平成26年1月29日 NPO法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会を取材しました。
鹿野には、地域と文化、昔ながらのまちなみと田舎の風景があり、来訪された方々を心からもてなす人々がいます。
NPO法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会の皆様は、鹿野(鳥取県鳥取市鹿野町)を魅力ある地域とするために、地域文化やまちなみを活かした活動をおこなっている団体です。
「私たちはこれからもまちなみを守り、地域資源を活かし、さらなる賑わいと新たな地域文化を創り出す事で、地域の人々が喜びを感じ、鹿野を訪れた方々に昔ながらのふるさとを感じていただきたいと考えています。」(NPO法人パンフレット 「やらいな しょいな」より)
このたび、同NPO法人理事長の佐々木千代子様、副理事長兼事務局長の小林 清様を訪問し、数々のまちづくり活動について、お話を伺いましたので、ご紹介します。
【神山・尾道・鹿野 地域間連携事業】
また、昨年10月には東京にも「IJUcafe」ができました。東京から若い人たちが体験ツアーで倉吉にきた際に、「IJUcafe」に興味を持ち、東京で「移住」をテーマに人を集めてやっています。 今年は、鳥取中部ふるさと広域連合から、「IJUcafe」をやってほしいとの話しがあり、予算をもらって1市4町でしました。初めて行政と一緒に取り組みました。

「会話のはじまりの会議」の一場面
話しをされているのが佐々木理事長※
3地域の共通のテーマとして、「アート(演劇・アーティストインレジテンス)」「空き家活用(生活と仕事を生み出す)」「若者(若者が入ってきている)」があり、またその背景にある課題は地方の課題、鹿野の課題でもあります。鹿野のまちづくりをより前進させるために共通の課題、共通のキーワードを持ちながらも、やりかたの違うことにヒントがあると考え、やりとりをする中で何か得られればとの思いがありました。取り組む中で、話し合われたことに、3地域とも地域性を活かして独自に創出したものが多く、他の地域がマネても上手くいくとは思えないがヒントにはなると思いました。
先日、鹿野の「鳥の劇場」と神山町に行って演劇公演を行いました。神山町の人たちにも即席で演劇をしてもらい交流を深めました。春にも行く予定にしており、神山町の人たちと一緒に演劇をつくり発表したいと考えています。将来的には、尾道・鹿野でも発表できればと話しをしています。また、2月には、「まちづくり合宿」を行います。長野県小布施町の市村町長とNPO法人グリーンバレーの大南理事長の対談や他地域での活動発表を通して、地域のあり方や取組方をみんなで学ぶことにしています。神山、尾道からも多くの参加が予測されます。

鳥の劇場in神山※
トップ同士は顔を合わせて話しをすることもあるが、実際に地元で活動している人たちが直接顔をあわせ活動を話し合い一緒に学ぶことは少ない。こういった事業がきっかけとなり、つながりが深まるとともにお互いに刺激を受けることになればよいと思います。
神山・尾道・鹿野は若い人たちが地域によく入っていますが、神山はIT産業の若い人たちが入ってきている、尾道はアーティストになりたい人のように目的を持った人たちが入ってきている。そして鹿野はというと、何をしたらよいか分からない人が入ってきており、それを支える人たちがいる。このような3地域での取組をお互いに理解する事により新たな気付きもある。例えば、空き家は整備して貸さないといけないと思っていたが、尾道ではそのままの状態で貸しており、そのままの状態でも安かったら良いという人に借りてもらおうという発想の転換になっています。これは一事例であり3地域が経験したことで、お互いにこれはというものを取り入れていければと思っています。
【空き家活用】
ゆめ本陣
旧鹿野町、鳥取県の中山間地域活性化交付金事業を活用し、地域交流の場、伝統工芸品の技の伝承・体験、農産加工品の開発の場として、空き家を整備しました。
最初は苦労しました。建物は補助事業で整備できますが、維持費をどうするかが問題でした。最初は店を開く事にも苦労していて、何とかしようと2年くらいたった頃、1名常駐させて手作り小物を販売することにしました。現在は約100人から商品を預かって販売しており、年間1,200万くらいの売り上げがあります。

