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 高齢化や人口減が進む郊外住宅団地に活力を生むことを目指し、広島市の8団地、廿日市市の2団地、計10団地による連携組織「広島郊外住宅団地ネットワーク」が平成24年3月に発足しました。
 同ネットワーク並びに(社)都市住宅学会中国・四国支部の主催により、団地住民だけでなく、外部の協力・連携を確保しながら郊外住宅団地の課題解決、活性化に向けた取組を進めるべく、「広島郊外住宅団地ネットワーク・シンポジウム -様々な担い手との協力・連携を考える-」が平成24年12月4日に開催され、その様子を取材しましたのでお知らせします。
 シンポジウムは、広島郊外住宅団地ネットワーク 宮本暁子代表並びに(社)都市住宅学会中国・四国支部 間野博 前支部長の主催者挨拶に始まり、広島大学大学院工学科 平野吉信教授による「団地問題解決の新たな主体の概要整理」、そして各団地における取組事例報告と続きました。
 なお、下記の記述内容は、中国地方整備局が会場において聴取して要約した内容を主催者側に確認いただいたものであり、各登壇者の発言全てを記録したものではありませんので、ご了承ください。

広島郊外住宅団地ネットワーク・シンポジウム(平成24年12月4日)

開会挨拶
(広島郊外住宅団地ネットワーク 宮本暁子代表)

  本日は、たくさんの人に集まっていただき、感謝する。3月のネットワーク設立以来、住民目線でいろいろなことを考えてきたが、住民だけでなく、団地に関わるいろいろな方々と協力しながら団地を元気にする方法を考えていきたいと思い、本日のシンポジウムを開催した。団地は、「点と線」では何もできない、点と線を「面」にしていくことで、広島の団地はもっと元気になっていくのではないか。どうか私たちといっしょに活動していただきたい。

開会挨拶
(都市住宅学会中国・四国支部 間野 博 前支部長)

 都市住宅学会は一貫して広島郊外住宅団地ネットワークを支援している。ネットワークの設立後、これまで、メーリングリストにより各団地の情報を交換し、団地の見学会を行っている。しかし、そうした輪を広げていく必要を感じており、このシンポジウムをきっかけに、多くの方々にネットワークにぜひ参加してもらい、盛り上げていきたい。

 

司会進行
(広島郊外住宅団地ネットワーク事務局 
中国地方総合研究センター 宮本 茂 企画部長)

 

団地問題解決の新たな主体の概要整理
(広島大学大学院工学研究科 平野吉信教授)

 郊外住宅団地は、昭和30年代の、人々が夢を描いた時代に多数開発されたが、どこも高齢化が進んでおり、広島も例外ではない。今日の郊外住宅団地は、現在住んでいる人の日常生活が不便になりつつあり、これからの住民のコミュニティを支える若い人たちもなかなか入ってきてくれない。これらをいかに克服して、団地の明日を作っていくかが課題であり、またその役割は、住んでいる人プラスの誰かが必要。地域、または共同体としての経営・管理=マネジメントが必要になってきている。それなくして、郊外住宅団地の10年、20年後はない。
 以上の点を問題意識として共有いただいたうえで、各団地からの連携事例の報告を聞いていただきたい。

各団地の取組事例報告

高陽ニュータウン創生まちづくり基本構想
(広島県住宅供給公社 岡崎俊常務理事)

 ベッドタウンでありすぎた郊外型住宅団地を、今の現実に合う、仕事と生活のバランスの取れた、生活タウンとしていくために、新しい価値の創造=イノベーションを行う必要がある。そして、団地の目指す姿として、誰もが「活き活き」と「心地よく」暮らせるまちを目指し、環境・教育・健康・活力の4つの価値について、宝を探し、それらを育てていかなければならない。
  すでに、多様な主体と連携して、買い物支援、子育て支援施設誘致、医療機能充実に着手しており、まちづくり創生市民会議も立ち上がっている。団地を活性化し、価値を創生していく取組は、我々だけでは実現できない。会場にお越しの皆さん、また行政の支援が必要である。

 

美鈴が丘団地「Re:倶楽部(りらくすくらぶ)美鈴が丘」
(三井不動産リアルティ中国崖e:倶楽部美鈴が丘呉田雅文所長、酒井英治氏)

