第2回

資料

要旨

発言要旨

出  欠 氏  名
木幡 修介 氏
塩飽 浩一郎 氏
田江 泰彦 氏
野津 登美子 氏
福島 律子 氏
藤岡 大拙 氏
丸 磐根 氏
吉田 薫 氏

※五十音順

※当日欠席の委員の方々には、後日意見をいただいております。


「夕日スポット」完成が楽しみ

山陰中央新報社相談役  木幡 修介 氏

宍道湖のほとりで生まれ育った者としてはやはり昔の宍道湖に郷愁を感じており、宍道湖の自然をいつまでも大切にしてほしい、というのが率直な気持ちです。
ただ、自然にも人の手が加わるのは時代の流れで、産業や観光振興のため開発も必要です。「自然を残せ」の一点張りではなく、知恵とバランス感覚で問題解決を図ることが大切でしょう。
今日視察した宍道湖畔の三つの施設は、いずれも自然を守り、自然との調和を図りながら利便性を高める、優れた開発をしています。しかし、課題も散見しました。
宍道湖グリーンパークは隣接の宍道湖自然館ゴビウスと関連させた集客努力が必要で、秋鹿なぎさ公園は、エントランスが少し入りにくくレイアウトなどに改善の余地があると思いました。岸公園は個人的にも大好きな所で、特に、県立美術館から歩いていける「夕日スポット」が完成するのが今から楽しみです。


財産は自然・・・夕日を楽しむ遊覧船も

日本旅行業協会島根地区会会長 塩飽 浩一郎 氏

北欧では湖がきれいですが、湖岸から五十-百メートル入ったところに道路が通してあり、湖岸と道路の間を、観光資源として、遊びの空間として利用できるのではないかと思います。一方で宍道湖は、水際に道路が引かれていることもあり、財産として生かし切れていません。よりきれいに見せる対策をした方がよいと思います。宍道湖は都会的な部分よりも自然を強調する場所ですから、水辺の景観という観点からは、もう少し樹が欲しいですね。樹に沿ってマラソンコースやサイクリングコースがあると、宍道湖の有効活用になるのではないでしょうか。また、水辺の有効活用として、夕日の遊覧船を考えてはどうでしょうか。
PRの部分では、宍道湖グリーンパークであれば、旅館の人に「冬場にはこんな鳥がくる」などのPRをしてもらえれば、興味ある人には見ていただけるのではないでしょうか。宍道湖周辺のポイントを記したルートマップを作成するのも一つの手だと思います。


守るべきものは全体のバランスで

島根経済同友会代表幹事  田江 泰彦 氏

今回視察して一番印象に残ったのは宍道湖グリーンパークです。心地よく、遠くに見える宍道湖を取り囲む山並みも穏やかで、この地域らしいと思いました。対岸の美術館前の水辺は美術館との関連性をよく考え、配慮が行き届いており、まちの中にある水辺の場所としてとても良くできていると改めて思いました。しかし、対岸の景観がいまひとつといった問題もあります。その場の印象が分かるように、全体を見る必要があると思います。
宍道湖全体のあり方や活用を考えるときに、どの部分をどういう観点で議論するのかを整理する必要があると思います。宍道湖グリーンパークは観光施設というよりも地域に暮らしている人たちにとっての水辺であり、地域住民の視点を追求することが大切だと思います。一方で、松江市内の夕日スポットの整備は、観光をかなりのウェイトで考える必要があります。最終的には、失ってはならないものとのバランスが大切であり、地元に暮らす者が良さの基準を持っている必要があります。そのためには水辺を直に見たり触れたりする必要があり、PRやイベントを繰り返しやっていくことが大事なことだと改めて思いました。


流れ着いたごみも環境学習の素材

ホシザキグリーン財団企画交流課長心得  野津 登美子 氏

宍道湖西岸から見る、特に冬場の厳しい朝の朝日は噴き上げる火山のような美しさがあります。その西岸にある宍道湖グリーンパークは地元の方にはよく知られ、子どもたちの環境学習の場としてもよく活用されています。
グリーンパークに最初にできた多自然型湖岸堤は、生き物にとってすごく住みやすい場所になってきました。コチドリが繁殖し、ヨシが茂り、夏にはオオヨシキリが来ます。湖があるためえさが豊富で、繁殖に絶対必要な条件を備えているからでしょう。
湖岸に流れ着いたごみも環境学習の材料です。ごみ拾いなどの体験を通して、自然のごみより人工的なごみの方が多いこと、上・中流で落とした物は必ず宍道湖に流れ着くことなどを学びます。
去年は関東から、今年は関西から中学生が修学旅行で宍道湖を訪れ、グリーンパークで生き物を採集し、環境学習をします。山陰にも単なる観光ではなく、エコツーリーズム的なものが入りだしてきたようです。ただ見るだけの観光ではなく、宍道湖の中に足を入れて水の中で戯れ、生き物と接する、という観光もこれからは考えられます。
冬場は全国のどこにも負けない野鳥の楽園になり、県外からも多くの方が来られます。
そういう宍道湖のいい風景、素晴らしい環境を次の世代にバトンタッチしたいですね。


