広島市のとしきこう



 広島市を見渡(みわた)すと、太田川や平和公園などがあるといっても、やはり周辺の田園地帯に(くら)べると、地面・緑地面・水面の絶対量(ぜったいりょう)が少なく、これらに変わってコンクリートやアスファルトが多いことに気が付きます。
 このことは、蒸発面(じょうはつめん)減少(げんしょう)、すなわち、蒸発(じょうはつ)による冷却効果(れいきゃくこうか)が弱くなりつつあることを意味するのです。人間の体にたとえれば、都市の表面は、(あせ)のかきにくい異常体質(いじょうたいしつ)になりつつあるということです。そういった都市化にともなう気温の上昇(じょうしょう)を「ヒートアイランド現象(げんしょう)」といいます。
 また、都市化に(ともな)う都市表面の改変が(いちじる)しい一般的傾向(いっぱんてきけいこう)の中で、広島市は、幸いにも、太田川放水路を(ふく)めたいくつかの川が流れています。これだけの大きな水面があれば川の近くでは、水面での蒸発効果(じょうはつこうか)により気温はヒートアイランドより2〜4℃低くなるのです。このような効果(こうか)が期待できるものとしては、太田川の他に緑地や土壌面(どじょうめん)のある平和公園があります。

●「打ち水」の効果(こうか)
 最近、「打ち水」という日本の風物詩を見なくなりました。これは、単に(すな)ぼこりをおさえるためのものと考えている人も少なくないでしょう。それも1つの目的ですが、もっと重要な効果(こうか)が打ち水にはあるのです。夏の炎天下(えんてんか)、焼けただれた庭先に水をまくことは、気分的にも爽快(そうかい)な気分になりますが、これは単に体感的なものではなく、熱のやりとりのうえできわめて効果的(こうかてき)納涼手段(のうりょうしゅだん)なのです。
 なぜなら、庭にまかれた水(1グラム)が蒸発(じょうはつ)するときに、地表面の熱(約600カロリー)もうばってくれるので、(すず)しくなるのです。

●「都市気候」って何?
 広島市は、都市化の波が年々押し寄(お よ)せているとはいうものの、首都圏(しゅとけん)阪神地域(はんしんちいき)にくらべると、やはり山、緑、海岸があり自然に(めぐ)まれています。しかし、近郊(きんこう)の山を(けず)造成(ぞうせい)して、そこに住宅団地(じゅうたくだんち)ができると、そこに特有の不自然な気候が形成されることは否定(ひてい)できません。また、都心部が周辺部より高温となる「ヒートアイランド現象(げんしょう)」に必要な最小限(さいしょうげん)の人口は100〜300人とされています。つまり、1つの小さな集落から「都市気候」は発生すると言えるのです。