政令指定都市である広島は、瀬戸内海の中央に位置した中国地方において最大の産業文化の中心都市です。しかし、その主要な市域のほとんどは、もともと太田川のデルタ(三角州)地域で、江戸中期から行われた海への干拓や埋め立てによって形成され発達してきたため地盤の高さが低く、特に南観音、舟入、江波、吉島、宇品、大洲、東雲、千田等の各地区は、いわゆる「ゼロメートル地帯(地盤が海水面より低い地域)」となっています。さらに広島湾が南に開けているという地形をしていることから高潮災害に対しては防災上きわめて不利な状況です。広島市の高潮災害は、平成3年9月の台風19号や平成11年9月の台風18号を含め昭和以降だけでも12回を記録しています。
そこで、広島に来襲した台風のうち最も大型であった昭和26年のルース台風やこれ以上の強さであった昭和34年の伊勢湾台風クラスの大型台風が通過して異常高潮を起こしても安全に対策できるように、昭和44年に「広島湾高潮事業全体計画」を定め、太田川放水路および市内派川に堤防を建設し、広島市の主要な地域をまもるための事業のことです。 |