「新たな公」モデル事業において、「公共交通の維持・活用を核とした集落機能維持推進事業」に取り組まれた、岡山県笠岡市神島(こうのしま)の皆様は、その後も、神島伝統の八十八ヵ所めぐり「島へんろ」の継承にも取り組まれています。 全国島へんろサミット
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各地の島へんろに取り組む皆様、遠路お越しいただき、感謝申し上げる。 私たちの神島には、江戸時代から受け継がれてきた八十八か所霊場が今でも残っている。この3年間、八十八か所の活性化に取り組んできた集大成として「全国島へんろサミット」を企画した。情報を共有し、お互いの取組を学んで切磋琢磨するとともに、島へんろを広くPRすることができればと思う。 |
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来賓挨拶(天野笠岡市副市長)
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八十八か所は地域の代表的な文化であり、これからのまちづくりのひとつの資源となるもの。地域の皆様の献身的な努力によって継承されてきている。今回のサミットにより、島へんろの魅力がより多くの人に伝えられ、各地の島へんろ継承活動がますます活性化することをお祈りする。 |
島へんろ状況調査報告 (NPO法人ありがとうネットワーク 吉戸 勝氏)
全国29か所の島へんろは、名称や規模はさまざま。夢のお告げから、島ならではの漁師の安全祈願まで、様々な由来を持つ。札所の管理は、お寺、住民の方々、バス会社等の多様な主体により行われている。地域資源として地域住民の方にも知ってもらおうという長崎県壱岐島、失われた札所のほこらを芸術家によるアート作品として復元した愛知県佐久島のように、熱心な取組がみられる。ご当地の笠岡市神島の八十八か所では、四国の高地にある札所は同じように高台に設けるなど、本家四国の八十八か所によく似せている工夫が特徴的。 | ![]() |
基調講演「旅行者の動向から見た島へんろの可能性」
(株式会社JTBコミュニケーションズチーフプロデューサー 中村忠司氏)
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島旅をする人々は、島で不便や苦労を感じても、旅の満足感を味わっている。島へんろでは、島の人とのふれあいが、満足感につながることだろう。「巡る旅」を楽しむ人が増えているように、旅の需要は多様化しており、これからのお客さんを島へんろに取り込むことが重要。60代のように、時間に余裕があり、ネットも使いこなして反応が早い人をターゲットにして、全国の関係者が連携し、お互いの島をアピールする取組によって、島へんろそのもののファンを増やし、ファンが全国の島へんろを巡るような取組が望まれる。 |
愛知県 佐久島 「未来へ伝えたいアートと島弘法が寄り添う島」 (島を美しくつくる会 太田由紀子氏)
佐久島の島へんろは「島弘法」と呼ばれ、大正2年に創設され、戦前はにぎわったものの、その後、手入れされず失われた札所も多い。一方、佐久島が属する一色町では、アートによる島おこしのプロジェクトが立ち上がっていた。そこで、建築家や学生に協力をいただき、平成22年から3年計画で、失われた札所を、アート作品として再生した。現代の建築家達により再生された新しい風景が、変わらない島弘法の伝統に寄り添いながら、佐久島の未来の風景となっていくことを祈っている。 | ![]() |
愛知県 篠島 「山弘法にヒントを得た島弘法」 (篠島観光協会 河口 修氏)
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篠島は、しらすの漁獲量が全国一であり、遠州灘で獲れるふぐも人気のグルメの島。しかし、近年の観光客減少に対して、何か手を打たなければ、と考えていた。 篠島には、明治末に、台風被害で亡くなった漁民の慰霊と島の守護のために、お地蔵さんにほこらを設けて八十八か所を整備した「山弘法」があった。この山弘法に着目し、巡るための道やマップを整備し、また島の中学生の発案で、スタンプラリーも行うなど、「島弘法」として復活させた。海の見えるコースにより、篠島の美しさを感じてもらい、健康づくり、また島民に島の文化を再認識してもらえれば、との思いである。 |
愛媛県 弓削島 「島の人々が島を巡る、島四国」 (弓削島 願成寺副住職 山尾宥翔氏)
弓削島の属する愛媛県上島町は、25の島から構成され、有人島は6つある。そのうち5つの島で、八十八か所巡り「島四国」が行われており、上島町でもガイドブックにより各島の札所を案内している。 この上島町での島四国とは、年1回、例えば弓削島では4月の第3日曜日に行われる行事で、各地で地域の人々によりお接待が用意され、それを島の人々が巡っていくもの。平成23年には、2000人が参加しており、にぎわっている。 |
