広島西部山系とは、広島市(東区、西区の一部、安佐南区、安佐北区の一部、佐伯区の一部)、廿日市市の一部、大竹市の一部の3市にまたがる地域のことをいいます。この地域は、マサ土と呼ばれる砂質土におおわれていることなどの特徴を持っており、昔から土砂災害が多い地域となっています。
広島西部山系の位置
これまで、広島県により砂防(さぼう)事業が進められてきましたが、平成11年6月29日に発生した大きな土砂災害(6.29災害)をきっかけに、平成13年度から国による砂防事業が始まりました。現在、砂防堰堤(さぼうえんてい)などを整備するハード対策、土砂災害に関するさまざまな情報を提供するなどのソフト対策を進めています。
この広島山系植生図鑑は、太田川河川事務所が平成18年度~平成19年度にかけて、広島西部山系内の植生について調査した結果をまとめたものです。 ここで紹介している植生の解説は、その調査結果に基づいたものです。また、紹介する樹木は、文献資料や現地調査で確認した広島西部山系に自生する約300種類の樹木の中から、「親しみのあるものを、まずは見て、知っていただきたい」という趣旨で、アカマツ、コナラなどの植生を代表する樹木や、確認した回数の多かった樹木を161種選んでいます。 なお、本図鑑を作成するにあたり、広島大学名誉教授 関太郎先生には有用なアドバイスをいただきました。また、樹木や植生の写真撮影では、冨沢由美子さん、大本智恵さん、吉原礼子さん、山下容富子さんにご協力をいただきました。ここに深く感謝いたします。
「広島西部山系植生図鑑」における写真、イラスト、文章などは著作権の対象になっています。私的使用のための複製や引用など、著作権法上認められた場合を除き、無断で転用・引用することはできません。引用を行う際は、適宜の方法により、必ず出典を明示して下さい。
校区流域とは、広い広島西部山系における山や植生について、より身近に感じてもらいたいことから考案した地域の区分です。区分の方法は、次の通りです。
ただし、明確に線引きできない箇所もあるため、次の優先順位、視点で線引きを行いました。
人が自然に大きな影響を与える前に成立していた林と、生えている植物の種類がほぼ同じと考えられる林です。広島西部山系では、鎮守の森として見られるシイ林やカシ林、高い山の上にあるイヌブナ林などが自然林にあたります。
伐採,山火事,がけ崩れなどの人為または自然の干渉を受けて、自然林が壊されたあとに、植物が生えてできた林です。ただし、人が植物を植えたり、種(たね)をまいたりしてできた場合は二次林とは呼びません。この植生図鑑では、広島西部山系の森林を、見た目や植物の種類からわかりやすく理解していただくために、二次林という用語をコナラやアカマツ、シイ・カシ類などが優占する高木林に限定して用いました。本来は二次林に位置づけられる、アカメガシワやタラノキなどの先駆性の植物が優占する低木林は、生えている場所の様子から、「明るい場所の低木林」として区別しました。
人の手によって植えられたり、種(たね)がまかれたりしてできた林のことです。広島西部山系ではスギやヒノキの植林などが人工林にあたります。
まきや炭として用いるために、周期的に伐採される林のことを言います。コナラやクヌギが、薪炭林(しんたんりん)に生える代表的な樹木です。これらの樹木は、伐採されても切り株から新芽が出てきて、しばらくすると大きく育ちます。そして、10~20年くらいたてば、もう一度切ってまきや炭に利用できるようになります。このように、何度も繰り返して利用できることが薪炭林の大きな特徴です。
大きく生長した木の、上の方にある枝や葉の集まりのことで、樹木の頭の部分という意味です。
森林の中で、一番高いところで茂っている樹木の葉や枝の集まりのこと。林を外から見たり、高いところから見たりした時に見える、森林の姿のことです。
場所や環境を言いあらわす言葉で、文字どおり林の縁(ふち)のこと。森林と道や住宅地などとの境界部分のことです。林の中から外へと環境が大きく変わる場所であり、光がよく当たるので、いろんな植物が生育しています。場所によっては、やぶのようになっているところも見られます。
葉のつくりに関する用語です。葉のふちにあるギザギザのことをいいます。
