千代川流域圏会議通信

千代川流域圏会議通信
[2002年2月号 vol.46]

良好な水質の保全・植生浄化実験について
〜植生浄化ってなんだろう?〜
川を汚す生活排水
 現在、河川や湖沼の有機物による汚れの60〜70%は、各家庭から排出される生活排水によるものだといわれています。しかも、生活排水の中でも特に台所から出る雑排水(調理くず、料理の食べ残し、食器洗いの排水など)が汚濁の原因となっているといわれています。たとえばみそ汁一杯(200ml)を捨てると魚が住める水質(BOD5mg/リットル)に薄める為にはなんと1,410リットル(風呂桶4.7杯分)もの水が必要なのです。油などになるとさらに大きく使用済み天ぷら油500mlを捨てると実に99,000リットル(風呂桶330杯分)もの水が必要になります。(資料:「東京都生活排水対策指導要綱」東京都より)
 近年下水道や集落排水処理施設などの整備により、高濃度の汚濁水が直接川に排出されることは少なくなりましたがそれでも処理施設から流出する処理水は、まだかなりの栄養塩類(窒素やリンなど)を含んでいます。
 水は循環利用されています。上流で排出された水は川を下り再び取水されて生活の為の水として利用されるのです。
 そこで、良好な水質を保全するために地域で取り組める浄化活動手法のモデルケースとするべく千代川流域圏会議において植生浄化実験に取り組むこととなりました。

植物の力を借りて水質浄化
 水質浄化の為に取り除きたい栄養塩類は重金属などと違って,それ自体に毒性があるわけではありません。しかし余分な栄養塩類は藻類の繁殖を増大させ、濁りや水道水の異臭の原因となります。
 ご家庭で植物を育てるときには肥料を与えますね? 配合表示にチッソ○○、リン○○などと書かれていませんか? そうです。植物の生育には栄養塩が必要なのです。水質浄化の為に排水中から取り除きたい栄養塩は実は植物の生育には必要不可欠な要素なのです。
 そこで栄養塩の含まれる水を植物に与え、植物が生育に必要な栄養を排水の中から吸収してもらって水の中の栄養塩を減らすのです。(次号に続く)
冬の千代川の野鳥たち
 千代川は一年を通して様々な魅力的な表情を見せます。冬の魅力の一つに、川面や河川敷の冬鳥の観察があります。
 この魅力を求めて、昨年12月中旬、千代川の中流を訪ねました。

コハクチョウ
 まず大きな鳥から観察しようと、向国安の水田に移動しました。期待していた通り、水田には落穂などを食べているコハクチョウが見えます。水田一枚を挟んでの観察でしたが、表情まではっきり見えます。大きな体にとても優しい目をしています。総数は30羽前後、その中には、まだ真っ白に換羽していない夏生まれの幼鳥が10羽くらいいます。このコハクチョウたちは遠くシベリアから渡来し、日中はこのあたりで採餌し、夜間は近くの千代川で、外敵を避けて休んでいます。
 大きい体の彼等が厳しい冬を乗り越えることができるのは、豊かな千代川の自然と、地域の方々に守られているからです。コハクチョウたちにとって千代川とその周辺は、非常に重要な越冬地です。

 観察場所を円通寺橋の上流へ変えました。この辺りは、千代川でも水鳥が多く観察できる特別な場所です。
ヒドリガモ
ヨシガモ
ミコアイサ
 円通寺集落近くの川面には濃い緑色の頭に白い首輪のマガモ・嘴の先が黄色いカルガモ、そして茶色の頭に黄色のアクセントが可愛いヒドリガモが群れています。ヒドリガモは口笛に似た優しい声で鳴いています。このポイントは水面脇の高い位置から観察できるので、水鳥たちは車窓のすぐ下に俯瞰できます。通常の観察のアングルとは異なり、興味深いものです。車をさらに上流に進め堤防の上に出ました。千代川でも主にこの辺りで観察できるのがヨシガモです。「ナポレオン帽」とあだ名をつけられた金属光沢のある黒っぽい緑色の頭は、とても綺麗です。しかしあいにくの天候であったため、日光のもとでの輝くような色彩は見られず残念でした。

 水面にはさらに、カワアイサ・カワウ・カイツブリなど、おなじみの水鳥がいます。
 黒っぽい頭で薄いクリーム色の鳥はカワアイサのオスです。カワアイサは流れに身を任せながら、頭(顔?)を水面に浸け、餌となる魚を探しています。獲物が捕れなかったら、再び上流まで飛んで帰り、再び流れに身を任せ、水中をのぞきながら下ってきます。これは我々が水中眼鏡で魚を探しているのに似ていて、笑ってしまいました。別名「パンダガモ」と呼ばれるミコアイサはあいにく不在でしたが、このポイントの常連です。別名から想像できるように、白と黒のモノトーンのオスは、一度目にすれば、まず忘れることのない個性的な水鳥です。

 
カシラダカ  
 
モズ  
 
カワセミ  
 河畔の木立やアシ原では、小鳥たちの動きが目につきます。冬鳥では、オス、メスとも背中に白い斑があることから「紋付」とか「紋付鳥」とも呼ばれるジョウビタキがいます。この鳥のオスは、頭部がくすんだ銀色、喉と背中が黒っぽく腹が明るいレンガ色でとてもオシャレです。水面近くの柳の横枝には、冠羽(頭部の飾羽)が自慢のカシラダカです。スズメとほぼ同サイズで薄茶色の小鳥です。ツグミもいました。
 歌舞伎役者の隈取りを思わせる化粧をしているのはホオジロです。河川敷で春一番にさえずり始める、歌自慢の留鳥です。木立の梢で尾羽をクルクル動かしているのは、小さな猛禽とも呼ばれているモズで、アイマスクのように目を横切る幅広の黒っぽい模様(過眼線)と尾羽クルクルが目印です。一瞬視界を横切ったのは、カワセミでした。カワセミは背の羽色がコバルトブルーに輝いて見えることから、「水辺の宝石」とも呼ばれ、バーダー憧れの野鳥です。

 鳥見の楽しい時間は、約2時間半で終わりました。今回は時折雨も降るあいにくの天候、そして観察時間も関係したのか、鳥種や個体数が少なめでした。
 千代川やその周辺は、季節や時間、さらに下流上流と観察場所を変えるだけで、まだまだ多くの野鳥が楽しめます。
 この冬の水鳥の観察は、3月上旬まで楽しめます。


千代川流域圏会議委員
(財)日本野鳥の会 鳥取県支部副支部長
福田 紀生
●福田さんよりご寄稿いただきました。ありがとうございました。

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