1.はじめに
電線類地中化については、昭和61年度から3期にわたる「電線類地中化計画」と「新電線類地中化計画」に基づき、関係者間の協力のもと積極的に推進してきたところである。
これまでの取り組みにより、市街地の幹線道路*1の無電柱化率*2は9%(平成15年度末見込み)になるなど、まちなかの幹線道路については一定の整備が図られてきている。しかし、その水準は欧米都市と比較すると依然として大きく立ち遅れており、引き続き推進していく必要がある。
また、「新電線類地中化計画」策定以降、「交通バリアフリー法」*3の施行や「観光立国行動計画」の策定等がなされ、道路から電柱・電線を無くす無電柱化に対する要請は、歩行空間のバリアフリー化、歴史的な街並みの保全、避難路の確保等の都市防災対策、良好な住環境の形成等の観点からもより一層強く求められるようになり、これまでの幹線道路だけではなく非幹線道路においても無電柱化を進めていくことが必要となっている。
一方、電力・通信分野の自由化の進展等に伴い電線管理者の経営環境は厳しさを増し、また国・地方公共団体における財政事情も悪化しており、一層のコスト縮減等円滑な推進のための課題への対応も必要となっている。
こうした時代の要請と課題に応え、無電柱化が美しい国づくり、活力ある地域の再生、質の高い生活空間の創造に大きく貢献することを目指し、新たに主要な非幹線道路も整備対象に加え地中化以外の手法も活用して、我が国の無電柱化を計画的に推進するため、本計画を策定したものである。
2.無電柱化の基本的な考え方
無電柱化は、安全で快適な通行空間の確保、都市景観の向上、都市災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上、観光振興、地域活性化等の観点からその必要性及び整備効果は大きく、一層の推進が強く要請されている。それらの要請に応え、自由化等で厳しさを増す電線管理者の経営環境や国・地方公共団体の財政状況の悪化等の課題に対応しつつ、道路管理者、電線管理者及び地元関係者(地方公共団体、地域住民)が三位一体となった密接な協力のもと、これまでの幹線道路に加え新たに主要な非幹線道路も対象として、より一層の無電柱化を積極的に推進する。
3.無電柱化対象の考え方
1)基本的方針
無電柱化対象の選定にあたっては、以下を基本的方針とする。
(1)まちなかの幹線道路については、引き続き重点的に整備を推進するものとする。
(2)都市景観に加え、防災対策(緊急輸送道路・避難路の確保)、バリアフリー化等の観点からも整備を推進するものとする。
(3)良好な都市環境・住環境の形成や歴史的街並みの保全等が特に必要な地区においては、主要な非幹線道路も含めた面的な整備を実施するものとする。
2)無電柱化実施個所の選定
無電柱化実施個所の選定にあたっては、基本的方針に沿って、以下の要件を総合的に勘案し、必要性及び整備効果の高い箇所を選定するものとする。
(1)路線要件
不特定多数の歩行者や自動車の利用頻度の高い、地域の骨格となる幹線道路及び主要な非幹線道路の無電柱化を重点的に実施するものとする。
(2)用途要件
商業地域、近隣商業地域、住居系地域において引き続き無電柱化を実施するほか、歴史的街並みの保全が特に必要な地区等においても実施するものとする。
(3)関連事業要件
土地区画整理事業、市街地再開発事業、バリアフリー化事業等、他の関連事業と併せた無電柱化を重点的に実施するものとする。
(4)沿道要件
地域の景観改善への取り組み、電力・通信の需要の観点に配慮して無電柱化を実施するものとする。
4.無電柱化の進め方
1)コスト縮減
電力・通信分野の自由化の進展等に伴い厳しさを増す電線管理者の経営環境、国・地方公共団体の財政事情の悪化などに対応するため、無電柱化のコストを縮減することが急務である。そのため、さらなる簡便でコスト縮減が可能な無電柱化の手法として以下の方針で実施するものとする。
(1)同時施工