葉の形に関する用語です。何枚かの小さな葉(小葉(しょうよう))が組になって1枚の葉をつくっているものを複葉(ふくよう)、その複葉の形が鳥の羽のような形をしているものを羽状複葉といいます。バラやフジの葉がそうです。慣れないうちは、どれが1枚の葉かがわかりにくいのですが、ポイントは、冬芽の位置です。葉が枝につく、場所には冬芽がつきます。しあし、小葉のつけ根には、冬芽はつきません。
葉のつくりに関する用語です。葉の一部にあって、蜜(みつ)を出すところのことをいいます。この蜜(みつ)でアリを誘ったりします。
蜜(みつ)を分泌する毛のこと。
葉のつくりに関する用語です。葉のつけ根や葉柄についている、葉のようなもののことをいいます。
花に関する用語です。花のついた枝や、花のつき方のこと。
花に関する用語です。花が集まって穂のようになったもの。花粉をとばす雄花穂(ゆうかすい)と花粉をキャッチする雌花穂(しかすい)があります。
冬芽の周りをおおっている皮のようなもの。鱗(うろこ)状に何枚も重なっているものが多く見られます。
花の構造の違いによる植物の区分のひとつです。雌しべをもつ花(雌花:めばな)と、雄しべをもつ花(雄花:おばな)とが分かれていて、一つの株に雄花も雌花もつける植物のことをさします。
雌雄同株に対応する、植物の区分のひとつです。雄の木と雌の木が別々の樹木をさします。雄の木から花粉が届く範囲に雌の木のがないと、実はできません。果実は雌の木のみにつきます。
茎から出る根のこと。ツタなどのつる植物のよじのぼりを支えるもの(付着根:ふちゃくこん)や、樹木の体を支えるためのもの(支柱根:しちゅうこん)などがあります。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)によると、「矮松ノ集合慢生スル土地ヲ云(い)フ」とされています。自然に生えた松が、土地の条件が悪いことなどから、大きく生長せずに群生している場所であったと考えられます。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)によると、「矮小(わいしょう)ナル雑樹ノ集合漫生(まんせい)スル土地ヲ云(い)フ」とされています。大人の背丈ほどの低木が生い茂った、まきなどを集める「柴地(しばち)」と呼ばれる場所であったと考えられます。昔話でよく出てくる「おじいさんは山にシバ刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました」という一節にある、シバを刈りに行く山のことです。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)によると、「雑草漫生(まんせい)シテ荒蕪(こうぶ)ヲ爲(な)スノ土地ヲ云(い)フ」とされています。ススキ草原で代表される茅場(かやば)のような場所であったと考えられます。昔の家の屋根、「わらぶき屋根」をふくための材料などに使われていました。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)を読み解くと、人の利用の度合いが高い、コナラやクヌギ林であったと考えられます。樹木を伐採し、炭やまきなどの燃料として使っていました。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)を読み解くと、針葉樹と広葉樹の混生した樹林であったと考えられます。おそらく、針葉樹のアカマツと落葉樹のコナラなど、または針葉樹のモミや常緑樹のシイやカシなどが混じり合う森林だったと考えられます。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)には、凡例記号の書き方のみ解説されています。これ以前の地形図(仮製図式)では、「松林(大・小)」、「杉林」、「檜(ヒノキ)林」に区分されていますが、明治33年図式では、これらは「針葉樹林」と「矮松地」にまとめられています。「矮松地」には「松林(小)」が相当すると考えられ、残りの「松林(大)」、「杉林」、「檜林」が「針葉樹林」に相当すると考えられます。ただし、後の時代(昭和22~23年)に米軍が撮影した空中写真を判読したところ、広島西部山系では、スギやヒノキの植林の場所は少なく、大部分がアカマツ林でした。したがって、この図鑑では、明治時代の地形図で示された「針葉樹林」については、ほとんどがアカマツ林であったと考えて解説しています。
