昔々、気多(きた)の岬(みさき)に一匹の白ウサギが住んでいました。 ある日、大洪水(だいこうずい)が起き、白ウサギは沖(おき)の島(しま)へ流されてしまい困っていました。 そんな時、ワニザメと出会いました。 白ウサギは、ワニザメを騙(だま)して向こう岸に戻ろうと思い 「ワニザメさん、君達の仲間と我々の仲間と、どっちが多いか比べてみようよ」 と言って、向こう岸まで並ばせ 「一匹、二匹、三匹・・・」 と、数えながらワニザメの背をぴょんぴょんと渡って行きました。 |
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もう少しで岸に着くという頃、白ウサギはつい 「君達は騙されたのさ」 と言ってしまい、怒ったワニザメは、白ウサギの毛をむしって丸裸にしてしまいました。 丸裸の白ウサギが砂浜で泣いていると、大勢の神様が通りがかり 「海水でその身を洗い、風に当たってよく乾(かわ)かし、高い山の頂上(ちょうじょう)で伏せていなさい」 と言いました。白ウサギは言われた通りにしましたが、ますますひどくなるばかりでした。 白ウサギが泣いていると、大きな袋を担いだ大国主(おおくにぬし)の命(みこと)が通りかかり 「河口(かわぐち)に行って真水(まみず)でその身を洗い、蒲(がま)の穂(ほ)をつけなさい」 と言いました。その通りにすると、どんどん元の白毛に戻りました。 白ウサギはとても喜び、お礼に美しい八上姫(やがみひめ)の所に大国主の命をお連れしましたとさ。 | |