 三井不動産は、平成21年11月に「地域密着・三井ファンの再構築・美鈴が丘団地の活性化」を目的とした拠点「リラクス美鈴が丘」を開設し、平成24年4月から「Re:倶楽部」と名称を改めた。定期イベント開催、店舗の2階スペースを住民グループ等に無料開放、機関誌の定期発行、美鈴モール土曜朝市の開催、住民への無料出張サービス(庭への散水など「ちょっとしたお手伝い」)などを手がけている。
  イベントは、最初はプロの人々に任せていたが、次第に地元の方々やその知り合いにお任せしている。やはり主役は住民。こうした活性化が、子育て世代の転入につながっていると思われる。
  スムースな世代交代だけでなく、当初に入居した人々が、齢を重ねても住みやすい街とすることもたいへん重要。街としての魅力づくりは、不動産市場での価値につながり、それが老後の生活に必要な担保力にも関わってくる。その観点からも、今お住まいの方が満足できるような、魅力ある住みやすい街づくりをお手伝いしていきたい。

 

スカイレールタウンみどり坂
(積水ハウス(株)設計部 松村善朗氏、
スカイレールサービス(株)社長 佐久間紳史氏)

 「スカイレールタウンみどり坂」は、まだ歴史が浅く、他の郊外住宅団地と状況は異なるが、将来の課題を考えてまちづくりに取り組んでいる。住宅団地は、作りっぱなしではなくコミュニティを作っていく必要があると考え、そのために住民相互の親睦の場づくり、自治会の立ち上げ支援、光ファイバー通信網を活用したネット上のコミュニティの場「ミニタウン町内会」開設等を行っている。
  みどり坂は、山の上の団地で平地と高低差が200mもあるため、新交通システム「スカイレール」を最寄駅まで敷設している。また、スーパーや学校等の生活上必要な拠点がなかったので、住民にも協力いただき商業・教育施設を誘致することにより、2005年に保育園、2006年にスーパー、2011年には小学校が開設された。積水ハウスは、生活サポート業務を行うスカイレールサービスとともに、町内会と連携して行政に働きかけ、施設誘致のための土地や建物の確保に協力するなど、支援してきた。
  今後も、次世代へと住み継がれる街づくりに取り組んでいきたい。

 

毘沙門台団地
(毘沙門台学区社会福祉協議会理事 永山義博氏、林 裕氏)

 毘沙門台団地は、完成して30年以上経過した現在でも、わずかながら人口が増えているが、やはり状況は厳しく、少子高齢化が進行し、一人暮らしの老人も増えている。
  そのような中で、「近隣ミニネットワーク」を立ち上げ、高齢者の見守り、高齢者パソコン教室、メンズサロン、畑でサロン、救急医療情報キット配付等の取組を進めている。 
  人間の一生のうちボランティアに従事できる時間は限られている。それでも、地域行事に参加するなど、地域との関わりを持つことは、仕事をリタイアした後、セカンドステージでの地域デビューに役立つ。メンズサロンの取組は、地域デビューせず、リタイヤすると自宅に引きこもるかつての企業戦士が早くに体調を崩すことを憂慮し、地域の交際のきっかけとなれば、というねらいで始めた。近隣ミニネットワークは、そうしたセカンドステージを迎えた住民の方々が主体的に動いている。
  メンズサロン以外にも、シニア勉強会を年1回開催し、リタイアを迎える年齢前後の方々に、町内会や社協の役員になってもらうよう働きかけている。

各団地関係者からのひとこと

 団地を支える組織づくり、すなわち団地の自治のためにありとあらゆる人が参加する仕組みづくりが必要、開発業者はそのうちのひとつのセクションとして機能するべき。(高陽ニュータウン 広島県住宅供給公社 岡崎氏)

 開発事業者、団地の住民だけではどうにもできない、都市計画の変更を必要とするものがある。開発事業者、住民、行政の三者が同じ方向を向いて協調する必要がある(スカイレールタウンみどり坂 佐久間氏)

 やはり住民主体の活動が重要。民間事業者にできることは限られているが、できる範囲で支えていきたい。
(美鈴が丘団地 Re:倶楽部 呉田氏) 

 組織づくりも重要だが、人間同士のつながりをいかに醸成していくかがより重要。住宅団地の豊かさとは、モノではなくハート、つまり心で感じる人間同士のつながり。人間の五感に訴えるような住宅団地の豊かさ、魅力を、原点に帰ってつむぎなおすべき時代に来ており、それを開発事業者といっしょに育てていきたい。(毘沙門台団地 社会福祉協議会 永山氏)

まとめ(広島大学大学院工学科 平野吉信教授)

 郊外住宅団地を支えるには、公助だけではだめ、そして自分たちによる自助も必要だが、住民と、住民を支援する開発事業者、社会福祉協議会等と連携した「共助」も必要。
  団地が開かれた時代と異なり、今は状況に応じて適切なマネジメントを行っていかなければならない。地区計画、建築協定といった、すぐには変更できない行政上の要素も多いが、行政にも二人三脚のようについてきてもらう必要があると感じており、今後の我々ネットワークの研究において検討していきたい。

 


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国土交通省中国地方整備局 建政部 計画・建設産業課