広島県は全国的に見ても林野火災の発生件数が多く、平成元年~14年の発生件数は全国でも第1~6位の間を推移しています(広島県のホームページより)。近年では、廿日市市の経小屋山周辺で、1999年5月2日~4日に大規模な火災が発生しています。この火災は2日間にわたって燃え続け、南側斜面の中腹の約百数十ヘクタールが焼けました。
地中深くで生まれた岩石です。石材として利用される御影(みかげ)石としても知られています。地表にあらわれた部分は、風雨などにさらされると風化しやすく、一般にマサ土(真砂土)と呼ばれる砂のようになります。そのため、大雨が降って水を含むと崩れやすく、土砂災害が起こる原因の一つとなります。
泥や砂などが湖、川、海などにたい積してできた岩石です。花こう岩に比べて硬く、風化に対する抵抗性が強い傾向にあります。
5月ごろ、渓流沿いや山の中を歩いていて、木イチゴの赤い果実がたくさんなっているのに出会ったら、周りの様子を見て下さい。そこは明るくて、背丈の低い木がしげっている明るい場所の低木林であることが多いはずです 。
木イチゴの仲間は、明るい裸地で芽生えて、いち早く育つ樹木です。木イチゴの仲間がたくさん生えていたら、そこは、伐採された直後か、土砂災害などで裸地になってから、まだあまり時間の経過していない場所ということがわかります。
渓流沿いや山の中を歩いていると、トゲのある樹木やツル植物に服や体が引っかかったりした経験はありませんか? 周りを見ると、そこは明るくて、背丈の低い木がしげっている明るい場所の低木林であることが多いはずです 。
ここで紹介したトゲのある樹木・ツル植物は、明るい場所でいち早く芽生えて、背丈の低い林をつくります。暗い森の中では芽生えることはできず、見かけることもほとんどありません。したがって、 これらの樹木・ツル植物がたくさん見られる場所は、過去に、森が伐採されたことがあるか、土砂災害などで裸地になった経歴を持つことがわかります。それにしても、トゲがあるのはなぜなのでしょうか?背が低く、手が届くような高さに葉をつけているので、ノウサギやシカなどに食べられないように身を守るためなのかもしれません。
秋に山を歩いていると、地面にドングリが落ちていることがあります。どれも同じように見えるドングリも、ちょっとした観察で、種類はもちろんのこと、落ちている場所の様子や、将来の林の様子まで見えてきます。まずは、ドングリにくっついている「帽子」の形に注目してください!
「帽子」に横しま模様があるドングリは、「カシ」の仲間です。
これらはすべて常緑樹ですので、たくさん見つかったら、そこはきっと「常緑樹林」です。鎮守の森や神社の裏山だとしたら、その林は、人が森を切り開くよりももっと昔の林の姿を伝えています。鎮守の森にしか暮らせない樹木や昆虫に、出会えるかもしれません。もしも、冬に葉を落とす高木も目立つようなら、「アカマツ林」や「落葉樹林」から、今まさに「常緑樹林」へと変わり始めている林です。広島西部山系では、「アラカシ」、「シラカシ」、「ツクバネガシ」、「アカガシ」、「ウラジロガシ」が見られます。
ドングリの「帽子」がトゲトゲしていたら、それは「クヌギ」か「アベマキ」です。
これらはすべて落葉樹です。たくさん見つかったらその場所は「落葉樹林」、 コナラ林であること間違いなしです。1970年代ごろまでは、まきや炭、建築用の材木などを切り出すために、みんながいつも訪れていた林です。 今のように、伐採されることなく時が過ぎると、数十年後には「常緑樹林」に変わってしまいます。
ドングリの「帽子」がウロコ模様なら、そのドングリは落葉樹の「コナラ」か、常緑樹の「シリブカガシ」です。
広島市東区の二葉山なら、鎮守の森の「常緑樹林」です。二葉山以外なら、その林はおそらく、1970年代頃まで、まきや炭や建築用の材木などを切り出すために、みんながいつも訪れていた林です。
解説
広島西部山系植生図鑑の全般に関すること
