千代川流域圏会議通信

千代川流域圏会議通信
[2000年9月号 vol.29]

千代川フェスティバル2000倉田スポーツ広場に1600人が集まる
開会の様子
 「千代川フェスティバル2000」が千代川流域圏会議の主催により、鳥取市の倉田スポーツ広場で平成12年8月19日(土)に開催されました。
 「集まれ!!流域の河童たち」と題して行われたこのフェスティバルは、当会議が千代川の日(8月24日)を制定したのを受け開催されたもので、今年で3回目の開催となります。
 当日は好天にも恵まれ、会場には約1600名が訪れ、川に関する催しを楽しんでいました。
ヤマメのつかみ取り
 中でも一番人気があったのは「ヤマメのつかみどり」でした。500匹のヤマメを2回に分けて放流すると、みんな一斉に川に入り、つかみ取りを楽しんでいました。
川の生き物観察会
 また「カッパの学校」も多くの参加がありました。この学校は当流域圏会議の会員の3名を講師として行われました。
 まず「川の生き物観察会」が山本晴恵さんにより行われました。講義の後、川に入って川に住んでいる昆虫を捕り、川の中にどのような虫がいるのかを調べ、その虫がいるということは川の水がどのくらいきれいかを学ぶことができました。
川のお魚観察会
 次いで「川のお魚観察会」が安藤重敏さんにより行われました。これは千代川には様々な魚が住んでいますが、会場の周辺ではどのような魚がいるのかを観察するものです。そのために川に投網を打ち、捕れた魚(アユやアユカケ)などを観察し、これを中心に講義がされました。

水辺の植物観察・押し葉教室
 3時限目の「水辺の植物観察・押し葉教室」は田中昭彦さんにより行われました。河原の植物についての講義の後、みんなで川岸に行き植物採取を行い押し葉を作りました。意識してみると河原には様々な植物があるということが体験できました。
水鉄砲作りの様子
 夏休みの宿題コーナーでは、図画工作などのほか、伝統的なあそび文化の伝承として、水鉄砲や竹とんぼ、笹舟つくりを行われました。
カヌー教室の様子
 会場の下流側では当会会員の鳥取カヌークラブによるカヌー教室も行われました。前日の夜に雨が降ったため若干川の流れが早かったのですが、みんなカヌーを楽しんでいました。

楽市楽座
 また、流域内の各市町村と郵便局により出店された「楽市楽座」も賑わっていました。出品は地域の特色を生かした自慢の品が多数あり、流域内の多様性を表していました。

熱気球コーナー
 また、このフェスティバルでは初の試みの「熱気球コーナー」では上空30mから千代川を見下ろす体験搭乗が行われました。
 以上のように多くの催しが行われたこのフェスティバルは、大盛況で幕を閉じました。
会員紹介
 鳥取大学教育地域科学部 助教授 鶴崎 展巨
イラカザトウムシ
 クモの親戚筋にあたるザトウムシという名前の動物群が、千代川を挟んで地理的に著しく変異することに気づいたのは、鳥取に来てまもない1988年頃のことでした。たとえば、写真のイラカザトウムシは染色体の数が千代川以西の集団では16本ですが、若桜町側の集団では22本に変化しています。両者が接触する智頭町内では染色体の数が西から東に向かって16から22まで連続的に変化するようすをはっきりと観察できます。このような場所を交雑帯といいますが、染色体数がこれほど異なる集団の間で成立している例は稀有で、たいへん貴重です。
 その後、千代川を挟んで、地理的に分化していたり、分布境界が成立している例が、ザトウムシ類のみならず、ヤスデやカワトンボなど他の動物群でもいろいろと見つかってきました。このことは、千代川がこれらの定着性の強い動物群にとっては非常に長期間、分布の障壁として存在しつづけてきたことを示唆しています。このような側面での千代川の面白さは抜群です。
 日本の生物相の成立過程や生物の進化を探るうえで、国内屈指の絶好の研究フィールドを提供してくれている千代川とその流域の自然がいつまでも良好な状態で保全されることを願っています。

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