治水対策
江の川中流部に位置する三次市の市街地は、ほぼ全域が山地に囲まれ、江の川、馬洗川、西城川の同規模の三川が合流する地形をしている。このため、過去幾度となく大災害が生じ、昭和47年7月豪雨災害(1972)においては、市街地においても2箇所の破堤をみた。災害後、三次市街地を中心に堤防補強対策等が実施されてきたが、当時に比べて人口とともに社会的資産も増大し、再び災害が発生した場合には、被害は比肩できないものとなることは明らかである。
このため、洪水被害から市街地の人命、社会的資産を防御することを目的として、出水時の水防活動拠点、地域の避難場所、水防資材の備蓄場所等としての利用とともに、平常時には、地域のレクリエーション、コミュニティスペース、水防活動の訓練場として多目的に活用する防災ステーションの整備を行うこととした。
平成7年度
平成6年度にまとめた「江の川段階施工検討業務」における整備計画に沿って、地域住民のレクリエーション空間や防災拠点等、地域の景観や生活に溶け込んだ良好な水辺環境を創出することを目的とした「三川合流部整備計画検討業務」において、関連整備計画として防災ステーションの検討を行った。この結果12箇所の候補地に対し、諸条件の検討を行い、整備計画を策定した。
平成8年度
前年度に行った候補地検討を踏まえ、河川防災ステーション建設にあたっての諸条件を検討し、予定地を選定した。選定に際しては、洪水時の必要性、平常時の利便性を考慮し、次に示す方針で計画した。
河川防災ステーション
河川防災ステーションは、河川の堤防沿いに構築され、洪水時に水防活動や緊急復旧活動の拠点、物資輸送の基地、ヘリポートとして活用する施設である。一方平時には、川に関する学習の場、情報の発信基地として、また地域のレクリエーション、コミュニティスペースとして多目的に活用できるものとしている。河川防災ステーション整備事業は平成6年度から全国で展開されている。
管内に1箇所とする。
被害ポテンシャルの高い地域とする。水衝部(湾曲部)に設置し、堤防補強に資するものとする。
氾濫時に避難地が少ない地域とする。
水防活動のための交通手段に優れている箇所とする。(道路が冠水しても堤防により直轄区間をカバーできる箇所)
ヘリポートに適する箇所とする。
平常時の河川利用に適し、かつ利用が見込まれる箇所で、県北の中心地である三次市十日市地区の近傍であることが望ましい。
検討方針に沿って選定した結果、馬洗川左岸で、整備が計画されている都市計画道路上原願万地線に接した、三次市十日市東5丁目付近(図3-44におけるC地点)が最適地であるとされた。
この付近では、他に双三中央病院跡地(図3-44におけるD地点)があるが、三次市で施設整備計画(三次市福祉保健センター、三次市立図書館)が進められており、災害発生時には、より有効な体制が確保可能と考えられることから、隣接する都市計画道路上原願万地線橋梁南橋詰地点を選択した。
保健センターと隣接して配置することで、重要防災地区の避難・救助機能が集中的に行え、災害時等の非常時には、防災ステーション単独の配置に増して、救助・避難基地としての機能が強化・効率化すると考えられる。
平成9年度
河川防災ステーション整備計画について、三次市冠水被害軽減対策地域協議会(会長三次市長以下委員25名)に平成9年(1997)7月 31日に質疑応答を行い、計画の承認を得た。これを機に事業着手とし、地元説明会を開催するとともに、用地調査を開始した。
平成10年度
平成10年(1998)1月に用地調査を完了し、同年3月より用地交渉に着手した。7月には三次市長の仲介により、基本的な部分での地元合意が成立し、個別交渉に着手した。この結果、取得予定面積の約76%が交渉成立し、建設工事開始への準備が整った。
平成11年度以降
引き続き用地交渉を行い、平成13年(2001)1月24日起工式を施行、敷地造成工事に着手した。災害対策車両基地・防災資材置場・ヘリポートの整備を平成14年(2002)3月に終え、同年5月に災害対策車両基地開所式を行い、暫定使用を開始した。