分流部改築

~旭川放水路事業の最終工程~

旭川放水路(百間川)は、江戸時代より残る放水路を活用し、昭和40年代より国により河川改修を進めてきました。百間川への洪水の分流位置は、現在も当時と同様と言われており、また分流部は豊かな自然環境が残る貴重な河川空間であることから、その機能と施設を極力引き継いでいます。

分流部改築の必要性と整備効果

これは、平成10年10月洪水時の状況です。
旭川の基準地点(下牧)で毎秒約4,300トンが流下し、百間川に毎秒約900トンが分流しましたが、一の荒手の土堤部、二の荒手の空石積が被災しています。
発掘調査の結果から今まで幾度も修復・補強を繰り返していたことが分っています。

平成10年10月洪水の被災状況

一の荒手

一の荒手

二の荒手

分流部の改築が無ければ…

河川整備基本方針規模の洪水に対して、適正な分派ができず、分流部(一の荒手・二の荒手・背割堤)は空石積みのため洪水により破壊する可能性があり、壊れた場合は百間川の能力よりも多くの洪水が流れ込むため、沿川で浸水被害が発生します。

※旭川の流量が毎秒約5,000トンを越える場合、洪水は背割堤の全区間を越流します。

分流部の整備が完了すると…

河川整備基本方針規模の洪水に対して、適正な分派により、百間川放水路の機能が発揮され、百間川沿川の浸水が防げます。

分流部改築の必要性と整備効果

百間川分流部周辺(H26撮影)
百間川分流部については、百間川への適正な分流と旭川下流地区・百間川全体の治水安全度の向上等に向けた改築に着手し、「一の荒手」については、平成29年11月より工事を進め、このたび工事が完了しました。

分流部改築の必要性と整備効果

百間川分流部「一の荒手」周辺の整備前

百間川分流部「一の荒手」周辺の整備後

基本方針

■巻石部(亀の甲):保全(補強)する。
・ 江戸時代の建設当時の位置に存在しており、現在も治水機能を有しているため保全対象とする。

■越流部:改築(補強)する。
・ 旭川百間川の分流比を確保するため、越流部の改築補強を実施する。
・ 越流部は現在コンクリート張りであり、当時の材料・形状を保っていないため保全対象とはしない。
・ 上流前堤部は、旭川側からの水あたりから越流堤の安全を図るため前面に平ブロック設置する。
・ 下流根固部は、越流堤からの流水による洗掘防止対策として護床ブロックを設置する。

一の荒手改築関係工事 巻石部(亀の甲)の工事

百間川分流部「二の荒手」完成

二の荒手現状(平成29年6月)
百間川分流部の改築実施にあたっては、歴史的遺構である「一の荒手」「二の荒手」などの保存・保全および分流部の周辺環境に配慮しつつ取り組みました。

オニバス移植の取組

工事箇所周辺に自生していたオニバスから種を採取し、苗を育て、元の位置に戻す移植作業を、地元小学生と一緒に行いました。
開花したオニバスの花
かつてのオニバス生育状況
オニバスの移植風景
順調な生育状況
二の荒手発掘状況(H28.6)
損傷が激しい二の荒手
二の荒手完成報告会(H29.7.29)
地域の歴史研究や住民のみなさんと記念撮影

平成30年7月豪雨
適正な分派で浸水被害を防止

今回の洪水では、旭川放水路(百間川)がなかった場合に、岡山市街地(JR岡山駅付近)の約180ha及び約3,300戸の家屋の浸水被害が発生するおそれがありましたが、放水路に洪水を分流することにより旭川の水位を約1.3m低下させ、洪水を安全に流下させました。

今回、最大で分流前毎秒4,200トンのうち、
毎秒1,200トンを百間川へ分流

今回の洪水による整備前後の
浸水被害の比較(浸水戸数)

旭川放水路がなかった場合の
浸水想定区域