因幡・国府のうつろう流れ 殿ダム・袋川流域風土記

殿ダム・袋川流域風土記
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外の四山物語


@扇ノ山

鳥取県と兵庫県の県境に位置する扇ノ山は、標高1309.9メートル、国府、郡家、八東、若桜の境ともなってます。南北に連なるなだらかな尾根筋と、裾野に広がる広大な高原からなり、遠くから見ると扇の形に似ていることから名付けられました。また、邑美野の中心、源太橋あたりから眺めると、扇は半開きにゆったりとしたスロープで左右に広がっていくことから、「扇」とは因幡鳥取側からの命名ではないかといわれています。新三紀末から新四紀にかけて盛んに噴火を繰り返して山が高くなり、噴出溶岩によってできた標高1000メートル付近の台地状地形は美しい高原となっています。麓には名瀑の雨滝があり、登山口の近くには河合谷牧場、それを過ぎると水とのふれあい広場があります。中国自然歩道と登山ルートとして、スギの植林地に沿って起伏のない平坦な道をしばらく進むと、ブナやコナラなどの雑木林に変わって緩やかな登りとなります。山頂は雑木林に囲まれた円形の広場のようになっていて、南西方向に展望が開けて兵庫県側がよく見下ろせます。袋川はこの扇ノ山に源を発し、国府町から雨滝地区にある県下最大の名瀑、雨滝から西流して鳥取市街地へ流れ出ていきます。


A大茅山

岩美町と国府町の境、雨滝北西に位置し、標高は664.1mメートル。昔は茅を刈り取る山であったということから、この名がつきました。地形図には登山道が記されていませんが、国府町の木原のスギ林の沢から入ることができます。途中で道は消えてしまいますが、尾根づたいに歩けるそうです。今では茅の山にヒノキの植林が進んでいて、山頂には何もありません。


B宝山

国府町清水と八頭郡八頭町山上の間に位置する標高294.6メートルの山です。


C稲葉山

美歎水源地の北西にあり、頂上から尾根筋にかけて平坦な稜線が続く、標高248.9メートルの山です。「因幡山」「稲羽山」「伊奈波山」の他、宇倍神社鎮座まします山として「宇倍野山」「上野山」など多くの名で登場してきましたが、現在は「稲葉山」と呼ばれています。『稲葉民談記』の「古来より大きなる松山にて翠樹陰深い」姿は今はなく、近世の池田長吉時代に羽柴秀吉の鳥取城攻めによって荒れ果てた鳥取城の造営の用材として松や欅などの伐採が進んで入会の採草地となり、薪や肥やし草などの恵みの山となりました。また、その昔、多くの歌人に詠まれた山であり、因幡国守に就任した在原行平が詠んだ歌は百人一首の16番歌として知られています。マツ林の中には、行平塚とよばれる石塚があります。また、行平の屋敷があったとも伝えられていますが、『稲葉民談記』には誤って伝わったものであると指摘されています。
登山口は宇倍神社にあり、神社の石段上がると宇倍神社の手水鉢にも引かれている「七宝水」と呼ばれる水場に着き、脇には道標があります。中腹に開墾された林檎園や梨園まで自動車での通行が可能で、町屋からの道や美歎砂防ダムを通る道もあり、奥谷からも入る事ができます。この山道沿いには、栗の柴木を炭にして、数々の名刀を鍛えた稲葉小鍛冶景長の屋敷があったといわれ、また古い書物によれば、但馬へ抜ける道にもなっていたということです。