記者発表
お知らせ(平成18年7月31日)

『平成18年梅雨期の総括』
〜梅雨期における灰塚ダム試験運用の結果について〜
 灰塚ダム(広島県三次市三良坂町)は、ダムの満水まで水を貯めダムならびに貯水池周辺斜面の安全を確認する試験湛水を平成18年4月7日に完了し、平成19年度からの本格的な管理に向け、現在試験運用の段階に入っております。
 この度の梅雨期に灰塚ダムにとって初めての洪水調節ならびに環境保全の運用を行いました。そこで、平成18年梅雨期を雨量データやダム流入量データなどの気象、水象状況から振り返るとともに、灰塚ダムが行った洪水調節効果や環境保全運用についてご紹介します。
1. 平成18年梅雨期における灰塚ダム流域の気象・水象の概況
 
(1) ダム流域平均の雨量
   図−1は、各年5月〜7月までの雨量を合計し各年で比較したものです。
   平成18年5月〜7月の雨量は、平年に比べ約1.6倍で平成1年〜平成14年までの期間のうち平成5年につぎ2番目に雨の多い年でした。
   以上から、平成18年の梅雨期は雨が多いという事がデータからも確認されています。
  図−1 5月〜7月総雨量の各年比較
 
(2) ダム流域での時間雨量と累加雨量
   平成18年5月〜7月の灰塚ダム流域平均最大時間雨量は22.7mm(7月2日午前5時)であり、昭和47年7月洪水における灰塚ダム流域平均雨量の最大値26.1mmとほぼ同程度の結果でした。
   また、灰塚ダム流域に配置された6つの観測所のうち、最大時間雨量を記録したのは灰塚ダム管理庁舎屋上に設置されている雨量計で、7月15日午前5時に時間雨量46mmを記録しています。
   図−2は、今回の梅雨期で最も洪水の規模の大きかった7月19日洪水と、江の川流域に激甚な被害をもたらした昭和47年7月洪水のダム流域平均雨量を比較したものです。7月19日洪水の灰塚ダム流域平均累加雨量は158.6mmで、昭和47年7月洪水の約1/3程度の累加雨量でした。
  図−2 平成18年7月19日洪水と昭和47年7月洪水のダム流域平均雨量の比較
(3) 灰塚ダム流入量の状況
   図−3は、平成18年7月19日洪水と昭和47年7月洪水の灰塚ダム流入量および放流量を比較したものです。7月19日洪水での灰塚ダム地点ピーク流入量は494.2m3/sで、灰塚ダム計画高水流量に比べ約43%、昭和47年7月洪水に比べ約59%程度の規模でした。
   また、今回のピーク流入量は、灰塚ダムが流量観測を開始した昭和51年から平成14年までの実績洪水データのうち、16番目の規模に相当する規模でした。
   (過去27ヶ年のうち最大流量:平成10年10月18日洪水・・・913.4m3/s)
 
 
  (※S47年7月洪水はシミュレーションによる計算値)
  図−3 平成18年7月19日洪水と昭和47年7月洪水の灰塚ダム流入量の比較
2. ダム下流河川の環境保全運用について
 
(1) 環境用水放流設備を用いた環境保全運用の概要
   灰塚ダムの洪水調節は自然調節方式を採用しています。自然調節方式であるため管理がしやすいという利点を有している一方で、「ダム下流流量の平準化」や「洪水調節後の放流の長期化」という課題があります(図−4参照)。
 
  図−4 自然調節方式の課題と対策
 
(2) 『中小出水の再現放流』の試行について
   平成18年6月22日、梅雨前線に伴う降雨により灰塚ダム流域平均雨量は80.7mmを記録しました。この降雨による最大流入量は100.5m3/sでした。
   灰塚ダムに設置された環境用水放流設備を用いて、最大流入量に相当する規模まで人工的に放流量を増加させて中小出水を再現する取り組みを初めて行いました。

 図−5は、6月22日出水における灰塚ダムへの流入量と放流量の変化を表したものです。流入量が放流量とほぼ一致した6月23日9時30分より環境用水放流設備を開け、中小出水の再現放流を行いました。最大放流量98.85m3/sに到達したのは6月23日13時頃でした。
最大流入量相当の放流を行っている様子
(撮影:6月23日13時40分頃)
  図−5 中小出水再現放流における流入量および放流量の変化
 
   この中小出水再現放流によるダム下流域での効果としては、図−6に示す池田堰地点の濁度が6月23日15時頃上昇していることから、中小出水再現放流によりダム下流河道内において砂礫等の移動が発生したものと推測されます。一方、流入量のピーク到達から約17時間後に放流量のピークとなることから、中小出水再現放流の開始時期をもう少し早め、より自然流況に近い再現放流となるよう検討する必要があるという課題も見つかりました。
 
  図−6 中小出水の再現放流におけるダム下流の濁度状況
3. 平成18年7月19日洪水における灰塚ダム洪水調節効果について
 
 梅雨前線に伴い、灰塚ダム流域では7月19日午前1時頃から激しい降雨となりました。
 灰塚ダム流域平均に降った最大時間雨量は19.9mm(19日午前2時)、降雨開始からの累加雨量は158.6mmを記録しました。
 この降雨による灰塚ダム最大流入量は494.2m3/s(19日午前7時50分頃)、最高貯水位はE.L.236.6m(19日午後0時30分頃)となりました。[図−7]
 この洪水における灰塚ダム最大洪水調節量は約350m3/sでした。また、ダム下流河川における灰塚ダムの洪水調節による水位低下効果は、市場地点(上下川)において1.32m、南畑敷地点(馬洗川)において0.31mであったと考えられます。[図−8]
 さらに、南畑敷地点における警戒水位(はんらん注意水位)の超過時間を約1時間短縮することができました。
  図−7 7月19日洪水における灰塚ダム流入量および放流量状況
 
 
 
  図−8 基準地点におけるダム洪水調節効果

■問い合わせ先
 国土交通省中国地方整備局 江の川総合開発工事事務所
  副所長(技術)
やまだ  けいいち
山田 啓一
  調査設計課長
しょうじ しゅんすけ
庄司 俊介
  調査設計係長
いりかわ なおゆき
入川 直之
 TEL(0824)44−4360

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