広島西部山系とは、広島市(東区、西区の一部、安佐南区、安佐北区の一部、佐伯区の一部)、廿日市市の一部、大竹市の一部の3市にまたがる地域のことをいいます。この地域は、マサ土と呼ばれる砂質土におおわれていることなどの特徴を持っており、昔から土砂災害が多い地域となっています。
これまで、広島県により砂防(さぼう)事業が進められてきましたが、平成11年6月29日に発生した大きな土砂災害(6.29災害)をきっかけに、平成13年度から国による砂防事業が始まりました。現在、砂防堰堤(さぼうえんてい)などを整備するハード対策、土砂災害に関するさまざまな情報を提供するなどのソフト対策を進めています。
この広島山系植生図鑑は、太田川河川事務所が平成18年度~平成19年度にかけて、広島西部山系内の植生について調査した結果をまとめたものです。
ここで紹介している植生の解説は、その調査結果に基づいたものです。また、紹介する樹木は、文献資料や現地調査で確認した広島西部山系に自生する約300種類の樹木の中から、「親しみのあるものを、まずは見て、知っていただきたい」という趣旨で、アカマツ、コナラなどの植生を代表する樹木や、確認した回数の多かった樹木を161種選んでいます。
なお、本図鑑を作成するにあたり、広島大学名誉教授 関太郎先生には有用なアドバイスをいただきました。また、樹木や植生の写真撮影では、冨沢由美子さん、大本智恵さん、吉原礼子さん、山下容富子さんにご協力をいただきました。ここに深く感謝いたします。
「広島西部山系植生図鑑」における写真、イラスト、文章などは著作権の対象になっています。私的使用のための複製や引用など、著作権法上認められた場合を除き、無断で転用・引用することはできません。引用を行う際は、適宜の方法により、必ず出典を明示して下さい。
校区流域とは、広い広島西部山系における山や植生について、より身近に感じてもらいたいことから考案した地域の区分です。
区分の方法は、次の通りです。
ただし、明確に線引きできない箇所もあるため、次の優先順位、視点で線引きを行いました。
人が自然に大きな影響を与える前に成立していた林と、生えている植物の種類がほぼ同じと考えられる林です。広島西部山系では、鎮守の森として見られるシイ林やカシ林、高い山の上にあるイヌブナ林などが自然林にあたります。
伐採,山火事,がけ崩れなどの人為または自然の干渉を受けて、自然林が壊されたあとに、植物が生えてできた林です。ただし、人が植物を植えたり、種(たね)をまいたりしてできた場合は二次林とは呼びません。
この植生図鑑では、広島西部山系の森林を、見た目や植物の種類からわかりやすく理解していただくために、二次林という用語をコナラやアカマツ、シイ・カシ類などが優占する高木林に限定して用いました。本来は二次林に位置づけられる、アカメガシワやタラノキなどの先駆性の植物が優占する低木林は、生えている場所の様子から、「明るい場所の低木林」として区別しました。
人の手によって植えられたり、種(たね)がまかれたりしてできた林のことです。広島西部山系ではスギやヒノキの植林などが人工林にあたります。
まきや炭として用いるために、周期的に伐採される林のことを言います。コナラやクヌギが、薪炭林(しんたんりん)に生える代表的な樹木です。これらの樹木は、伐採されても切り株から新芽が出てきて、しばらくすると大きく育ちます。そして、10~20年くらいたてば、もう一度切ってまきや炭に利用できるようになります。このように、何度も繰り返して利用できることが薪炭林の大きな特徴です。
大きく生長した木の、上の方にある枝や葉の集まりのことで、樹木の頭の部分という意味です。
森林の中で、一番高いところで茂っている樹木の葉や枝の集まりのこと。林を外から見たり、高いところから見たりした時に見える、森林の姿のことです。
場所や環境を言いあらわす言葉で、文字どおり林の縁(ふち)のこと。森林と道や住宅地などとの境界部分のことです。林の中から外へと環境が大きく変わる場所であり、光がよく当たるので、いろんな植物が生育しています。場所によっては、やぶのようになっているところも見られます。
葉のつくりに関する用語です。葉のふちにあるギザギザのことをいいます。