いろいろな顔の発見が教育になる

松江市教育委員会教育長 福島 律子 氏

宍道湖グリーンパークを訪ねたのは初めてですが、ヨシのそよぎが心地よく、そこにとけ込むことができるような、自然の包容力、暖かさを感じました。宍道湖の南岸にもヨシ原の貴重な自然や景観が残っているので、それを活かしていって欲しいと思います。
一方で、雨の後で宍道湖の水位が高かったのですが、もう少し水位が高かかった場合の下流域の生活への影響を考えると、穏やかな宍道湖と、自然の脅威を感じるときの宍道湖の両面について、バランスをしっかりと考える必要があると感じました。
宍道湖のもつ様々な顔に触れ、自分の足と目と肌で現地の実態を知ることの大切さを実感しました。自分の足下の良さを知る取り組みを、教育に携わる者がやっていかないといけないと感じました。島根県ではふるさと教育推進事業を展開していきますが、その中で、宍道湖あるいは水は大きな柱だと思います。特に松江市は水で売り、水で悩んだ町であり、水なしでは語れません。子どものときからそういうことを考えさせていくことが必要であり、それが宍道湖のもついろいろな顔の発見につながっていくのではないでしょうか。


近代文明から少し距離を置いて

島根県立島根女子短期大学名誉教授 藤岡 大拙 氏=座長

宍道湖グリーンパークが修学旅行などで都会地からも注目されているのは、水辺の景観や水質などが元の良い状態に返りつつあるということを示しているようで、大変うれしく感じます。
そういうことを考えると、宍道湖はもうこれ以上人の手を加えてはいけない気がします。わたしは宍道湖だけは近代文明から少し遠ざかってほしいと思っており、湖面をモーターボートなどが騒々しく飛び回るのはやめて欲しいと願っています。手こぎ舟や帆掛け舟が多く見られた昔の宍道湖の、のどかな光景を忘れたくないと願うのは年寄りの気持ちでしょうか。
また、「宍道湖は貴重な観光資源になる」と昔から言われ続けていますが、真に観光資源に成り得るものは何かということが、あまり熱心に追求されて来なかったのではないでしょうか。例えば、宍道湖の魚を使ったおいしい料理も、ほとんど生かされていません。観光資源の研究、実現への努力が欠けているように思います。
南岸の整備が遅れているのはその通りで、特に宍道湖水辺八景の玉湯川河口が手つかずのままです。また、宍道湖を眺める格好の視点場の国民宿舎麗雲荘の跡地を有効活用できないでしょうか。道の駅にしたら、北岸の秋鹿なぎさ公園との相乗効果も期待できるのではないかと思います。


大橋川の両岸は人の営みの視点が大切

島根県商工会議所連合会会頭  丸 磐根 氏

宍道湖畔を現地視察し、宍道湖は広いと強く感じました。ひと口で宍道湖と言っても、西側の斐伊川河口部分と東側の大橋川市街地部分など、それぞれに際だった特徴があり、それをよく考えて治水と環境との調和をどう図っていくか、一つ一つ詰めて考える必要があると思います。
治水と環境との調和を求める場合、環境とは何かを考えると、三つの要素があると思います。
第一が生態系、第二が景観ですが、景観も中心市街地の歴史的・観光的な景観と、昔からある自然のたたずまいの景観という具合に、宍道湖を取り囲む状況の中でも景観概念が異なるわけです。三番目は、人の生活と水との調和、いわゆる親水性です。
治水上の議論としては、昭和四十七年の洪水時の宍道湖水位に基づき、大橋川改修の堤防の高さが決められています。しかし、上流のダムと中流の神戸川への放水路が完成した際に、水位がどうなるのかを科学的に詰めておかないと、景観の重要性や人間の営みの親水性の観点とが混同して議論され、説得性のある改修内容の結論が出しにくくなるのではないかと思います。
宍道湖周辺には現状を維持し、むしろ失われたものを取り戻すのだという考え方で対応するのが適当な区域もありますが、大橋川の両岸の問題は中心市街地の観光的側面とミニマムの治水上の観点を調和させる視点で考えることが重要です。市街地を訪れる人の目的はビジネスや観光、買い物、食事などさまざまであり、大橋川の両岸の問題は都市機能や観光資源としてどう整備、開発していくべきかという観点から見直す必要があると思います。


場所ごとに整備のランク付けを

風景研究室代表  吉田 薫 氏

宍道湖の姿は、多自然型湖岸堤や各ポイントの整備がされて、二十-三十年前と比べて今はかなり良くなったと思います。しかし、宍道湖全体を見渡すと、南岸は整備が少し遅れているように思います。例えば、宍道湖水辺八景の一つに選ばれた玉湯湖畔には長い砂浜がありますが、アクセスも悪いし漂着ゴミなどもそのままです。ここを整備してきれいにすれば、人々が憩うのにとてもいい場所となるのではないでしょうか。道の駅も宍道湖の北と南に一カ所ずつあるといいですね。
北岸の松江市街地西端部では空気の澄む秋や冬に大山が姿よく見えるので、そこを整備してはどうかと思います。また、湖畔の公園でシジミ汁が飲めたり、湖岸から帆掛け舟が見られる風景があるといいですね。
宍道湖畔も場所場所によって、かなりランクに違いがあるように思います。嫁ヶ島の周辺の夕日スポット(宍道湖水辺八景「嫁が島残照」)などは全国的に名の通った観光地で、多くの観光客が訪れます。一方で、そこだけでは目的地になりにくいけれども利便性が高くて利用者の多い所や、観光地というより地元の利用者の方が多い所もあります。
そのため、整備をする場所によって、利用者数などによって重要性を判断し、ランク分けして考える必要があるのではないでしょうか。