への浸水被害を軽減したと考えられる。
2.利水補給実績
  ・ 土師ダムの利水補給は、不特定用水・かんがい用水は江の川本川(ダム下流)へ、都市用水・発電用水は貯水池から直接取水により太田川へ分水している。
  ・ 土師ダムの年間総利水補給量は300,000千m3〜500,000千m3であり、このうち発電用水は年間200,000〜300,000千m3、都市用水は年間100,000千m3程度補給している。
  ・ 渇水であった平成6年〜7年において、土師ダムから太田川への補給は、592日、311,530千m3、平成14年においては、土師ダムから太田川への補給は310日、194,900千m3であり、渇水被害を軽減したと考えられる。
3.堆砂
  ・ 平成15年度における総堆砂量は、1,546千m3となっており、これは計画堆砂容量6,200千m3の25%に相当し、平成15年時点の想定堆砂量に対する割合は83%と計画を下回っている。
4.水質
  ・ 土師ダムの水質は,生活環境基準項目は、貯水池内のT-Nが環境基準暫定値を上回っているが、他は環境基準値(または暫定値)を概ね満たしていた。健康項目は環境基準値を満たしていた。
  ・ 水質障害は、貯水池内でアオコ(昭和63年以降に発生が確認、平成12年に顕著な発生)、ダム下流で泡の流下(平成12年)、太田川で異臭味(平成14年)がみられた。
  ・ 水質保全施設については,水質保全施設が完備した平成13年以降はアオコ等の水質障害の大きな発生は見られず、施設による効果といえる。
  ・ 水質調査の今後の方針については,環境基準(生活環境項目)は貯水池の水質管理上基本的な項目であるため、今までの頻度で調査を行う。環境基準(健康項目)は環境基準値を満たしているが、基本的な項目であるため、今までの頻度で調査を行う。
  ・ 曝気循環装置の今後の方針については、今後も運用を行いながら効果を把握し、より適切な運用方法の検討を進めていく。
5.生物
  ・ 土師ダムでは建設後30年経過しており、ダム湖とその周辺の環境は安定している状態であるといえる。
  ・ ダム湖内では、湛水域に適した種群が生息しており問題はないが、調査においては外来魚が確認されているため、その消長に注目してゆくものとする。
  ・ 流入河川では、現時点で大きな問題は認められない。
  ・ 下流河川では、現時点で大きな問題は認められない。なお、調査においてはダム下流の良好な環境保全を図るため、回遊性魚類や清流に生息する魚類に注目してゆくものとする。
  ・ 生態湿地公園では、良好な環境が創出されており、現時点で大きな問題は認められない。
  ・ ダム湖周辺では、現時点で大きな問題は認められない。
  ・ 魚類、底生動物、動植物プランクトンを除くと、2回の調査結果しかないので確かなことはいえない。今後も、河川水辺の国勢調査を実施し、その変化に注目してゆく。
6.水源地域動態
  ・ 土師ダムの利用者はリピーターが非常に多く、広島県観光課の調べによると年間では40万人〜50万人の利用者が訪れている。
  ・ 利用者アンケートによると、近年はスポーツの利用から自然探勝などの土師ダム周辺環境が主目的へと変化しており、土師ダム周辺の自然環境を楽しむ項目に利用者が多い。
  ・ スポーツ利用の中では、アドベンチャースポーツであるカヌーの利用が盛んであり、近年は新しいスポーツとしてBMXが湖畔の施設において行われている。
  ・ 土師ダムでは八千代湖交流ボート大会、土師ダム湖畔マラソン等のスポーツイベントが実施されている一方、自然生態湿地を利用した自然観察会などの環境教育の場としても利用されている。
  ・ 今後は利用者のニーズの変化に対応するための検討が必要であると考えられる。
7.総合
  ・ ダム運用開始以降、下流河川の平均河床高に大きな変化は見られない。
  ・ ダム運用開始以降、江の川下流域の人口は横這いから微増傾向にあり、利水供給先では、人口は増加傾向、工業出荷額は、平成元年頃まで増加し、それ以降は広島県工業製品出荷額同様に減少傾向にある。
  ・ 土師ダムから三川合流(馬洗川合流)までの江の川の水質(BOD, T-P)にダムによる影響は見受けられない。
  ・ また、発電はクリーンなエネルギーとして環境負荷の軽減に貢献している。
8.今後の方針
  ・ 今後とも適切なダム管理を実施し、洪水調節、利水補給の役割を果たしていくとともに、蓄積されたデータを活用し、フォローアップ調査の効率化を図っていくこととする。