都市を流れる川は“春の小川”などに歌われている川のイメージとはほど遠く、水の流れのみられないものがあるのは、どうして?



 都市化の進展(しんてん)によって、都市の表面がコンクリートやアスファルトなどによって(おお)われ雨水が地下へ浸透(しんとう)せず川へ一気に(なが)()みはじめました。これとともに都市のまわりの林や農地が宅地化(たくちか)されたり、池や(ぬま)()められたことも雨水の急激(きゅうげき)な流出の原因(げんいん)となりました。こうして都市化が進んだ川では、少しの雨でも「氾濫(はんらん)」するようになりましたが、住宅(じゅうたく)などが密集(みっしゅう)し、川幅(かわはば)を広げるのも容易(ようい)でないことから、その対策(たいさく)として、護岸(ごがん)も川底もコンクリートで固めた大きな下水路のような「コンクリート三面張(さんめんばり)」の川が出現(しゅつげん)してしまったのです。
 しかし、最近ではうるおいのある都市生活が求められ、都市の川は、魅力(みりょく)ある都市環境(としかんきょう)を形づくるたいせつな要素(ようそ)として注目されています。これからの都市の河川整備(かせんせいび)では、美しい川の風景をよみがえらせ、詩情(しじょう)(ゆた)かな水辺の情景(じょうけい)をつくりあげていく必要があります。魅力(みりょく)(うす)れた都市の川に対して、単に水辺の美観を整えたりするだけでは十分とはいえません。その基本(きほん)は、都市化によってひずんだ都市の水循環(みずじゅんかん)を健全な姿(すがた)(もど)していくことではないでしょうか。