千代川流域圏会議通信

千代川流域圏会議通信
[2001年2月号 vol.34]

植物を利用した水の浄化について
 現在の千代川の水質は県が定める環境基準をおおむね満足しています。この清流を次世代に引き継ぐため千代川流域圏会議では「清流を守る行動計画」を昨年7月に策定しました。今回はこの中の「植物浄化の実験の試行」についてお知らせします。

 河川水を直接浄化する手法の一つに礫間接触酸化法があります。これは礫(小さい石)や浄化用プラスチック等の材料を水中に置いて、その表面に付着する生物膜の働きにより水質を浄化するものです。この手法は維持管理が容易で一定レベルの浄化効果が得られる反面、湖沼で問題となるN(窒素)・P(リン)等の富栄養化物質の除去が不十分な状況にあります。

 この他の手法として水生植物を利用する方法があります。N・Pなどを除去する能力を持つ水生植物を利用する水質浄化は豊かな生態系を創造でき、環境負荷の少ない浄化技術として注目されており、実際の施設も建設されています。

土浦ビオパーク クレソン収穫の様子
 植物を利用した湖沼での水質浄化の成功事例として「土浦ビオパーク」があります。
 霞ヶ浦に設置されているこの施設では水質浄化のためクレソン、ミント、セリなどの水耕野菜を植えています。クレソンなどは(1)植物プランクトンが貯まりやすい溜まりやすいように根が細かく、株が横に広がる、(2)生長が早く栄養分としてN・Pをよく吸収する、などの性質を持っており水質浄化ができます。なお、この水耕栽培された野菜は住民が摘み取りを行っても良いことになっており、また運営は住民の一部が組織化し維持管理を行っております。

殿ダム植生浄化実験
(鳥取大学による植え付け作業)
 この他にも様々な水質浄化の取り組みが各所で行われています。それを参考に、千代川流域圏会議でも清流を守るため取り組みを行います。
 前号で紹介したように、すでに植生浄化実験に着手している例に鳥取大学(農学部、工学部)の協力を得て国土交通省殿ダム工事事務所で実施されているものがあります。当会議ではこの取り組みの見学会を開催する予定です。 

 また現在調整中ですが、流域内のモデルケースとして智頭町内において植物を利用して、集落排水をさらにきれいにして川へ放流するための実験を計画中です。これらについては詳細が決まりましたら、改めて紹介いたします。

会員紹介

野鳥も人も地球のなかま

(財)日本野鳥の会 鳥取県支部副支部長 福田 紀生

 (財)日本野鳥の会は1934年に中西悟堂が創設した民間の自然保護団体です。
 本会は「野鳥も人も地球のなかま」という考えのもとに、自然と人間が共存できる豊かな社会の実現をめざし、野鳥や自然とのふれあいを通じ、自然を守るための活動を全国的に展開しています。

 私の所属する鳥取県支部は1992年5月に結成され、現在の会員数は約280名です。また、 鳥取県支部は東中西の3ブロックで構成されています。各ブロックは毎月定例の探鳥会(バー ドウオッチング)を開き時々の野鳥たちを観察しています。
 この探鳥会での観察場所は季節によって、あるいは観察したい鳥種によって森林(山岳)、海岸、湖沼、田畑等の平地、河川及び河川敷等様々です。私たち東部ブロックの観察場所は通常は鳥取県東部で選定しています。つまりほとんどの場所は千代川の流域となります。水のある場所には野鳥がいます。野鳥のいる水辺の風景は心を和ませる絵になります。同様に森林にも多くの野鳥がいます。野鳥にとって、森林は限られた樹種のみの人工林ではなく、針葉・広葉、落葉・常緑等の混交林の方が好環境といえます。水辺や森林に限らず、野鳥に住み良い環境は人にも優しい環境であると確信しています。私たちの千代川流域はいつまでもそのようにあってほしいものです。

コハクチョウ
(撮影:細谷賢明氏)
オシドリ
(撮影:細谷賢明氏)
 今年の冬も多くの野鳥たちが渡来しています。千代川や八東川などの流域には様々なカモが水面を賑わしています。また、河川敷の枯れた葦原には夏とは違った小鳥たちの姿が見え隠れしています。
千代川とは堤防で隔てられている鳥取市国安地区の田圃には落ち穂を食べる数十羽のコハクチョウの群れがこの冬も見せています。そっと車の中から野鳥たちを観察してみて下さい。きっとなにか新しい発見があるはずです。
 私たちは観察だけではなく調査も重要な事業として取り組んでいます。
 鳥取支部を結成して最初の調査はオシドリの生息調査です。1964年11月に「鳥取県の鳥」としてオシドリが指定されました。しかし県下全域にあたる実態調査は、私たちが1992年秋に調査を開始するまでほとんど実施されていませんでした。全県域を対象とするような広がりのある調査活動は会員が県内全域に居住していることもあり、きわめて効果的に実施することが出来ました。調査は3ヶ年にわたり行い、その結果は県当局にも高く評価され、表題を「鳥取県のオシドリ」とした調査報告書を発行しました。
 また今年度はヤマセミの県下全域の生息調査に着手しました。
 この他、従来から継続している絶滅が危惧される稀少鳥種及びガン・カモ・ハクチョウ等の調査を実施しています。特に開発等による環境の変化については神経を使っています。
 最初にもふれました探鳥会は毎月1回開催しています。この探鳥会には会員以外の方の参加も大歓迎しています。開催日等の情報は折々に新聞紙上でお知らせしています。是非ご参加ください。野鳥たちの愛らしい姿やしぐさ、さえずりが楽しめます。


[←前号へ] [↑千代川流域圏会議TOP]