葉の形に関する用語です。何枚かの小さな葉(小葉(しょうよう))が組になって1枚の葉をつくっているものを複葉(ふくよう)、その複葉の形が鳥の羽のような形をしているものを羽状複葉といいます。バラやフジの葉がそうです。慣れないうちは、どれが1枚の葉かがわかりにくいのですが、ポイントは、冬芽の位置です。葉が枝につく、場所には冬芽がつきます。しあし、小葉のつけ根には、冬芽はつきません。
葉のつくりに関する用語です。葉の一部にあって、蜜(みつ)を出すところのことをいいます。この蜜(みつ)でアリを誘ったりします。
蜜(みつ)を分泌する毛のこと。
葉のつくりに関する用語です。葉のつけ根や葉柄についている、葉のようなもののことをいいます。
花に関する用語です。花のついた枝や、花のつき方のこと。
花に関する用語です。花が集まって穂のようになったもの。花粉をとばす雄花穂(ゆうかすい)と花粉をキャッチする雌花穂(しかすい)があります。
冬芽の周りをおおっている皮のようなもの。鱗(うろこ)状に何枚も重なっているものが多く見られます。
花の構造の違いによる植物の区分のひとつです。雌しべをもつ花(雌花:めばな)と、雄しべをもつ花(雄花:おばな)とが分かれていて、一つの株に雄花も雌花もつける植物のことをさします。
雌雄同株に対応する、植物の区分のひとつです。雄の木と雌の木が別々の樹木をさします。雄の木から花粉が届く範囲に雌の木のがないと、実はできません。果実は雌の木のみにつきます。
茎から出る根のこと。ツタなどのつる植物のよじのぼりを支えるもの(付着根:ふちゃくこん)や、樹木の体を支えるためのもの(支柱根:しちゅうこん)などがあります。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)によると、「矮松ノ集合慢生スル土地ヲ云(い)フ」とされています。自然に生えた松が、土地の条件が悪いことなどから、大きく生長せずに群生している場所であったと考えられます。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)によると、「矮小(わいしょう)ナル雑樹ノ集合漫生(まんせい)スル土地ヲ云(い)フ」とされています。大人の背丈ほどの低木が生い茂った、まきなどを集める「柴地(しばち)」と呼ばれる場所であったと考えられます。
昔話でよく出てくる「おじいさんは山にシバ刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました」という一節にある、シバを刈りに行く山のことです。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)によると、「雑草漫生(まんせい)シテ荒蕪(こうぶ)ヲ爲(な)スノ土地ヲ云(い)フ」とされています。ススキ草原で代表される茅場(かやば)のような場所であったと考えられます。
昔の家の屋根、「わらぶき屋根」をふくための材料などに使われていました。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)を読み解くと、人の利用の度合いが高い、コナラやクヌギ林であったと考えられます。樹木を伐採し、炭やまきなどの燃料として使っていました。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)を読み解くと、針葉樹と広葉樹の混生した樹林であったと考えられます。おそらく、針葉樹のアカマツと落葉樹のコナラなど、または針葉樹のモミや常緑樹のシイやカシなどが混じり合う森林だったと考えられます。
「地形測図法式(明治33年図式)」(陸地測量部,1900)には、凡例記号の書き方のみ解説されています。これ以前の地形図(仮製図式)では、「松林(大・小)」、「杉林」、「檜(ヒノキ)林」に区分されていますが、明治33年図式では、これらは「針葉樹林」と「矮松地」にまとめられています。「矮松地」には「松林(小)」が相当すると考えられ、残りの「松林(大)」、「杉林」、「檜林」が「針葉樹林」に相当すると考えられます。
ただし、後の時代(昭和22~23年)に米軍が撮影した空中写真を判読したところ、広島西部山系では、スギやヒノキの植林の場所は少なく、大部分がアカマツ林でした。したがって、この図鑑では、明治時代の地形図で示された「針葉樹林」については、ほとんどがアカマツ林であったと考えて解説しています。