ゆめ本陣

店内に並べられている手作り小物
夢こみち
「ゆめ本陣」のオープン後、なかなか人が来てくれませんでしたが、二号店を食事処として何処かに作れないかと考えていました。そのころ「ゆめ本陣」向かいに空き家があり、行政は空き家を取り壊して駐車場にする計画を進めていました。行政に空き家を活用して町並みを残そうと提案し、話し合いを重ねた結果、空き家を改修し食事処「夢こみち」としてオープンすることになりました。
運営は当初、業者に依頼したかったが、採算がとれな いとの理由で断られました。そんな中、女性グループ「あじさいの会」が手を挙げてくれました。しかし、オープン当初は資金も無く、6ヶ月間は無償のボランティアで運営していただきました。現在は、運営も軌道に乗っていますが、やはり「すげ笠弁当」の開発が大きかったと思います。

ゆめ本陣向かいにある食事処「夢こみち」

すげ笠をおぼんに見立てた
「すげ笠弁当」※
する工夫や料理は本人達が考え、現在も改良 を重ね進化を続けています。器は家で使わなくなって蔵にしまってあるものを使用したり、必ず生花を一輪添えたり、近所から花や野菜を分けてもらうといった、あるものを活かす発想や地域の人が頑張って運営しているという姿があったから、近所の人たちの協力を得ることができたと思います。
【鳥取市移住定住空き家運営業務】
今年度、鳥取市から鹿野地域の移住定住者のための空き家活用の業務委託を受けました。
通常、行政等であれば、両者の間に入り仲介として結びつけると思いますが、私たちはいろいろなパターンが可能であり、特に鹿野で多いのは私たちが1回借りて、借りたい方に私たちが貸すという方法です。家主も退去時等のトラブルや片付けの心配をされますが、私たちが一緒に片付けたり借主への対応を行うので安心して貸してくれます。また鹿野の役に立ちたいと願う空き家所有者も多く、その思いを受け止めて対応しています。行政では希望者を平等に扱わなくてはいけませんが、私たちは鹿野に来て欲しい人を出来るだけ選んでいます。借りたい人貸したい人からいろいろな役割・信頼を受けたり、地域のルールを守って頂く等、行政には限界があるきめ細かな部分にも取り組んでおり、それはずっと地域にいる私たちだからできることだと思います。
【まちなみ景観 軒下演出】
鹿野には家々に屋号があり、現在、約200軒の家の玄関に屋号の入った瓦を設置しています。
最初は木ぎれに書いて置いてみましたが、非常に好評で恒常的に置こうということになり瓦に書くことにしました。
また、かつて町内で藍玉を作っていたという話しから、工房(しかの藍工房)をつくり、藍染めに取組でんいます。工房で作製した藍染めのれんは約100軒の家の表玄関にかけてもらっており、

玄関先に置かれている屋号の入った瓦

夜になると石で作られた行燈に火が灯る
鹿野のまちなみにもマッチしています。協議会では、半額の助成をおこないました。
瓦や藍染めのれんも含め、鹿野のアイデアは女性のものが多く、女性の発想や感性をどんどん出してもらいたいと思っています。
【鹿野のまちづくりとは】
全国のいろいろな地域や人々との出会い、交流も良かったと思います。地域を考える上での多くを学びヒントを頂きました。そして地域の事を考えたり交流する事を楽しませて頂いてます。
まちづくりを行ううえで、自分たちのまちを大切にする思い、自らが取り組んでいく、関わっていくことが重要だと思っています。

地域の交流拠点であり、いんしゅう鹿野まちづくり
協議会の活動拠点でもある「しかの心」
平成25年12月16日 中国地方整備局取材
※写真提供 NPO法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会
問い合わせ
国土交通省中国地方整備局 建政部 計画・建設産業課
TEL:082ー221ー9231