因幡・国府のうつろう流れ 殿ダム・袋川流域風土記

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多鯰ヶ池伝説


お種三題

.宮下に稲常の長者が住んでいました。この長者にお種というかわい
い一人娘がおり、糸谷村の長流寺五重塔の竣工式に出掛けた折、お種は青年僧を一目見るなり胸をふるわせ、思い悩むようになってしまいました。心配した両親は摩尼山の名僧のもとへ連れて行ったところ、お種の姿はみるみるうちに蛇の姿にかわり、背後の池(多鯰ヶ池)に消えてしまい、稲常長老の家も次第に衰えてしまいました。

2. 宮下の伊藤土屋という長者の家に福部村細川からお種という使用人が住み込んでいました。ある秋の夜、柿の話をするとお種どこからかおいしい柿を持ってきました。不思議に思って使用人3人が後をつけたところ、お種は浜坂砂丘の池を蛇体になって泳ぎ、中の島の柿の木から熟れた柿の実を水の上に落とし始めました。その姿を見られたお種は池の底に沈んで長く池の主となり、それからこの池を“多鯰ヶ池”というようになりました。

3. 宮下の分限者にお種という老婆がいました。信心深く朝晩神仏を祈って暮らし、特に伊藤長者の使用人お種の話を聞いてこれを慰めようと思い、毎年多鯰ヶ池にお参りに行っていました。年が経ち、老婆は腰が曲がり歩行も困難になったので、今年で最後のお参りと池の岸辺に立って祈ると、不思議にも風が吹き、池水一面に五色のさざ波が広がり池の中央に水が奔騰して老婆の祈りに応えてくれました。