広島県は全国的に見ても林野火災の発生件数が多く、平成元年~14年の発生件数は全国でも第1~6位の間を推移しています(広島県のホームページより)。近年では、廿日市市の経小屋山周辺で、1999年5月2日~4日に大規模な火災が発生しています。この火災は2日間にわたって燃え続け、南側斜面の中腹の約百数十ヘクタールが焼けました。
地中深くで生まれた岩石です。石材として利用される御影(みかげ)石としても知られています。地表にあらわれた部分は、風雨などにさらされると風化しやすく、一般にマサ土(真砂土)と呼ばれる砂のようになります。そのため、大雨が降って水を含むと崩れやすく、土砂災害が起こる原因の一つとなります。
泥や砂などが湖、川、海などにたい積してできた岩石です。花こう岩に比べて硬く、風化に対する抵抗性が強い傾向にあります。
5月ごろ、渓流沿いや山の中を歩いていて、木イチゴの赤い果実がたくさんなっているのに出会ったら、周りの様子を見て下さい。そこは明るくて、背丈の低い木がしげっている明るい場所の低木林であることが多いはずです 。
よく見かける木イチゴの仲間(写真をクリックすると詳細を表示)
指標する環境(明るい場所の低木林)
木イチゴの仲間は、明るい裸地で芽生えて、いち早く育つ樹木です。木イチゴの仲間がたくさん生えていたら、そこは、伐採された直後か、土砂災害などで裸地になってから、まだあまり時間の経過していない場所ということがわかります。
渓流沿いや山の中を歩いていると、トゲのある樹木やツル植物に服や体が引っかかったりした経験はありませんか? 周りを見ると、そこは明るくて、背丈の低い木がしげっている明るい場所の低木林であることが多いはずです 。
よく見かけるトゲのある樹木・ツル植物(写真をクリックすると詳細を表示)
指標する環境(明るい場所の低木林)
ここで紹介したトゲのある樹木・ツル植物は、明るい場所でいち早く芽生えて、背丈の低い林をつくります。暗い森の中では芽生えることはできず、見かけることもほとんどありません。したがって、 これらの樹木・ツル植物がたくさん見られる場所は、過去に、森が伐採されたことがあるか、土砂災害などで裸地になった経歴を持つことがわかります。
それにしても、トゲがあるのはなぜなのでしょうか?背が低く、手が届くような高さに葉をつけているので、ノウサギやシカなどに食べられないように身を守るためなのかもしれません。
秋に山を歩いていると、地面にドングリが落ちていることがあります。
どれも同じように見えるドングリも、ちょっとした観察で、種類はもちろんのこと、落ちている場所の様子や、将来の林の様子まで見えてきます。
まずは、ドングリにくっついている「帽子」の形に注目してください!
「帽子」に横しま模様があるドングリは、「カシ」の仲間です。
これらはすべて常緑樹ですので、たくさん見つかったら、そこはきっと「常緑樹林」です。
鎮守の森や神社の裏山だとしたら、その林は、人が森を切り開くよりももっと昔の林の姿を伝えています。鎮守の森にしか暮らせない樹木や昆虫に、出会えるかもしれません。
もしも、冬に葉を落とす高木も目立つようなら、「アカマツ林」や「落葉樹林」から、今まさに「常緑樹林」へと変わり始めている林です。
広島西部山系では、「アラカシ」、「シラカシ」、「ツクバネガシ」、「アカガシ」、「ウラジロガシ」が見られます。
ドングリの「帽子」がトゲトゲしていたら、それは「クヌギ」か「アベマキ」です。
これらはすべて落葉樹です。たくさん見つかったらその場所は「落葉樹林」、 コナラ林であること間違いなしです。
1970年代ごろまでは、まきや炭、建築用の材木などを切り出すために、みんながいつも訪れていた林です。 今のように、伐採されることなく時が過ぎると、数十年後には「常緑樹林」に変わってしまいます。
ドングリの「帽子」がウロコ模様なら、そのドングリは落葉樹の「コナラ」か、常緑樹の「シリブカガシ」です。
広島市東区の二葉山なら、鎮守の森の「常緑樹林」です。
二葉山以外なら、その林はおそらく、1970年代頃まで、まきや炭や建築用の材木などを切り出すために、みんながいつも訪れていた林です。