記者発表

専門家及び地元関係者のコメント
(五十音順 敬称略)
上野 吉雄  (広島県立広島西養護学校教諭:鳥類・哺乳類)
・灰塚ダムモニタリング委員会 委員
・灰塚ダム知和地区環境総合整備計画アドバイザー会議 委員
 灰塚ダムウェットランド予定地にコウノトリがやってきて地元ではコウノトリ誘致への気運が高まっているようです。大食漢のコウノトリを定住させるためには餌となるザリガニやカエル、フナ、ドジョウなどの小動物が豊富に生育できる広い環境が必要です。ですから、ウェットランド予定地だけではコウノトリが定住するには狭いでしょう。そこで、のぞみが丘を始めとする周辺の農耕地を餌場にする取り組みが必要となるでしょう。そのためには、水田の冬季湛水、減農薬、営巣場の確保などが必要となるでしょう。
田原 昭弘  (のぞみが丘在住)
 水没する我が家からのぞみが丘に越してきてから10年。
 荒涼とした旧住居跡を眺めては、寂しい想いに浸っていた。
 ちょうどそこにコウノトリが飛来した今年6月以降は毎日が楽しくて、楽しくて、双眼鏡もカメラも買い求めた。
 コウノトリの再来を待っている。
藤井ツキエ  (のぞみが丘運営協議会事務局長)
 コウノトリは、私達にとって、童話の中での夢の生き物でした。
 日本に数羽しかいない珍鳥が、私達の町を選んで飛来してくれたことに対し、驚きと感激が入り混じり大変興奮致しました。この地に滞在中には、だれともなくコウノトリの姿を追い、「今、○○にいるよ」と連絡し合い、コウノトリ見物が生活の中に定着していました。ところが台風以来プッツリ姿を見せなくなり、とても淋しい思いです。
 2ヶ月間滞在した灰塚を、いつか思い出してくれるのではないかと期待をしつつ、コウノトリの好物・えさ・環境等に思いをめぐらせています。「大谷でザリガニがたくさんいるよ」「のぞみが丘にはアマガエルはたくさんいるのに、元灰塚でいたようなトノサマガエルが少ないね」「めだか池にはドジョウやタガメやゲンゴロウはいますか」とか、コウノトリ再来に期待した餌の会話がよく聞かれます。コウノトリ再飛来の為、出来る事を何かしたいと思っている私達です。
 夢と希望を与えてくれたコウノトリさん、赤ちゃんも運んで来て下さい。待っています。
前川 俊清  (県立広島大学生物資源学部助教授:農村計画)
・灰塚ダム知和地区環境総合整備計画アドバイザー会議 委員
 あのコウノトリはどのようにして江の川を見つけたのでしょうか。
 複雑な山並みの上を飛翔しながら、安全で住みよい豊かな土地を探していたのでしょう。
 遠くまで飛び回りながら、高いところから広い範囲を眺めて、最も良さそうな所を選んでは降り立つという移動生活の中で、江の川の流域には居心地のよい環境があると感じたのでしょう。
 コウノトリの仲間がいればもっと好かったのかもしれません。
 でも、種類は違っていても、多くの鳥たちが憩い餌を探しているこの地は、あのコウノトリにとっても魅力的だったに違いありません。
 野生の生き物たちは、生き抜くための感覚を鍛えて生き続けています。いつもあらゆる感覚を有効に働かせて、生き抜くのに必要な判断を的確に下していきます。特に、危険に関する感受性は敏感です。
 ヒトは、その反対に、びくびくしなくても良いように堅固な護りを築く道を選び、その結果として鋭敏な感覚を失ってきたようです。第六感はもちろん、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚までも自ら鈍感にしてしまったのかもしれません。そして、それを補うために、数々のセンサーを開発しました。でも、一人ひとりは、生身の人間としては、やっぱり弱い存在です。
 コウノトリの選んだ、安全で住みよく豊かなこの地をこれからも良くしていくことで、ヒトの住む環境としても特別に好ましく維持管理できるように思います。ヒトがヒトの都合で変えた環境ですが、いつまでもヒトの勝手を通すことはできません。少し遠回りでも、新しい時代に適した野生との共生関係を造り上げれば、結局はヒトのためになるようです。
 コウノトリへの少しの配慮は、そういう時代を展望する良い機会を与えてくれるでしょう。
 そういう意味でも、灰塚ダムのウエットランドは大きな意義を持っていますし、それを最も有効に活かしていくには、ウエットランドを単独の施設として孤立させないようにし、むしろ、周囲の環境の良さが主役であり、それを象徴的にウエットランドに集約して相互の連携を深めていくという、広域的な役割を皆さんと一緒に大切にしたいと思います。

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