都市部のバイパス事業、拡幅事業、街路事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、バリアフリー化事業に併せて、電線共同溝等を原則同時施工するものとする。その際には、計画のなるべく早い段階から調整を行い円滑な事業実施を図るものとする。
(2)浅層埋設方式の導入
従来よりコンパクトで簡便な浅層埋設方式を標準化するものとし、掘削埋め戻し土量の削減等により概ね2割のコスト縮減を目標とする。
(3)既存ストックの有効活用
既設の地中管路について、管路所有者と協議の上可能で有れば、電線共同溝等の一部として活用するものとする。
(4)地中化以外の無電柱化手法の導入
非幹線道路を中心に、軒下配線・裏配線等の手法も導入し、無電柱化するものとする。
2)整備手法
(1)電線共同溝方式
以下のa)、b)のいずれかに該当する道路については、電線共同溝方式による整備を基本とするものとする。
a)幹線道路
・商業地域、オフィス街、駅周辺、住居地域の幹線道路
・地域防災計画に位置づけられている都市部の緊急輸送路等
b)以下の地区内の幹線道路及び主要な非幹線道路
・くらしのみちゾーン
・重要伝統的建造物群保存地区、歴史的風土保存区域、第一種歴史的風土保存地区及び第二種歴史的風土保存地区
・バリアフリー重点整備地区(特定経路)
・既成市街地等で都市計画決定された土地区画整理事業・市街地再開発事業地区
・特に防災上、整備の緊急性が高い密集市街地
(2)電線共同溝方式以外の無電柱化手法
自治体管路方式、単独地中化方式等の地中化手法、あるいは裏配線、軒下配線等の地中化以外の無電柱化手法も活用して整備するものとする。
なお、土地区画整理事業や宅地開発事業などにおいて、まちづくりの計画段階から共同して計画を行い、主要な道路においては、裏配線などにより当初から電線や電柱がない環境を実現する手法も活用するものとする。
3)整備を進めるにあたっての体制
(1)全国10ブロック毎の道路管理者、電線管理者、地方公共団体等関係者からなる電線類地中化協議会において、構成員の意見を十分反映した協議により、推進計画を策定し計画的に推進するとともに、定期的に同協議会を開催し円滑な推進に努めるものとする。
(2)同協議会においては、都道府県単位などの地方部会の意見を反映するものとする。
(3)具体の無電柱化箇所における事業実施に関しては、道路管理者、電線管理者、地元関係者の各々が果たすべき役割と責任を踏まえ、連絡会議の設置等により円滑に推進するものとする。
5.費用負担のあり方
無電柱化に伴う費用については、以下の通りとする。
(1)電線共同溝方式:電線共同溝の整備等に関する特別措置法に基づき、道路管理者及び電線管理者等が負担する方法
(2)自治体管路方式:管路設備の材料費及び敷設費を地方公共団体が負担し、残りを電線管理者が負担する方法
(3)単独地中化方式:全額電線管理者が負担する方法
(4)その他、電線類地中化協議会で優先度が低いとされた箇所において無電柱化を実施する場合には、原則として全額要請者が負担するものとする。
6.整備の目標
平成16年度から20年度までの5年間を計画期間とし、以下を目標として整備を推進するものとする。
(1)市街地の幹線道路については、その無電柱化率を現在の9%から17%に向上させる。
(2)政令指定都市、道府県庁所在地等の主要都市においてまちの顔となる道路*1の無電柱化率については、48%から58%に向上させる。
(3)くらしのみちゾーン、重要伝統的建造物群保存地区等、バリアフリー重点整備地区等、主要な非幹線道路も含めた面的整備を推進すべき地区*2については、概ね7割の地区で整備に着手する。
*1 都市計画法における市街化区域及び市街化区域が定められていない人口10万人以上の都市における用途地域内の一般国道及び都道府県道
*2 電柱、電線のない道路の延長の割合
*3 高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律
*1 商業地域内の国道、都道府県道及び4車線以上の市町村道
*2 407地区(平成15年度末現在) |