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長崎県 壱岐島 「玄界灘の真珠、壱岐島の島へんろ」
(壱岐島活性化集団「チーム防人」 中山忠治氏、壱岐交通 伊佐藤由紀子氏)
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壱岐島には、明治時代に開かれた八十八か所があり、それ以外にも独自の霊場を持ち、各家庭でも大師様の像を安置する、信心深い島である。 普段の暮らしでは得られない癒しを求めて島へんろにこられる方が多く、札所をわかりやすく示し、手に持って歩けるマップを作ると大好評いただいた。 「玄界灘の真珠」と言われる壱岐島の美しい景勝地をご覧いただきながら、癒しの旅として島へんろを巡っていただければと思う。 |
長崎県 福江島 「無垢の自然に囲まれた空海ゆかりの島」
(五島観光タクシー 辻千穂子氏、アクロス五島 山口澄子氏)
五島列島の一番大きい島、福江島は、空海が遣唐使船で立ち寄ったゆかりの土地。そのため、手形、杖の跡といった伝説もたくさんある。一方で、隠れキリシタンの土地であり、美しい堂崎天主堂もある。八十八か所の札所の多くは地蔵堂であり、小学生や地元の方々の掃除によりきれいに保たれている。 旧暦3月21日に行われる「お大師さまのお祭り」におけるお接待は、色鮮やかなお供え、たくさんの料理が特徴。八十八か所、教会、万葉歌碑といった宝があり、無垢の自然に囲まれた福江島では、訪れる方との奇跡の出会いをお待ちしている。 |
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岡山県 神島 「地域の人々に支えられる八十八か所」 (神島八十八ヵ所巡り活性化実行委員会 宇根山肇氏)
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おへんろと言えば、やはり白装束。私もまずこの白装束により語りたい。 神島の八十八か所は、四国と同じ形になるよう地形も考えて考慮されているため、山の中に堂を建立したり、道を造る必要があり、5年間に及ぶ多くの人々のたいへんな労働奉仕により1744年に開設された。現在も、お寺以外の札所の管理は、地域及び個人で行われている。 この3年間、札所を調査してカルテを作り、ガイドブックの作成やガイドの養成講座、道しるべの整備など、島へんろの保全・活性化の取組を進めてきた。今回の島へんろサミットにより、各地の皆さんと交流し、情報発信をしながら、お互いに効果を上げていきたい。 |
JTBコミュニケーションズ中村忠司さんをコーディネーターとして、島へんろの活性化に向けた取組について、パネルディスカッションが行われました。 島へんろにもエコツーリズム同様にガイドが必要なこと、またそのガイドは単に知識を伝えるだけでなく、深い思いをもってへんろに訪れる方の心に寄り添うよう姿勢が求められるとのこと。スタンプラリーの取組が、リピーターを呼ぶことにつながること。そして、島の人自身が島へんろに代表される島の歴史・文化を知り、島をもっと好きになり、島を愛する人を育てることになり、子孫へと伝えていくことができること、などが話し合われました。 最後に、中村さんから、島同士の連携した取組、また地域や活動団体、市町村等の行政、また県や国の出先機関等の広域行政がそれぞれの特性を活かした協力、つまり「皆さんの力により島へんろを発展させていくこと」が提案されました。 |
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開会挨拶(実行委員会副会長 平野勲氏)
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本日は、各地の方々から貴重なお話をいただいた。やはり八十八か所の問題は、関係者が高齢化し、札所の維持管理が難しくなってきていること。今後、神島においても地域全体で考えていかなければならない。今日のお話を参考に、勉強して解決していきたい。 |
翌日の島へんろ体験には約40名の方が参加され、笠岡市神島の八十八か所のうち、いくつかの札所を徒歩で回った後、連絡船で白石島に渡り、開龍寺及び奥の院を訪問しました。 途中、老人クラブの方々による甘酒がふるまわれ、その心づくしの美味に参加者の方々も思わず笑顔に。 天候にも恵まれ、家々の間の路地、畑の脇の細道、高台から望む瀬戸内海といった、島へんろならではの美しい景色が堪能できました。 |
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今回の「全国島へんろサミット」を契機として、各地の取組がますます活発化し、島々がさらに元気となることが期待されます。 |