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前川 俊清 (県立広島大学生物資源学部助教授:農村計画) |
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・灰塚ダム知和地区環境総合整備計画アドバイザー会議 委員 |
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あのコウノトリはどのようにして江の川を見つけたのでしょうか。 |
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複雑な山並みの上を飛翔しながら、安全で住みよい豊かな土地を探していたのでしょう。 |
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遠くまで飛び回りながら、高いところから広い範囲を眺めて、最も良さそうな所を選んでは降り立つという移動生活の中で、江の川の流域には居心地のよい環境があると感じたのでしょう。 |
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コウノトリの仲間がいればもっと好かったのかもしれません。 |
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でも、種類は違っていても、多くの鳥たちが憩い餌を探しているこの地は、あのコウノトリにとっても魅力的だったに違いありません。 |
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野生の生き物たちは、生き抜くための感覚を鍛えて生き続けています。いつもあらゆる感覚を有効に働かせて、生き抜くのに必要な判断を的確に下していきます。特に、危険に関する感受性は敏感です。 |
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ヒトは、その反対に、びくびくしなくても良いように堅固な護りを築く道を選び、その結果として鋭敏な感覚を失ってきたようです。第六感はもちろん、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚までも自ら鈍感にしてしまったのかもしれません。そして、それを補うために、数々のセンサーを開発しました。でも、一人ひとりは、生身の人間としては、やっぱり弱い存在です。 |
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コウノトリの選んだ、安全で住みよく豊かなこの地をこれからも良くしていくことで、ヒトの住む環境としても特別に好ましく維持管理できるように思います。ヒトがヒトの都合で変えた環境ですが、いつまでもヒトの勝手を通すことはできません。少し遠回りでも、新しい時代に適した野生との共生関係を造り上げれば、結局はヒトのためになるようです。 |
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コウノトリへの少しの配慮は、そういう時代を展望する良い機会を与えてくれるでしょう。 |
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そういう意味でも、灰塚ダムのウエットランドは大きな意義を持っていますし、それを最も有効に活かしていくには、ウエットランドを単独の施設として孤立させないようにし、むしろ、周囲の環境の良さが主役であり、それを象徴的にウエットランドに集約して相互の連携を深めていくという、広域的な役割を皆さんと一緒に大切にしたいと思います。 |