国土交通省では、平成11年6月の土砂災害を契機に、平成13年度から広島西部山系直轄砂防事業に着手し、砂防堰堤の整備を進めています。また、平成26年8月豪雨災害や平成30年7月豪雨災害に対し、関係機関と連携・調整して緊急事業による土砂災害対策を行っています。
広島市中区八丁堀3-20
(太田川河川事務所と同じ建物)
TEL (082)212-1010
廿日市市下平良1丁目1-5
TEL (0829)34-4310
広島市安佐南区八木5丁目31-1
TEL (082)830-2367
平成26年8月20日の広島土砂災害では、広島西部山系区域の広島市安佐南区、安佐北区、西区を中心に大規模な土砂災害が発生しました。また平成30年7月豪雨災害では、広島県全域にわたって大規模な土石流や土砂洪水氾濫が発生し、甚大な被害をもたらしました。被害は、特に都市近郊の住宅地に集中し、都市型の土砂災害と位置づけられます。広島西部山系およびその周辺は、過去から多数の土砂災害が繰り返されており、人的被害や家屋被害など様々な被害を受けています。
主な過去の土砂災害
大野陸軍病院の患者用車が流され、
国鉄山陽線軌道が土砂で埋没(大野町)
土石流で被災した集落
(大竹市玖波町)
土石流による被災状況
(広島市安佐南区)
大聖院横を流れる白糸川の被災状況
(廿日市市宮島町)
土石流による被災状況
(広島市安佐南区八木)
土石流による被災状況
(呉市天応)
広島西部山系の主な地質は、花こう岩です。
花こう岩は、風雨等で風化して「マサ土」と呼ばれる砂質土に変化します。マサ土は、粘り気がないため浸食に対して脆弱で、大雨が降れば山腹崩壊や土石流など土砂災害を起こしやすい土壌です。
広島西部山系には、山裾まで宅地開発が進展し、山腹や谷の中に宅地が立ち並んでいるところが多くあります。山の斜面が崩れたり、土石流となって流下する氾濫の範囲と人々の生活の場が近接したことで、土砂災害につながりやすくなっています。土砂災害危険箇所数が大幅に増加した一方で、砂防堰堤の設置適地は住宅地になっていることが多く、対策が難しくなっています。
八木地区では、山裾まで宅地開発が進み(黄色線)、土石流の氾濫範囲(橙線)に多くの住宅ができました。
8.20広島土砂災害では、発生した土石流により、宅地化が進んだ地区に大量の土砂が流れ込み、大きな被害が発生しました。
平成11年6月29日の梅雨前線豪雨災害にて、死者24人、負傷者14人となる甚大な土砂災害が発生したことを受けて、太田川河川事務所では、平成13年より広島西部山系において直轄砂防事業に着手しました。
この広島西部山系では、広島市・廿日市市・大竹市の3市にまたがる区域(各市の一部区域を除く)にて直轄砂防事業を実施しています。この区域は山裾まで宅地化されたことにより人口や資産が集中していたり、
山陽自動車道や山陽新幹線など重要な交通網が横断しています。
広島西部山系砂防事務所では、太田川河川事務所より広島西部山系における直轄砂防事業を引き継ぎ、広島県の砂防事業と連携して土砂災害対策を推進しています。
土石流危険渓流とは、土石流が発生する危険性があり人家等に被害を及ぼす恐れのある渓流のことをいいます。平成14年度の調査結果によれば、広島県は土石流危険渓流が全国で最も多い県です。
広島西部山系直轄砂防事業区域内には、土石流危険渓流が約1,700存在します。この数は県内の約17%に相当し、同区域の面積が県全体の約7%であることから、区域内に危険渓流箇所が集中していることがわかります。
また、広島市は、全国の政令指定都市の中で、土石流危険渓流数が最も多くなっています。
広島西部山系は、近畿と九州を結ぶJR山陽新幹線、JR山陽本線、国道2号、山陽自動車道・広島岩国線、中国自動車道などの重要な交通網が横断しています。
これらの重要交通網が土石流より寸断されれば、直接的な被害だけでなく、地域全体の災害復旧の遅れにつながったり、社会的な影響が広域的に及びため、重要交通網を保全する必要があります。
平成26年7月に完成した安佐南区大町地区の大町7号砂防堰堤では、平成26年8月20日の大雨により発生した土石流を捕捉(約870㎥)し、下流への住宅地(32戸)への被害を防止しました。1ヶ月でも早く砂防堰堤を完成させることは、保全対象を守る上で、重要なことです。